食べたい2人の気散事・裏

黒川

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32:表~55

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「んんんー????」

秋晴れも秋晴れ、気温はまだ暑いけど真夏の茹だるような暑さに比べれば少しはマイルドになったかな?って程度の9月半ば。
俺とゆん君2人で過ごす遅めの夏休みは、俺の唸り声から始まった。

「あの、うちの親が1週間お世話になるんだから生活費をと。俺もそう思ったので、こちらをお願いします」

万札が数枚入った茶封筒を渡されて、ちょっとビックリした。

「いや要らないよ?何言ってるの?」

「でも、食費折半したとしても光熱費は確実に2人分になってタットさんの負担が増えます。諸経費って両親も言ってましたし、受け取ってください」

しばらく受け取れない、受け取ってのやり取りを経て、折衷案として食費は折半、家事全般をゆん君が行う事で茶封筒を受け取らずに済んだ。
俺としてはその家事をお願いする事だって渋々だし、ゆん君も受け取らない俺に家事だけかと渋々な顔してる。

「そしたらさ、その頂いたソレで日帰りでもいいから遠出の資金にしようか?」

と、提案したらかなり顔色が良くなった。
ゆん君の親御さんごめんなさい。生活費は娯楽費になります。


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


分かってたいたけど、ゆん君は体力オバケだ。日中かなり動いても、夜にケロっとドラゴンズヒート30をこなして汗びっしょりになってる。
俺なんて一日中歩いたりすれば、それ以上の運動は出来ないし、夜も寝付きが良くなってしまう。


……そう、良くなってしまうんだよ!
こんなにも一日中一緒に居られると言うのに!気づいたら朝だったよ!


初日は2人で街歩き系の謎解きにチャレンジした。お互いこういうイベントは初めての参加だったけど、無事当日中にクリア出来た。
途中、逆ナンされるアクシデントにも見舞われたけど……なんとか回避もしたし。
……ちょっと気になったのが、ゆん君の態度の変化。
女の子を気遣うような言葉を投げかけたりして……もちろんぎこち無かったけど、恐らくゆん君の中で何か心境の変化があったんだろうなと、見て分かった。その姿が可愛くて愛おしくて……つい笑ってしまって、ゆん君に拗ねられて……その態度すらも堪らなくて……それでいて……嫌な考えが頭を巡る。

女の子を好きになってしまったらどうしよう?

そりゃ今日明日でそんな事にはならないだろうけど。これで苦手意識を克服したら?女の子と会話する機会が増えたら?そこで気になる女の子が現れてしまったら?

一緒に過ごせて楽しい時間なのに嫌な予感が過ぎるばかり。これじゃダメだと思って気を取り直そうとしても外に出れば来るわ来るわ逆ナンパ!!

うっっっっざ!!!!!!人の彼氏に色目使わないでくれますぅ!?

なんて本音はしまって穏便に「俺が」お断りする。

「これから映画ですか?」
そうだよ。急いでるから、ごめんね。
「どこに行くんですか?」
既に2人で予約をしてるところに向かってるよ。
「私たちも2人なんですよぅ」
そう?俺たちは俺たちで過ごすから、そっちも楽しんでね。
等などバリエーションは様々だ。

思い出してもイライラする。
なんで女性ってだけで自分が選ばれると思ってるんだろ?自意識過剰も甚だしい。
……嘘だ。単なる醜い嫉妬心だ。
ゆん君は、俺の対応がスマートだと言ってくれてるけど、嫉妬心丸出しで断ってるからね。にこやかな表情は意識してるけど、目は笑ってない。
言葉は一応選んでいるけど回答は拒否一択だ。
空気を読める女の子なら即回避レベル。
たまに空気を読まない女の子に余計な詮索される事もあったけど、その時はもうゆん君の肩を抱いて、

「君たちは俺達が恋人同士であってもそうやって執拗に話しかけるの?」

と、蹴散らした。別の意味で好奇の目で見られたけど、ゆん君もゆん君で見せつけるように手を恋人繋ぎしてくれたので、かなり嬉しかった。

「今の人、タットさんばかり見てました。俺の……こ……恋人なのに……」

顔を真っ赤にして文句言うゆん君が可愛い。なんでそんな勘違いするかなぁ。さっきの女の子たちも、その前の女の子たちも、みんなゆん君の方見てたんだけどな。対応したのが俺だから俺の方を見てるだけだってのに。

でも、それはそれで俺にとっては好都合だった。
だって……そう勘違いしてくれていれば、女の子に目が行く事も無いしね……

このまま、ずっと女性が苦手だったらいいのにな。


✂ーーーーーーーーーーーーーーーーー✂


しばらく~55話の表記が続きます。
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