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31:表~?
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「……で……やっぱり俺、--さんが好きになってしまって……すみません……」
「うん……謝らなくていいよ。いつかはそうなるって俺は分かってたし。彼女と……幸せにね……」
ゆん君は、顔の見えない小柄な女性の肩を抱いて俺の前から去った……
その姿が見えなくなるまで、俺はずっと2人の背中を見ていた。
……振り向いて。
俺を見て……。
戻って来なくてもいいから。
せめて、心残りある表情で俺の事を見てくれたら……
なんて女々しい気持ちで見ていたけど、彼が振り向くことはなく、ずっと慈しむような視線を彼女に向けていた。
俺と言う存在は、ゆん君の中から完全に無くなったんだ。
仕方ないよね。もとはノンケの男の子だ。好みの女性が現れたら、そっちになびくのが当然だろう。
上を向いて、でも溢れる涙は留める事は出来ず。ポタポタとながれるばかりだった。誰だよ。涙がこぼれないように上を向けって歌ってたやつは。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「っっっはぁっ!!!!」
目が覚めると、汗でパジャマがだいぶ湿っていた。エアコンがタイマーになっていたのか、いつの間にか切れていた。
俺はすぐさまエアコンの電源を付けて空調を整える。
あーぁ。夢見わっっる!目覚め最悪。
……って言いたいけれど、ゆん君とお付き合いが始まってから、定期的これに類似する夢を見続けている。
潜在意識の中で、ゆん君は女の子に戻って行くのだろうと考えてしまっているのかも知れない。
ハッピーハッピーとか言いながら、結局どこかで、いつか来るであろう未来に怯えている。
ため息1つ吐いて、ベッドを降りた。
あともう少しでイロトリの長期休暇が始まる。
そうしたら、ゆん君との遅めの夏休みを過ごすんだ。
楽しみっ!
1週間、俺の家に泊まりに来てくれるんだって。それって同棲の予行演習とか思ってもいいかな!?
そこで……最後までエッチ出来たらいいなぁ……
なるべく楽しい事を考える。
大丈夫、まだゆん君は俺の事を好きでいてくれている。
何よりゆん君は女性に苦手意識を持っている。
そんな簡単に女の子に盗られる筈は無い。
大丈夫、大丈夫。
そう自分に言い聞かせて湿って脱ぎにくくなったパジャマを少し乱暴気味に肌から剥がし始めた。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
「生ひとつ、もずくの天ぷら、スパムおにぎり、お待たせしました。いつもありがとうございます」
人好きする笑顔で配膳してくれたのは、俺の母親くらいの年齢の女性スタッフ。
顔を覚えられてしまうくらい通いつめている沖縄料理屋『うさぎおい』
ゆん君を連れてきた時は、ランチタイムだったけど、あれから2人でも何度か昼も夜も来ている。
けど、今日は1人だ。1人でも足繁く通っているので、顔も覚えられてしまったのだろう。
周りからはガヤガヤと賑やかな声が聞こえてくるが、人が多すぎて会話の中身までは聞こえてこない。
スタッフさんも目まぐるしく注文を受け、厨房に通し、配膳にと動き回っている。
俺はカウンター席に座って頼んだメニューを黙々と食べ進めた。
……ゆん君と一緒が良かったな……なんて、今まで1人で食事をとる事なんて何も感じなかったし、むしろ1人で好きな所に行ける自由を謳歌してたはずなのに、この変わりよう。自分でも笑ってしまう。
食事はいつも通り、とても美味しかったけど気持ちが少しだけ味気なかった。
次ここに来る時は、ゆん君と一緒に来ようと心に決めて店を出た。
9月になったとはいえ、外はまだ少し蒸し暑い。
家帰ってお風呂入ってサッパリしよう。
今日は、悪い夢を見ませんように……
「うん……謝らなくていいよ。いつかはそうなるって俺は分かってたし。彼女と……幸せにね……」
ゆん君は、顔の見えない小柄な女性の肩を抱いて俺の前から去った……
その姿が見えなくなるまで、俺はずっと2人の背中を見ていた。
……振り向いて。
俺を見て……。
戻って来なくてもいいから。
せめて、心残りある表情で俺の事を見てくれたら……
なんて女々しい気持ちで見ていたけど、彼が振り向くことはなく、ずっと慈しむような視線を彼女に向けていた。
俺と言う存在は、ゆん君の中から完全に無くなったんだ。
仕方ないよね。もとはノンケの男の子だ。好みの女性が現れたら、そっちになびくのが当然だろう。
上を向いて、でも溢れる涙は留める事は出来ず。ポタポタとながれるばかりだった。誰だよ。涙がこぼれないように上を向けって歌ってたやつは。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「っっっはぁっ!!!!」
目が覚めると、汗でパジャマがだいぶ湿っていた。エアコンがタイマーになっていたのか、いつの間にか切れていた。
俺はすぐさまエアコンの電源を付けて空調を整える。
あーぁ。夢見わっっる!目覚め最悪。
……って言いたいけれど、ゆん君とお付き合いが始まってから、定期的これに類似する夢を見続けている。
潜在意識の中で、ゆん君は女の子に戻って行くのだろうと考えてしまっているのかも知れない。
ハッピーハッピーとか言いながら、結局どこかで、いつか来るであろう未来に怯えている。
ため息1つ吐いて、ベッドを降りた。
あともう少しでイロトリの長期休暇が始まる。
そうしたら、ゆん君との遅めの夏休みを過ごすんだ。
楽しみっ!
1週間、俺の家に泊まりに来てくれるんだって。それって同棲の予行演習とか思ってもいいかな!?
そこで……最後までエッチ出来たらいいなぁ……
なるべく楽しい事を考える。
大丈夫、まだゆん君は俺の事を好きでいてくれている。
何よりゆん君は女性に苦手意識を持っている。
そんな簡単に女の子に盗られる筈は無い。
大丈夫、大丈夫。
そう自分に言い聞かせて湿って脱ぎにくくなったパジャマを少し乱暴気味に肌から剥がし始めた。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
「生ひとつ、もずくの天ぷら、スパムおにぎり、お待たせしました。いつもありがとうございます」
人好きする笑顔で配膳してくれたのは、俺の母親くらいの年齢の女性スタッフ。
顔を覚えられてしまうくらい通いつめている沖縄料理屋『うさぎおい』
ゆん君を連れてきた時は、ランチタイムだったけど、あれから2人でも何度か昼も夜も来ている。
けど、今日は1人だ。1人でも足繁く通っているので、顔も覚えられてしまったのだろう。
周りからはガヤガヤと賑やかな声が聞こえてくるが、人が多すぎて会話の中身までは聞こえてこない。
スタッフさんも目まぐるしく注文を受け、厨房に通し、配膳にと動き回っている。
俺はカウンター席に座って頼んだメニューを黙々と食べ進めた。
……ゆん君と一緒が良かったな……なんて、今まで1人で食事をとる事なんて何も感じなかったし、むしろ1人で好きな所に行ける自由を謳歌してたはずなのに、この変わりよう。自分でも笑ってしまう。
食事はいつも通り、とても美味しかったけど気持ちが少しだけ味気なかった。
次ここに来る時は、ゆん君と一緒に来ようと心に決めて店を出た。
9月になったとはいえ、外はまだ少し蒸し暑い。
家帰ってお風呂入ってサッパリしよう。
今日は、悪い夢を見ませんように……
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