ブリキの兵隊達 ~ID人とST人~

クライン・トレイン

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ID世界編

9話 運命の創始者は其処に在り、悲劇を繰り返す

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~ミゼルの部屋~

その階段の先のドアの先で待っていたのはミゼル
にやけた顔を施しながら紅茶を投げて差し出す

投げられた紅茶の入ったカップは
並行回転しながらもこぼれる事なく
受け止めるゲノムの手に取っ手が見事に着く

ID人
「あの…わたし…!」

ミゼル
「あぁ君か
君はそうだねぇー…」


IDアイテムで自動回収する機能で
ID人をミゼル側へと回収

その回収されていく内に
カーテンによって遮られていた景色が全て開いていく


開かれたカーテンの先には
ST世界の監視スクリーンが映し出されていた

ミゼル
「HAHAHA
ようこそ 僕がST世界の…いや、ID人の監獄係のミゼルだ」

ID人
「監獄係…?何を言ってるの?
ミゼルはただの愉快な、誰とも変わらまない変人だと聞いたのに」


ID人の女の髪を触りながら
首を自分へと向ける

ミゼル
「そうだね
僕は変人を演じている
これもまたブリキの兵隊だね

玩具のように扱われて僕は心地が良い
僕の本来の役割は監視係だから」


ID人の女は焦りながらも助けを求める

ID人
「私は別にID世界には否定していない
ST世界からの侵入者にてこずって…」

ミゼル
「てこずって?
そこから何だい?」

ID人
「自ら手を出して――」


その言葉を口にした時
ID人の女はどこかへと消え去った

ゲノム
「どうしたのだ?
ID人の女はどこへ追いやった?」


スクリーン画面の一つにST堕ちしたID人の女がいた
そしてID人の女は戦場でパーティを組んでは戦場を駆け巡る

ミゼル
「この歴史はいつも通り
そう いつも通りなんだよ」


満面の笑顔でミゼルは宣言

ミゼル
「それが…私のゼンマイの心臓から脱出した奴に言う言葉か?」

ミゼル
「うんうん 違うよ
君はまだゼンマイの心臓にいるじゃないか
運命に弄ばれる日々は終わらないよ(笑)」




ミゼル
「ID人は君の思ってる通り
娯楽と同時にID世界を肯定しているんだ
でも稀にね 不具合を起こす

その不具合はやがてボード上の一つの兵隊として出来上がる」

ゲノム
「その孫達が
私達ブリキの兵隊…なのか…!」


先祖代々からの贈り物
それがST世界という作り物である

ミゼル
「そうそう
リスティが量子盤を散布したのも
僕には理解出来てる
でもそんなイレギュラーな動きなんて僕には分かるよ
それが監獄係のIDアイテムのメリットさ

IDアイテムを現象化させるまでもない
既に僕はIDアイテムを所持しているからね」


IDアイテムをミゼルは耳ピアスとして装着していた

【三日月乃反映(デッドカーペットムーン)】
≪三日月の内に生存者と死者数を知らせる反映アイテム
反映アイテムでは生存者と死者数を確認する以外に反映も可能≫


ミゼル
「つまりこの三日月乃反映は運命の因果律を変えるIDアイテム
食らいつく者も感動する者も全てを運命の中で弄ばれる事となる

ゼンマイの心臓から脱した?違うよ
正解は此処(ミゼル)にある

喜べブリキの兵隊よ
お前らは未だ私の中で弄ばれる存在だという事に」


暗殺家を使って
ミゼルへと攻撃するが
それは未物質かによりダメージは無効化される

ゲノム
「他の攻撃手段も全て攻略済みって訳か」

ミゼル
「さて、君をST堕ちにするのも良いのだけども…
ID人のコアも持っている君をそんな甘い処置で終わらせるにはID世界の住人達も黙ってはいないだろう

僕が動かせる領域は
ID世界からすればほんの一握り

今だって僕と君が出会うまでに移動した距離なんてたかが知れてるだろ?
同時に僕が持っている範囲の世界の領域なんてたかが知れてるのさ」


だがその範囲内でなら
ID世界の如何なるものを使っても楽しめる

ミゼル
「僕は君を許してはならない
だからこのまま消えるんだ 永遠にね」


ミゼルの攻撃にIDアイテムで完全バリアを張った者がいた
リスティだ
捕縛された状態から別の肉体へと復元してこちらへと参上した次第だ

ミゼル
「リスティ…あなたはまだ僕に抵抗するのかい?」

リスティ
「私には悲劇より悪意を断ち切る力が欲しいの
ID世界は人権厳守によるシステム化された仕組みで成り立っている

だからこうした世界が作られる」


ID世界からすれば
これはほんの一つの世界の状況
別に些細なことでは無いが
自らが率先しなければ誰も干渉をしない

リスティ
「隔離された状態で
世界を弄ばれて

ミゼルのしたい事は一体?」

ミゼル
「僕のしたい事はただの悲劇の繰り返しだよ
僕には別に楽しみなど全てID世界で堪能したよ
その全てなる感情をID世界で堪能した

だからこそ僕は悲劇という一つを欲した
ただそれだけだよ
それを理解出来るまでには君達は若すぎるんだよ

僕は今か今かとST堕ちするID人を見るのが好きなのさ
悲劇を僕は欲する!(笑)」


ミゼルはそう言って
リスティを永遠に消滅しようと考えた

ミゼル
「コアすらも残さず消え去ればいいさ
滅びるがいい
若さ残らず消し去ってくれるわ!」


リスティは未物質化しても透明化しても
どんな状態を駆使しても
その攻撃に叶う事は無かった

それは三日月乃反映をフル活用した攻撃だったからだ
無理矢理運命の因果律を変えられて
そしてリスティは消滅した

そしてその後ろいたであろうゲノムも
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