食べたい2人の気散事・裏

黒川

文字の大きさ
上 下
41 / 67

【人は語る】証言者:佐々木さん

しおりを挟む
「ばいばーい」

大きく手を振って相原君とそのお連れさんと別れる。

「……ねぇ……」

中学以来の友人である、ヒノトが口を開いた。

「すっごい牽制受けてたんだけど……」

私はカタカタと震えるヒノトの肩をキュッと抱いた。

「高難易度乙女ゲー並の距離をはかり、正しい選択肢を選び続け、相原氏との親密度を上げ、連絡先(ただしゲームアプリである)を得た私凄くない?」

暫く2人でファストフードの店先で、恐怖のあまり抱きしめ合った。因みに、私たち2人ともそっちの趣味は無い。

「古川さんと言う人のナゾよ」

「分かりみ。けどジャングルの奥地には向かいたくない」

「目が笑っておらず、終始値踏みされる居心地の悪さ」

「マリアナ海峡」

そう、割と映画の感想を言い合っていた時はそこまで気にならなかったのだけど、女子って色々話が飛ぶでしょ?大学の話とか、ゲームの話とか、少しでも相原君のパーソナルな部分に触れようものなら、ギュン!て、目が一瞬マジになるの。
あ、もちろん古山……?フル……川?もう怖くて名前すら覚えてない酷い酷くない。の、話しね。
パッと見、愛想の良い優男に見えるんだけど、私たちじゃなかったら見逃しちゃうネ的なレベルの恐怖が潜んでいた。

相原君とは、CDフィットでフレンド登録し合った仲だけど、もう夏休み中に会う事は無いだろうし、大学始まっても今と変わらない関係のままだろう。

「でも、2人とも格好良かったね。相原君はフーコが話していた通りだ」

ヒノトは、私の事をフーコと呼ぶ。
本名と何一つかすってもいないネーミング。
それを言ったらヒノトもそうなんだけど、そこは割愛。

「でしょ?相原君は大学でもすっごい人気。で、すっごい塩対応でウケるよ」

「うん、それも何となく分かった。でも、きちんと手順踏んでアプローチすればイケそうかなとも思えるんだけど。あの手のタイプ、礼儀?とか仁義を大切にする感じじゃない?」

「確かにねぇ」

けど。初手を間違えた私にはもう関係の無いこと。

「ヒノトが気になるなら協力するよ?」

「え?ヤダ。近づいたら漏れなく古川さんも付いてくるでしょ?ヤダよ」

身も蓋もない。
けど……あの2人ってどんな関係なんだろう?
同級生でも無いだろうし。
距離感はかりすぎて、相原君のお連れさんは「友だち」とカテゴライズしてそれ以上は突っ込まなかったけど。

なんか、もし相原君が弱みを握られて強制的な付き合いをさせられてるとか、お金をせびられてるとかだったら嫌だな。

少しだけ怖い事を想像して身を震わせる。
私は強めにヒノトの手を握った。

「フーコ痛いよ、気持ちは分かるけど」

握り返してくれるヒノトが優しい。

「でも、私も誰かと触れていないと不安だから、バイト先までこれで行こう」

理解が早い。
百合好きでもLGBTQでも何でもないけど、ヒノトと私は一緒にバイトをしている店に着くまで手を繋いでいた。

後に、店先でお客さまにその様子を目撃され「ヒノフコかフコヒノか論争」が店内で小さく燃え上がっていた事を知り、2人できっちり否定しておいた。

最近2人で面接に行って受かったバイト先の『CANDY STAGE』って、こう言う話が好きだよね。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

処理中です...