色彩の大陸3~英雄は二度死ぬ

谷島修一

文字の大きさ
上 下
33 / 66
人民革命

プリブレジヌイ到着

しおりを挟む
 皇帝イリアは皇帝親衛隊のベルナツキーたちに守られ、ユルゲンが囮となったこともあり、無事にプリブレジヌイに到着した。一行は街の中を進み、城へと入城する
 そこでは先に首都アリーグラードを脱出した帝国軍総司令官ボリス・ルツコイと、プリブレジヌイに配属されていた第六旅団のペシェハノフ旅団長が待っていた。

「陛下、ご無事でしたか」。
 ルツコイは、うれしそうに両手を上げて歓迎した。
「ルツコイ司令官、そして、ペシェハノフ旅団長、ご苦労」。
 皇帝は落ち着いた口調で話した。
 ルツコイはベルナツキーにも話しかける。
「よくぞ、陛下を無事にお連れした」。
「はい、しかし…」。ベルナツキーは言葉をつまらせた。「クリーガー副司令官が囮となって、我々を逃がしてくれました」。
「なに?! 囮だと?」ルツコイは驚いて聞き返した。「彼は首都を出たところで姿が見えなくなったので、もしかして、反乱兵にやられたのかとも思っていた」。
「いえ、彼は首都を脱出した後、我々と途中の村で偶然出会い、つい数時間前まで一緒にいましたが…、追っ手を引き付けるために…」。
「そうか…」。ルツコイも一度、不安そうに俯く。しかし、慰めるように気を取り直して言う。「奴の事だ、うまく逃げてくるだろう」。
 そして、改めて皇帝に向き直って言った。
「陛下は部屋で休んでください」。
 ペシェハノフは部下に言って、皇帝を部屋に案内させる。皇帝が城の奥へ行くのを見送ってルツコイは言った。
「我々は今後、どうするかを決めよう」。

 ルツコイ、ペシェハノフ、ベルナツキーは作戦室で打ち合わせを行う。
 ペシェハノフは現状の報告する。
「私の第六旅団は六千名の兵士がいます。彼らには反乱の兆候は全くありません。そして、総司令官と一緒に脱出した重装騎士団が三百名と少しです」。
「国境沿いにイェブツシェンコの第四旅団がいるな」。ルツコイは確認する。「彼らをここへ移動させよう。後は、南の国境線沿いにスミルノワの第一旅団、スツゥーチカの第二旅団がいる」。
「彼らの旅団の兵士の多くが首都北部の出身者が多いです。戦える状態にあるかわかりません」。
「それの確認の意味も込めて、全旅団に対し伝令を出して、可能であればここに向かうように命令を」。
「わかりました。イェブツシェンコの旅団は早ければ二、三日でここに到達できるでしょう。南に国境線の二つの旅団は早くとも十日はかかると思われます」。
「わかっている」。
 ルツコイはいら立ちを隠さなかった。
「後は、反乱軍もこちらに向かっているでしょう。問題はその数です」。
 ベルナツキーは口を挟んだ。
「我々は一度追っ手に追いつかれましたが、反乱兵は戦い慣れしてない者も多いです」。
 そのとおりだ、元兵士もたくさんいるだろうが、軍の指揮を取れる者がいないようだ。それに、反乱兵の中には、そもそも戦い慣れしていない一般住民だった義勇兵も多いだろう。こちらの兵力を六千と考えると、倍ぐらいまでであれば戦える自信がルツコイにはあった。
「歩哨を城の外へ出して、こまめに敵の接近を報告させる」。
「後は、テレ・ダ・ズール公国へ援軍をお願いするのはどうでしょうか?」
 ペシェハノフが提案する。
「可能なのか?」
「彼らも国内で同様な民衆による革命が起こることを恐れているでしょう。わが帝国が崩壊すれば、次は自分たちだと思うはずです」。
「なるほど。確かに、少しでも味方は多い方がいい。公国へ伝令を出せ」。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...