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終章

始まりの始まり

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 こうして、傭兵部隊が正式に設立された。

 数日後、傭兵部隊に参加する者達が全員、城の中庭に集められた。
 帝国軍第五旅団長ルツコイ、副長コバルスキー、傭兵部隊の隊長である私、そして、副隊長のエーベルが前に立ち、部隊の者達に訓示を行った。

 傭兵部隊の制服は帝国軍とは違うデザインで後日、支給されるという。今日のところは、旧共和国軍に所属していたものはその制服、元賞金稼ぎの者などは、それぞれまちまちな服装をしていた。

 ルツコイに改めて話を聞いたが、傭兵部隊の仕事は危険度の高い任務は、やはり当面は少ないようだ。
 しかし、私には別に心配なことが二つあった。
 私は、これまで二百人という規模の部隊を率いたことがない事だ。私は共和国軍で下級士官と言っても “深蒼の騎士” であったため、一般兵より階級が少々の上の扱いだったが、ただそれだけで、騎士団の中だけで見ると上官に従う一般兵士となんら変わりなかったからだ。
 もう一つの心配事は、元賞金稼ぎの者達の扱いには少々苦労しそうだった。規律などお構いなしの荒くれ者ばかりだ。今後、部隊の運営をしながら彼らに規律を教えていくしかないだろう。

 一方、新たに弟子となった、オットー・クラクスとソフィア・タウゼントシュタインに指導にあたる。しかし、傭兵部隊の通常の勤務時間内に彼らだけに個人的な助言は立場上指導することができない。
 そう言うこともあって、我々は必要があれば時間を合わせて、集中的に修練をやることにした。当初は夜に城の目立たない広場でやっていた。
 しかし、そこは少々狭い場所だったので、別に修練の適当な場所も見つけなければならないと思っていた。
 オットーとソフィアに剣を持たせて、少し訓練させたがスジは悪くないと感じた。
 私は、弟子を持つのは初めてだったが、自分の師だったセバスティアン・ウォルターから受けた教えを思い出しながら指導にあたっていく。

 そして、新たな日常が動き出した。
 傭兵部隊は正式に任務が与えられた。帝国軍と合同で最初の仕事、武器の取り締まりを始めている。
 旧共和国が帝国の支配下になり、二週間ほど。短期間だが、いろいろな変化があったし、今後もあるだろう。

 そして、今後、数年の間に帝国で数々の重大事件が起き、私は、その事件に心ならずも巻き込まれていくことになるが、今は、そのことを知る由もなかった。

(『傭兵部隊の任務報告2~ヴェールテ家連続殺人事件』へ続く)
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