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緘口令
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ズーデハーフェンシュタットに到着し、ウンビジーバー号を下船すると、休む間もなく、司令官のルツコイに呼び出された。
私はルツコイの執務室に入り、敬礼をする。
「ユルゲン・クリーガー、只今帰還いたしました」。
「よろしい。座ってくれたまえ」。ルツコイは執務机の前の椅子を指した。「島の調査結果の報告をまずは口頭で、お願いする。報告書は明日でもよい」。
私は、ズーデハーフェンシュタットを出航した後のことを、記憶をたどりながら、細かく話し始めた。
海軍のフリゲート艦であるウンビジーバー号、ヘアラウスフォーダンド号の二隻で出航。途中、クラーケンの襲撃に会い、ヘアラウスフォーダンド号が沈没。船長のエマ・ミュラー、調査隊第二隊長のエーベル・マイヤー含む多数の隊員、乗務員が行方不明に。
レジデンズ島に到着後は、部隊をクリーガー隊、ホフマン隊の二つに分け島を探索。その途中、ゴーレムと地竜の襲撃でホフマン隊はホフマン含む多数が死亡。私のクリーガー隊は、ホフマン隊の生き残りと合流、地竜を倒す。その後、謎の魔術師と二度対決して、打ち倒した。そして、百名のうち三十名のみが生存し、帰還したと伝えた。
「なるほど、大変な任務だったな」。ルツコイは深いため息をついた。「しかし、君が無事帰還してくれて、私は嬉しい」。
私は話を続けた。
「それで、謎の魔術師の正体ですが」。一旦、間をおいて再び口を開く。「“預言者”チューリンでした」。
「何?」ルツコイは驚いて、前のめりになり、私に訊き返した。「見間違いではないのか?」
「いえ、間違いありません」。私はチューリンの遺体から取り上げた魔石を見せた。「これはその遺体が掛けていた物です。この枠のデザイン、確かに首都でチューリンに会った時と同じものです」。
「しかし、調査隊の中でチューリンに会ったことがあるのは君だけだろう。万が一見間違えであれば、大変なことを言っていることになるぞ」。
「いえ、確かです」
私は力強く言った。
「そうか」。ルツコイは魔石を見つめて、少し時間をかけて何かを考えているようだった。そして、口を開いた「その魔石を預からせてくれ。今日のところは以上だ。あとはゆっくり休んでくれ」。
私は敬礼して、執務室を後にした。
その後、私は自室に戻り、ベッドに横になった。時間はかなり早かったが、疲れが残っていたのであろう、そのまま眠ってしまった。
次の日の午後、オットーに、彼がルツコイに呼び出され、島での調査について聞かれた、ということを聞かされた。ルツコイの口調はまるで尋問のようだったとも。特に最後の戦いでの魔術師について、かなり詳しく聞かれたという。また、ソフィアや、他の隊員たちもオットー同様に呼び出されて、話を聞かれたという。
どうやら私が報告した、島に居た魔術師がチューリンだった、と言う話の確証を得ようとしているようだった。後に聞いたが、ウンビジーバー号の船長シュバルツや、その乗組員にも聞き取りがあったという。
私は夕方に調査隊の報告書を持ってルツコイの執務室に行き、ルツコイに提出をした。ルツコイは「お疲れ様」。とだけ言い、報告書を受け取った。彼は、なにやら書類を書いていたが、急に顔を上げ、話し出した。
「島で倒した魔術師がチューリンだったという話は、これ以降、口にすることを禁ずる。ほかの調査隊員だった者や海軍の者にも同様に言ってある」。と、きつめの口調で言われる。
「わかりました」。と、私は言い、部屋を後にした。
私はルツコイの執務室に入り、敬礼をする。
「ユルゲン・クリーガー、只今帰還いたしました」。
「よろしい。座ってくれたまえ」。ルツコイは執務机の前の椅子を指した。「島の調査結果の報告をまずは口頭で、お願いする。報告書は明日でもよい」。
私は、ズーデハーフェンシュタットを出航した後のことを、記憶をたどりながら、細かく話し始めた。
海軍のフリゲート艦であるウンビジーバー号、ヘアラウスフォーダンド号の二隻で出航。途中、クラーケンの襲撃に会い、ヘアラウスフォーダンド号が沈没。船長のエマ・ミュラー、調査隊第二隊長のエーベル・マイヤー含む多数の隊員、乗務員が行方不明に。
レジデンズ島に到着後は、部隊をクリーガー隊、ホフマン隊の二つに分け島を探索。その途中、ゴーレムと地竜の襲撃でホフマン隊はホフマン含む多数が死亡。私のクリーガー隊は、ホフマン隊の生き残りと合流、地竜を倒す。その後、謎の魔術師と二度対決して、打ち倒した。そして、百名のうち三十名のみが生存し、帰還したと伝えた。
「なるほど、大変な任務だったな」。ルツコイは深いため息をついた。「しかし、君が無事帰還してくれて、私は嬉しい」。
私は話を続けた。
「それで、謎の魔術師の正体ですが」。一旦、間をおいて再び口を開く。「“預言者”チューリンでした」。
「何?」ルツコイは驚いて、前のめりになり、私に訊き返した。「見間違いではないのか?」
「いえ、間違いありません」。私はチューリンの遺体から取り上げた魔石を見せた。「これはその遺体が掛けていた物です。この枠のデザイン、確かに首都でチューリンに会った時と同じものです」。
「しかし、調査隊の中でチューリンに会ったことがあるのは君だけだろう。万が一見間違えであれば、大変なことを言っていることになるぞ」。
「いえ、確かです」
私は力強く言った。
「そうか」。ルツコイは魔石を見つめて、少し時間をかけて何かを考えているようだった。そして、口を開いた「その魔石を預からせてくれ。今日のところは以上だ。あとはゆっくり休んでくれ」。
私は敬礼して、執務室を後にした。
その後、私は自室に戻り、ベッドに横になった。時間はかなり早かったが、疲れが残っていたのであろう、そのまま眠ってしまった。
次の日の午後、オットーに、彼がルツコイに呼び出され、島での調査について聞かれた、ということを聞かされた。ルツコイの口調はまるで尋問のようだったとも。特に最後の戦いでの魔術師について、かなり詳しく聞かれたという。また、ソフィアや、他の隊員たちもオットー同様に呼び出されて、話を聞かれたという。
どうやら私が報告した、島に居た魔術師がチューリンだった、と言う話の確証を得ようとしているようだった。後に聞いたが、ウンビジーバー号の船長シュバルツや、その乗組員にも聞き取りがあったという。
私は夕方に調査隊の報告書を持ってルツコイの執務室に行き、ルツコイに提出をした。ルツコイは「お疲れ様」。とだけ言い、報告書を受け取った。彼は、なにやら書類を書いていたが、急に顔を上げ、話し出した。
「島で倒した魔術師がチューリンだったという話は、これ以降、口にすることを禁ずる。ほかの調査隊員だった者や海軍の者にも同様に言ってある」。と、きつめの口調で言われる。
「わかりました」。と、私は言い、部屋を後にした。
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