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序章
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帝国の崩壊は、“チューリン事件”、 “ソローキン反乱”、“人民革命”の三つの出来事を中心に大きく動いていた。
イリーナとクララはこの三つの事件を起こった時系列の通りに調べようと思っている。
「最初に」、イリーナは話を始める。「ブラミア帝国を揺るがした “チューリン事件” と呼ばれている大事件についてだけど」
「それは、“チューリン事件” はブラミア帝国皇帝の側近でウラジミール・チューリンという人物が権力をほしいままにして、国を不法に牛耳っていたのを、それを皇帝親衛隊が武力で排除した事件ね」
クララが手元の資料を見ながら言った。
イリーナは話を続ける。
「その詳細については秘密にされていることが多いように感じるわ。伝わっていることは、 “預言者”とあだ名されたウラジミール・チューリンという人物が皇帝の側近として権力を掌握し、三年もの間、国をほしいままにしていた。軍事力を増強しブラウグルン共和国を占領するように進言したのもチューリンだと言われている、と。そして、ある日、皇帝親衛隊がチューリンを殺害し、権力を皇帝の手に取り戻した。その半年後に皇帝は崩御。次の皇帝には娘のイリアが即位した」
ここまで言うと、イリーナはクララに向き直って尋ねた。
「皇帝親衛隊って、あなたのお婆様が居たところよね?」
「そう。長い間、親衛隊の隊長をしていたと聞いているわ」
「お婆様から、何か聞いたことがあった?」
「うーん…。それが、何も聞いたことが無いのよ。それに、日記とかそう言った遺品の類もほとんどなくて」
「そうか…」
イリーナは残念そうに肩を落とした。
“チューリン事件” のほぼ同じ頃、謎の翼竜による首都襲撃があった。この翼竜は、たまたま首都を訪問していたユルゲンたちによって倒された。さらに、ユルゲンはその直後、皇帝の命令で、翼竜を操っていた首謀者である魔術師を南の洋上に浮かぶ小さな島まで遠征し倒した。
その功績でユルゲンは“帝国の英雄”として、帝国国内だけでなく、大陸中にもその名が知れ渡ることになる。
ユルゲンが首都に訪れた時、後に妻となる皇帝親衛隊の隊長ヴァシリーサ・アクーニナ、つまりクララの祖母と知り合うことになったという。
イリーナは話を続ける。
「二つ目に調べようと思っていることは、“チューリン事件”の一年後で、皇帝イリア即位の半年後に起きた“ソローキン反乱”について。これは、次は軍で権力を握っていたデニス・ソローキンが皇帝の命令を無視し、人民共和国の北で国境を接するテレ・ダ・ズール公国に侵攻した事件。ソローキンの旅団は当初、戦闘に勝ち続け、テレ・ダ・ズール公国の首都ソントルヴィレに迫った。しかし、そこでの首都攻防戦で大敗北を喫し、国境まで逃げて来たところを待ち構えていた別の帝国軍の攻撃を受け、ソローキンは討ち取られた。これが、 “ソローキン反乱” 、と」
イリーナが話終えるのを確認してから、話を継いだ。
「この事件では、ソローキンがなぜ独断で隣国に攻め込んだのかの理由がはっきりしていないのよね。それは、彼自身の野心などともいわれているが、その理由は釈然としない。これも謎のうちの一つね」
「そうね。さらに、“ソローキン反乱”の直後に、帝国は共和国の占領を諦め、共和国領内から軍を撤退した。そのことにより、共和国は再独立。お爺様の傭兵部隊の隊員のほとんどが共和国出身だったので、彼らは共和国に戻ったが、お爺様は何故か一人帝国に残ったのね。これも謎の一つ」
「謎だらけね」
イリーナは軽くため息をついて、目の前の資料を一瞥した。
クララは少し考え込んでいたが、急に声を上げた。
「そうか!」
「どうしたの?」
イリーナがその声に驚いて尋ねた。
「お爺様はお婆様がいたから帝国に残ったんじゃあないかな? 二人はとても仲が良かったから」
「なるほどね。あり得るわね」
「きっと、そうよ」
クララは満足そうに資料に目を戻した。
ユルゲンは帝国に残った後、第五旅団の副司令官として就任し、他にもアカデミーの講師、また、皇帝に助言を与える側近としても任務を務めるなど、いくつもの仕事を兼任していた。
イリーナは資料から手元の“回想録”に目を戻し、話を続ける。
「三つ目に調べたいのは、“ソローキン反乱”の二年後の“人民革命”について。お爺様は革命では、帝国軍の司令官の一人として人民革命軍と戦った。その熾烈な戦いを生き残り、帝政の崩壊後は人民共和国に残ることを許されて、その後の人生のほとんどをこの国で過ごした。そして、帝国の滅亡後、素人の集まりだった人民革命軍の組織編制に手を貸せと革命の指導者ヴィクトル・ナタンソーンに説得され、人民革命軍の司令官の一人となったのね」
イリーナはそこまで話すと一息ついて、カップの紅茶に口を付けた。
その間にクララが話を継いだ。
「その後は、人民共和国のために働いたのよね。革命成就直後のパルラメンスカヤ人民共和国は、同じような人民革命によって王政が倒されるのを恐れたテレ・ダ・ズール公国やダーガリンダ王国、アレナ王国などが宣戦布告してきた。しかし、お爺様達が率いる人民革命軍は約一年にわたる戦闘の後、外国勢力を跳ね返すことに成功した。お爺様は、その後も、十年近く人民革命軍の育成に力をいれ、アカデミーの教官などを務めた後、ちょうど五十歳になる頃に軍を退官した」
“回想録”によると、ユルゲンは晩年、軍史研究家としていくつか書物を書き、亡くなるまでの約二十年を静かに過ごした。
そして、彼が亡くなる五年ほど前に “ユルゲン・クリーガー回想録”が出版された。そもそも、“帝国の英雄”として有名人で国内では知らない者はほとんどいなかった上、人民革命軍を指揮し外国勢力を撃退した功労者としても活躍した彼の書物は国内で売れに売れた。
彼は自らも幼少の頃、孤児院で育ったので、書物の売り上げで得た利益の多くを国内の孤児院のために寄付をしたという。
また彼が集めた蔵書をもとに国立アリーグラード大学敷地内に“ユルゲン・クリーガー記念図書館”が設立されていた。
イリーナとクララはこの三つの事件を起こった時系列の通りに調べようと思っている。
「最初に」、イリーナは話を始める。「ブラミア帝国を揺るがした “チューリン事件” と呼ばれている大事件についてだけど」
「それは、“チューリン事件” はブラミア帝国皇帝の側近でウラジミール・チューリンという人物が権力をほしいままにして、国を不法に牛耳っていたのを、それを皇帝親衛隊が武力で排除した事件ね」
クララが手元の資料を見ながら言った。
イリーナは話を続ける。
「その詳細については秘密にされていることが多いように感じるわ。伝わっていることは、 “預言者”とあだ名されたウラジミール・チューリンという人物が皇帝の側近として権力を掌握し、三年もの間、国をほしいままにしていた。軍事力を増強しブラウグルン共和国を占領するように進言したのもチューリンだと言われている、と。そして、ある日、皇帝親衛隊がチューリンを殺害し、権力を皇帝の手に取り戻した。その半年後に皇帝は崩御。次の皇帝には娘のイリアが即位した」
ここまで言うと、イリーナはクララに向き直って尋ねた。
「皇帝親衛隊って、あなたのお婆様が居たところよね?」
「そう。長い間、親衛隊の隊長をしていたと聞いているわ」
「お婆様から、何か聞いたことがあった?」
「うーん…。それが、何も聞いたことが無いのよ。それに、日記とかそう言った遺品の類もほとんどなくて」
「そうか…」
イリーナは残念そうに肩を落とした。
“チューリン事件” のほぼ同じ頃、謎の翼竜による首都襲撃があった。この翼竜は、たまたま首都を訪問していたユルゲンたちによって倒された。さらに、ユルゲンはその直後、皇帝の命令で、翼竜を操っていた首謀者である魔術師を南の洋上に浮かぶ小さな島まで遠征し倒した。
その功績でユルゲンは“帝国の英雄”として、帝国国内だけでなく、大陸中にもその名が知れ渡ることになる。
ユルゲンが首都に訪れた時、後に妻となる皇帝親衛隊の隊長ヴァシリーサ・アクーニナ、つまりクララの祖母と知り合うことになったという。
イリーナは話を続ける。
「二つ目に調べようと思っていることは、“チューリン事件”の一年後で、皇帝イリア即位の半年後に起きた“ソローキン反乱”について。これは、次は軍で権力を握っていたデニス・ソローキンが皇帝の命令を無視し、人民共和国の北で国境を接するテレ・ダ・ズール公国に侵攻した事件。ソローキンの旅団は当初、戦闘に勝ち続け、テレ・ダ・ズール公国の首都ソントルヴィレに迫った。しかし、そこでの首都攻防戦で大敗北を喫し、国境まで逃げて来たところを待ち構えていた別の帝国軍の攻撃を受け、ソローキンは討ち取られた。これが、 “ソローキン反乱” 、と」
イリーナが話終えるのを確認してから、話を継いだ。
「この事件では、ソローキンがなぜ独断で隣国に攻め込んだのかの理由がはっきりしていないのよね。それは、彼自身の野心などともいわれているが、その理由は釈然としない。これも謎のうちの一つね」
「そうね。さらに、“ソローキン反乱”の直後に、帝国は共和国の占領を諦め、共和国領内から軍を撤退した。そのことにより、共和国は再独立。お爺様の傭兵部隊の隊員のほとんどが共和国出身だったので、彼らは共和国に戻ったが、お爺様は何故か一人帝国に残ったのね。これも謎の一つ」
「謎だらけね」
イリーナは軽くため息をついて、目の前の資料を一瞥した。
クララは少し考え込んでいたが、急に声を上げた。
「そうか!」
「どうしたの?」
イリーナがその声に驚いて尋ねた。
「お爺様はお婆様がいたから帝国に残ったんじゃあないかな? 二人はとても仲が良かったから」
「なるほどね。あり得るわね」
「きっと、そうよ」
クララは満足そうに資料に目を戻した。
ユルゲンは帝国に残った後、第五旅団の副司令官として就任し、他にもアカデミーの講師、また、皇帝に助言を与える側近としても任務を務めるなど、いくつもの仕事を兼任していた。
イリーナは資料から手元の“回想録”に目を戻し、話を続ける。
「三つ目に調べたいのは、“ソローキン反乱”の二年後の“人民革命”について。お爺様は革命では、帝国軍の司令官の一人として人民革命軍と戦った。その熾烈な戦いを生き残り、帝政の崩壊後は人民共和国に残ることを許されて、その後の人生のほとんどをこの国で過ごした。そして、帝国の滅亡後、素人の集まりだった人民革命軍の組織編制に手を貸せと革命の指導者ヴィクトル・ナタンソーンに説得され、人民革命軍の司令官の一人となったのね」
イリーナはそこまで話すと一息ついて、カップの紅茶に口を付けた。
その間にクララが話を継いだ。
「その後は、人民共和国のために働いたのよね。革命成就直後のパルラメンスカヤ人民共和国は、同じような人民革命によって王政が倒されるのを恐れたテレ・ダ・ズール公国やダーガリンダ王国、アレナ王国などが宣戦布告してきた。しかし、お爺様達が率いる人民革命軍は約一年にわたる戦闘の後、外国勢力を跳ね返すことに成功した。お爺様は、その後も、十年近く人民革命軍の育成に力をいれ、アカデミーの教官などを務めた後、ちょうど五十歳になる頃に軍を退官した」
“回想録”によると、ユルゲンは晩年、軍史研究家としていくつか書物を書き、亡くなるまでの約二十年を静かに過ごした。
そして、彼が亡くなる五年ほど前に “ユルゲン・クリーガー回想録”が出版された。そもそも、“帝国の英雄”として有名人で国内では知らない者はほとんどいなかった上、人民革命軍を指揮し外国勢力を撃退した功労者としても活躍した彼の書物は国内で売れに売れた。
彼は自らも幼少の頃、孤児院で育ったので、書物の売り上げで得た利益の多くを国内の孤児院のために寄付をしたという。
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