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第1章 はじまり
1-4 暗黒時代
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──ニンゲンたちは壁を築く。
いつからだっただろう。マモノと呼ばれる生物が脅威となったのは。
最初は集落に入り込んで小さな汚れ沼を作ったり果物の灌木を少し枯らす程度の悪戯を仕掛けてきていたのだが、その力は弱く棒や小石で追い払うことができていたのだ。
それが農耕を始めた頃から徐々に大きな個体が出現するようになり、被害も悪戯では済まなくなってきた。畑一枚を丸々沼に変え、羊を屠り、住民すら襲うようになってくるともはや棒や小石では撃退できない。
人々は求めた。
より強固な護りを。
より強力な武具を。
そして、より安心できる仲間を。
人々は龍に祈りを捧げた。龍を神、またはその御使と信じ、直接解決してくれることを望んだ。
しかし、龍族とニンゲンの寿命は違い過ぎたのだ。
人々の目には、龍族が祈りを無視しているように見えた。龍族にとっては思考を巡らせる一瞬であっても人々にとっては一生の大半をかけた待ち時間であった。
それまで崇め奉っていた龍族がすぐには動かないと知るや、人々は集落を閉ざし柵を立てた。大地の仲間と分け合ってきた草木や水を自分たちだけの為に囲い込んだ。柵を越えて侵入してくる集落外の者があれば、マモノや動物、果ては同族に至るまで問答無用で追い払い、もしくは殺害した。
瘴気は濃くなってゆくばかり。
その頃には、いつどこでどんなふうに進化するのか一部のマモノは既に人々の手に負えなくなっていた。
マモノに襲われる集落が増えるにつれ、同族同士であるにもかかわらず集落の強奪が当たり前のように起こった。いつしか人々は集落を奪い合った本来の目的を忘れ、必要以上の豊かさや争いそのものを求めて貪り合うようになってしまっていた。
護り神と崇められていた龍族も見かけることが無くなり、一部の者が空っぽの神殿に飾られた偶像を崇める滑稽な風景が散見されるようになった。
暗黒時代の始まりである。
いつからだっただろう。マモノと呼ばれる生物が脅威となったのは。
最初は集落に入り込んで小さな汚れ沼を作ったり果物の灌木を少し枯らす程度の悪戯を仕掛けてきていたのだが、その力は弱く棒や小石で追い払うことができていたのだ。
それが農耕を始めた頃から徐々に大きな個体が出現するようになり、被害も悪戯では済まなくなってきた。畑一枚を丸々沼に変え、羊を屠り、住民すら襲うようになってくるともはや棒や小石では撃退できない。
人々は求めた。
より強固な護りを。
より強力な武具を。
そして、より安心できる仲間を。
人々は龍に祈りを捧げた。龍を神、またはその御使と信じ、直接解決してくれることを望んだ。
しかし、龍族とニンゲンの寿命は違い過ぎたのだ。
人々の目には、龍族が祈りを無視しているように見えた。龍族にとっては思考を巡らせる一瞬であっても人々にとっては一生の大半をかけた待ち時間であった。
それまで崇め奉っていた龍族がすぐには動かないと知るや、人々は集落を閉ざし柵を立てた。大地の仲間と分け合ってきた草木や水を自分たちだけの為に囲い込んだ。柵を越えて侵入してくる集落外の者があれば、マモノや動物、果ては同族に至るまで問答無用で追い払い、もしくは殺害した。
瘴気は濃くなってゆくばかり。
その頃には、いつどこでどんなふうに進化するのか一部のマモノは既に人々の手に負えなくなっていた。
マモノに襲われる集落が増えるにつれ、同族同士であるにもかかわらず集落の強奪が当たり前のように起こった。いつしか人々は集落を奪い合った本来の目的を忘れ、必要以上の豊かさや争いそのものを求めて貪り合うようになってしまっていた。
護り神と崇められていた龍族も見かけることが無くなり、一部の者が空っぽの神殿に飾られた偶像を崇める滑稽な風景が散見されるようになった。
暗黒時代の始まりである。
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