5 / 66
序章
証言者探し
しおりを挟む
イリーナとクララは、 “ユルゲン・クリーガー回想” と彼の遺品の資料から、彼の生前の交友関係を調べた。もし、今も存命の人物がいれば直接話を聞きたいと思ったからだ。
イリーナは自分の手元のメモを見て話を始める。
「お爺様の交友関係を調べた結果、特に親交が深かったと考えられるのは、彼の弟子だった三人。オットー・クラクス、ソフィア・タウゼントシュタイン、オレガ・ジベリゴワね」
“深蒼の騎士” は伝統的に子弟制度で剣術、魔術などの伝授が行われていた。大抵、師には二~三人の弟子が付き、その教えを乞う。 “深蒼の騎士” 達は、過去何十年もこの方法でやって来たという。共和国では、その伝統はまだ受け継がれているという。
イリーナは話を続ける。
「お爺様が生涯で弟子にしたのは、この三人だけのようね。他の “深蒼の騎士” についても少し調べてみたんだけど、お爺様の弟子の数は他の騎士と比べても圧倒的に少ないわ。でも、その理由はちょっとわからないわ」
「うーん。それは、私もわからないなぁ」
クララは首を傾げて言った。
「何か、理由がありそうね」
「その内の一人、オレガお婆様は、街の北部の住宅街に住んでいるわ。私も彼女とは何度か会ったことがあるよ」
オレガ・ジベリゴワはパルラメンスカヤ人民党の設立者で初代党首として “人民革命” を指導したヴィクトル・ナタンソーンの約四年間だけだがパートナーだった人だ。革命の内情も聞けるかもしれない。
「今度、都合のいい日を聞いておくね」
「お願い」
その他の弟子であったオットーとソフィアの住所はユルゲン・クリーガーの遺品の中に手紙のやり取りをしていたのが残っていたので知ることができた。
オットーの住所は、ブラウグルン共和国の第三の都市モルデン。ソフィアの住所は、同じく共和国の首都ズーデハーフェンシュタットとなっていた。
イリーナはオットーに、クララはソフィアという風に分担して、『ユルゲンについての話を聞きたいので会えないか』、という内容の手紙を早速、この場で書くことにした。もし、彼らが存命で同じ場所に住み続けていたら、この手紙が届くだろう。手紙が届かなかったら、その時に改めて考えることにした。
手紙を書き上げると、イリーナとクララは、さらに他の証言者が居ないか話し合ってみた。
次にユルゲンが隊長を務めていた傭兵部隊の隊員隊達。
ユルゲンと親しく、傭兵部隊の設立から所属していた隊員達の多くは “チューリン事件” で死亡していた。しかし、フリードリヒ・プロブストはその後も生き残って、副隊長を務めていた。そして、共和国の再独立後は、彼は定年で退官まで共和国軍にいたそうだ。しかし、彼の現在の消息は分からなかった。
最後にブラミア帝国軍の人脈。
彼の妻で皇帝親衛隊の隊長ヴァシリーサ・アクーニナ。
彼の上官、第五旅団長ボリス・ルツコイ。
そして、帝国の最後皇帝イリア。
ユルゲンの妻、すなわち、クララの祖母であるヴァシリーサ・アクーニナは三年ほど前に亡くなっているという。クララによると彼女の遺品を調べてみたが、当時の参考になりそうな物は、ほとんどないということだ。
ユルゲンの上司であったボリス・ルツコイは、もし、存命であれは百歳を超えるので、すでに亡くなっていると考えていた。話を聞くことは叶わないだろう。
皇帝イリアは存命かもしれないが、“人民革命”の際、隣国のテレ・ダ・ズール公国へ脱出した後の消息は知られていなかった。
しばらく話し合ったが、二人は他に話が聞けそうな人物は、見つけることができなかった。三時間ほど話し合って、イリーナは今日のところは退散することにした。
イリーナは自分の手元のメモを見て話を始める。
「お爺様の交友関係を調べた結果、特に親交が深かったと考えられるのは、彼の弟子だった三人。オットー・クラクス、ソフィア・タウゼントシュタイン、オレガ・ジベリゴワね」
“深蒼の騎士” は伝統的に子弟制度で剣術、魔術などの伝授が行われていた。大抵、師には二~三人の弟子が付き、その教えを乞う。 “深蒼の騎士” 達は、過去何十年もこの方法でやって来たという。共和国では、その伝統はまだ受け継がれているという。
イリーナは話を続ける。
「お爺様が生涯で弟子にしたのは、この三人だけのようね。他の “深蒼の騎士” についても少し調べてみたんだけど、お爺様の弟子の数は他の騎士と比べても圧倒的に少ないわ。でも、その理由はちょっとわからないわ」
「うーん。それは、私もわからないなぁ」
クララは首を傾げて言った。
「何か、理由がありそうね」
「その内の一人、オレガお婆様は、街の北部の住宅街に住んでいるわ。私も彼女とは何度か会ったことがあるよ」
オレガ・ジベリゴワはパルラメンスカヤ人民党の設立者で初代党首として “人民革命” を指導したヴィクトル・ナタンソーンの約四年間だけだがパートナーだった人だ。革命の内情も聞けるかもしれない。
「今度、都合のいい日を聞いておくね」
「お願い」
その他の弟子であったオットーとソフィアの住所はユルゲン・クリーガーの遺品の中に手紙のやり取りをしていたのが残っていたので知ることができた。
オットーの住所は、ブラウグルン共和国の第三の都市モルデン。ソフィアの住所は、同じく共和国の首都ズーデハーフェンシュタットとなっていた。
イリーナはオットーに、クララはソフィアという風に分担して、『ユルゲンについての話を聞きたいので会えないか』、という内容の手紙を早速、この場で書くことにした。もし、彼らが存命で同じ場所に住み続けていたら、この手紙が届くだろう。手紙が届かなかったら、その時に改めて考えることにした。
手紙を書き上げると、イリーナとクララは、さらに他の証言者が居ないか話し合ってみた。
次にユルゲンが隊長を務めていた傭兵部隊の隊員隊達。
ユルゲンと親しく、傭兵部隊の設立から所属していた隊員達の多くは “チューリン事件” で死亡していた。しかし、フリードリヒ・プロブストはその後も生き残って、副隊長を務めていた。そして、共和国の再独立後は、彼は定年で退官まで共和国軍にいたそうだ。しかし、彼の現在の消息は分からなかった。
最後にブラミア帝国軍の人脈。
彼の妻で皇帝親衛隊の隊長ヴァシリーサ・アクーニナ。
彼の上官、第五旅団長ボリス・ルツコイ。
そして、帝国の最後皇帝イリア。
ユルゲンの妻、すなわち、クララの祖母であるヴァシリーサ・アクーニナは三年ほど前に亡くなっているという。クララによると彼女の遺品を調べてみたが、当時の参考になりそうな物は、ほとんどないということだ。
ユルゲンの上司であったボリス・ルツコイは、もし、存命であれは百歳を超えるので、すでに亡くなっていると考えていた。話を聞くことは叶わないだろう。
皇帝イリアは存命かもしれないが、“人民革命”の際、隣国のテレ・ダ・ズール公国へ脱出した後の消息は知られていなかった。
しばらく話し合ったが、二人は他に話が聞けそうな人物は、見つけることができなかった。三時間ほど話し合って、イリーナは今日のところは退散することにした。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる