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【人は語る】証言者:佐々木さん
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「ばいばーい」
大きく手を振って相原君とそのお連れさんと別れる。
「……ねぇ……」
中学以来の友人である、ヒノトが口を開いた。
「すっごい牽制受けてたんだけど……」
私はカタカタと震えるヒノトの肩をキュッと抱いた。
「高難易度乙女ゲー並の距離をはかり、正しい選択肢を選び続け、相原氏との親密度を上げ、連絡先(ただしゲームアプリである)を得た私凄くない?」
暫く2人でファストフードの店先で、恐怖のあまり抱きしめ合った。因みに、私たち2人ともそっちの趣味は無い。
「古川さんと言う人のナゾよ」
「分かりみ。けどジャングルの奥地には向かいたくない」
「目が笑っておらず、終始値踏みされる居心地の悪さ」
「マリアナ海峡」
そう、割と映画の感想を言い合っていた時はそこまで気にならなかったのだけど、女子って色々話が飛ぶでしょ?大学の話とか、ゲームの話とか、少しでも相原君のパーソナルな部分に触れようものなら、ギュン!て、目が一瞬マジになるの。
あ、もちろん古山……?フル……川?もう怖くて名前すら覚えてない酷い酷くない。の、話しね。
パッと見、愛想の良い優男に見えるんだけど、私たちじゃなかったら見逃しちゃうネ的なレベルの恐怖が潜んでいた。
相原君とは、CDフィットでフレンド登録し合った仲だけど、もう夏休み中に会う事は無いだろうし、大学始まっても今と変わらない関係のままだろう。
「でも、2人とも格好良かったね。相原君はフーコが話していた通りだ」
ヒノトは、私の事をフーコと呼ぶ。
本名と何一つかすってもいないネーミング。
それを言ったらヒノトもそうなんだけど、そこは割愛。
「でしょ?相原君は大学でもすっごい人気。で、すっごい塩対応でウケるよ」
「うん、それも何となく分かった。でも、きちんと手順踏んでアプローチすればイケそうかなとも思えるんだけど。あの手のタイプ、礼儀?とか仁義を大切にする感じじゃない?」
「確かにねぇ」
けど。初手を間違えた私にはもう関係の無いこと。
「ヒノトが気になるなら協力するよ?」
「え?ヤダ。近づいたら漏れなく古川さんも付いてくるでしょ?ヤダよ」
身も蓋もない。
けど……あの2人ってどんな関係なんだろう?
同級生でも無いだろうし。
距離感はかりすぎて、相原君のお連れさんは「友だち」とカテゴライズしてそれ以上は突っ込まなかったけど。
なんか、もし相原君が弱みを握られて強制的な付き合いをさせられてるとか、お金をせびられてるとかだったら嫌だな。
少しだけ怖い事を想像して身を震わせる。
私は強めにヒノトの手を握った。
「フーコ痛いよ、気持ちは分かるけど」
握り返してくれるヒノトが優しい。
「でも、私も誰かと触れていないと不安だから、バイト先までこれで行こう」
理解が早い。
百合好きでもLGBTQでも何でもないけど、ヒノトと私は一緒にバイトをしている店に着くまで手を繋いでいた。
後に、店先でお客さまにその様子を目撃され「ヒノフコかフコヒノか論争」が店内で小さく燃え上がっていた事を知り、2人できっちり否定しておいた。
最近2人で面接に行って受かったバイト先の『CANDY STAGE』って、こう言う話が好きだよね。
大きく手を振って相原君とそのお連れさんと別れる。
「……ねぇ……」
中学以来の友人である、ヒノトが口を開いた。
「すっごい牽制受けてたんだけど……」
私はカタカタと震えるヒノトの肩をキュッと抱いた。
「高難易度乙女ゲー並の距離をはかり、正しい選択肢を選び続け、相原氏との親密度を上げ、連絡先(ただしゲームアプリである)を得た私凄くない?」
暫く2人でファストフードの店先で、恐怖のあまり抱きしめ合った。因みに、私たち2人ともそっちの趣味は無い。
「古川さんと言う人のナゾよ」
「分かりみ。けどジャングルの奥地には向かいたくない」
「目が笑っておらず、終始値踏みされる居心地の悪さ」
「マリアナ海峡」
そう、割と映画の感想を言い合っていた時はそこまで気にならなかったのだけど、女子って色々話が飛ぶでしょ?大学の話とか、ゲームの話とか、少しでも相原君のパーソナルな部分に触れようものなら、ギュン!て、目が一瞬マジになるの。
あ、もちろん古山……?フル……川?もう怖くて名前すら覚えてない酷い酷くない。の、話しね。
パッと見、愛想の良い優男に見えるんだけど、私たちじゃなかったら見逃しちゃうネ的なレベルの恐怖が潜んでいた。
相原君とは、CDフィットでフレンド登録し合った仲だけど、もう夏休み中に会う事は無いだろうし、大学始まっても今と変わらない関係のままだろう。
「でも、2人とも格好良かったね。相原君はフーコが話していた通りだ」
ヒノトは、私の事をフーコと呼ぶ。
本名と何一つかすってもいないネーミング。
それを言ったらヒノトもそうなんだけど、そこは割愛。
「でしょ?相原君は大学でもすっごい人気。で、すっごい塩対応でウケるよ」
「うん、それも何となく分かった。でも、きちんと手順踏んでアプローチすればイケそうかなとも思えるんだけど。あの手のタイプ、礼儀?とか仁義を大切にする感じじゃない?」
「確かにねぇ」
けど。初手を間違えた私にはもう関係の無いこと。
「ヒノトが気になるなら協力するよ?」
「え?ヤダ。近づいたら漏れなく古川さんも付いてくるでしょ?ヤダよ」
身も蓋もない。
けど……あの2人ってどんな関係なんだろう?
同級生でも無いだろうし。
距離感はかりすぎて、相原君のお連れさんは「友だち」とカテゴライズしてそれ以上は突っ込まなかったけど。
なんか、もし相原君が弱みを握られて強制的な付き合いをさせられてるとか、お金をせびられてるとかだったら嫌だな。
少しだけ怖い事を想像して身を震わせる。
私は強めにヒノトの手を握った。
「フーコ痛いよ、気持ちは分かるけど」
握り返してくれるヒノトが優しい。
「でも、私も誰かと触れていないと不安だから、バイト先までこれで行こう」
理解が早い。
百合好きでもLGBTQでも何でもないけど、ヒノトと私は一緒にバイトをしている店に着くまで手を繋いでいた。
後に、店先でお客さまにその様子を目撃され「ヒノフコかフコヒノか論争」が店内で小さく燃え上がっていた事を知り、2人できっちり否定しておいた。
最近2人で面接に行って受かったバイト先の『CANDY STAGE』って、こう言う話が好きだよね。
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