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捜査14日目

捜査14日目~顧問弁護士の死

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 マイヤーとタウゼントシュタインは城を出発してヴェールテ家の顧問弁護士のハルトマンの事務所を目指していた。
「オットーもやはりスザンネ達を追っているようですね」。
 タウゼントシュタインはマイヤーに話しかける。
「ああ、そうだった」。
 マイヤーは天を仰いだ。
「どうしましたか」。
「司令官にオットーの事を報告するのを忘れたな。ヴェールテ貿易の事務所に来ていたことを」。
「次々といろんなことが起こるから仕方ありません。私も忘れてましたし」。
「そうだな。あとで報告しよう」。
「我々は海軍の船で出発してしまいますから、報告は事件が終わった後かと」。
「そうなるか」。
「それで、オットーですが」。タウゼントシュタインは話を元に戻す。「やはり恨みからヴェールテ家一行を捜しているのでしょうか?」
「わからんな。しかし、最初から彼はヴェールテ家に恨みはあった、そして執事が警察にそれを話して捜査から外されたことで、怒りがさらに高まったのかもしれん」。

 マイヤーは少し間をおいてから尋ねた。
「君は、オットーと一緒に隊長の弟子だろう? 彼の性格はよく知っているだろう?」
「彼とは一緒に訓練はしますが、プライベートではあまり話をする機会はありません。兵舎も別ですし、それに、彼と知り合ってまだ三カ月です。彼のことをそれほどよく知っているとは言えませんね」。
「なるほど、そうか」。
 マイヤーがそういって顔を上げる。もうすぐ、目的地のハルトマンの弁護士事務所だが、その前で警察が何人も集まっている。何かあったようだ。

 マイヤーとタウゼントシュタインは馬を急がせると、そこには警察官が数人とアーレンス警部がいた。
「アーレンス警部!」
 マイヤーは馬上から声をかけた。
「マイヤーさん」。
「なにかありましたか?」
「弁護士のハルトマンが殺害されていました」。
「なんですって?」
 マイヤーは驚いて声を上げた。またヴェールテ家に関わるものが殺害された。一体どこまで続くのだろうか?
「顧客の老夫婦が訪問して発見しました」。
「毒殺ですか?」
「いえ、剣かナイフか鋭いもので首のあたりを刺されていました」。
「剣かナイフ?」
 毒殺ではないということは、殺人は別の者か?剣という言葉で嫌な予感が頭をよぎる。マイヤーとタウゼントシュタインは思わず目が合った。

 まさか、オットーが?
 警部は話を続ける。
「弁護士は横から首を刺されていましたが、抵抗したような形跡がありませんでした。顔見知りの犯行ですね。犯人は彼と話をしていて、彼が横か後ろを向いたときに刺したんだと思います」。
「犯人の目途は?」
 マイヤーは恐る恐る聞いた。
「わかりませんね」。
 警部は両手を広げる様にして言った。
「遺体の様子から、殺害されたのは昨日のようです」。
 昨日か、それならオットーがいなくなったのは今朝の事だから、彼とは関係はなさそうだ。マイヤーは少々安堵した。
「なぜ彼は殺されたのでしょうか?」
「わかりません」。
「彼はヴェールテ家の顧問弁護士をしておりました。ヴェールテ家の連続殺人と関係があると思いますか?」
 タウゼントシュタインが尋ねた。
「それも、わかりません。今回は殺害方法が違いますからね。別の人物かもしれません。彼の顔見知りの犯行と言っても、彼の顧客を含めるとかなり多いでしょう」。
「実は、彼が帝国軍に賄賂を贈っていた人物ではないかと疑っていたのですが」。
「死んでしまったから、そうであっても、真相を彼の口からは聞けなですね」。
「そうですね」。
 タウゼントシュタインは何かを考え込むようにうつむいた。
 これは、ヴェールテ家の連続殺人と関連があるのか、ないのか。

 マイヤーは、弁護士の件は警察に任せ、スザンネ達の追跡のほうに専念しようと思った。
「警部。我々はスザンネを追跡しなければならないので、これから海軍の船で出発します」。
「スザンネ達の行方が分かったのですか?」。
「ダーガリンダ公国の首都ジェーハールセリエへ向かうヴェールテ貿易の船に乗ったようなのです。途中に停泊する港いくつかもあるので、彼女たちの目的地はそのいずれかでしょう」。
「外国に逃げられては、警察としてお手上げです」。
「何とかして我々が捕えて見せます」。
「よろしくお願いします」。
「では、我々は海軍へ向かいます」
 マイヤーとタウゼントシュタインは敬礼して、馬の横腹を蹴り“進め”と合図をした。
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