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「虫がよすぎる話」
確かにそうだ。
でも……
「最初から、ゆん君はきちんと俺に言ってくれていたよね?君のハタチのお祝いをした帰りに。それでもいいから、これからも一緒に居たいって、俺は言ったはずだよ」
ここに罪悪感を覚えたのなら、しっかり訂正しておきたい。俺だって、この曖昧な関係を享受してきたんだから。
「今は……タットさんの気持ちを蔑ろにしていた、と言う気持ちでいっぱいです……ごめんなさい」
「うん……俺としては、気にしなくていいよって言いたい所だけど、ゆん君にとっては、そう言う話では無いよね」
「はい……」
店主さん、なんて事をけしかけてくれたんだ?と恨めしい気持ちが沸きつつ、俺も俺で少しこの関係にナーバスになっていたから、良いタイミングだったかも知れない。
こうやって、俺の気持ちを真剣に考えてくれてるんだ。
「じゃぁ、改めて聞くよ?俺は、ゆん君の事が好き。なんなら、最初の告白した頃よりもっと好き。もちろん、恋愛的な意味で言ってるからね。出来る事ならお付き合いしたい。恋人なら許されるような関係を築きたい。独占したい。ゆん君は?」
「俺も、タットさんが好きです。恋愛的な意味か、まだ分かりません。でも、タットさん以上に好きな人はいません。これからも出来る気配はありません。タットさんが、他の人を好きになってしまう事を想像すると、悲しくなります」
あぁ、なんでコレが恋愛じゃないんだろう?
「コレは、恋愛的な意味で好きって事なんでしょうか?」
俺に聞かないでよ。悪い大人になってしまいたい。
「それ、俺に聞く?そんな事聞かれたら、悪い大人になって『そうだよ、ゆん君のソレは恋愛的な意味で俺の事が好きと言う意味だ。だから俺と付き合おう』って言っちゃうよ?」
ほんと、俺で良かったね?ゆん君を前にして、あの店主さんの威圧を貰って、悪い大人になんてなれるはずがない。
「タットさんが、俺の気持ちを大事にしてくれている事、とても嬉しいです。でも、その大事にしてくれている裏で、俺はタットさんの気持ちを蔑ろにしていたんだと、今は感じています」
それでいい。その言葉だけで、今はいい。
「うん、俺はそれで今は十分だよ。意識してくれるようになったんだなって、感じられる。とても嬉しい」
厳密に言えば、これからも現状維持だけど、ゆん君の心持ちが少しだけ変わったのは、俺にとっては大きな進歩だ。
気持ちを完全に切り替え、店主さんに作って貰ったココアを頂く。
「おいしーぃ!苦味と甘味のバランスが絶妙だね!」
さすがイロトリ。
ココアすらも特別なのか。
今度どこのココアを使ってるのか、店主さんに聞いてみよう。
ゆん君にもココアをすすめて、2人で飲み干すと、ゆん君がカップを片付けてくれた。
裏口から店を出て、ゆん君が施錠を確認すると、2人並んで駅に向かった。
「明日は朝からバイトなんだね」
店主さんとのやり取りを思い出しながら予定を聞く。
「はい。でも、明日は通常営業がランチタイムまでなので、俺はそこで終わりです…………あの……迷惑じゃなかったら、タットさんがお仕事終わってから、一緒に夕飯どうですか?もう何か予定とか入ってますか?」
さっきのやり取りの後にコレ!
あぁ~!もう好き!!ありがとう!!
「全然っ。何も予定入ってないよ?仕事も、夜の打ち合わせ無いし。定時で終われる。むしろ何がなんでも終わらせるよ!夜から会おう!一緒にご飯食べよう」
ギュッと手を握って、体をひっつけると、ゆん君もその距離感を受け入れてくれた。
少しは意識してくれている、と思っている。
あともう少し……こっちに向いてくれたらいいな……好きになって。
俺の事、お願いだから好きになって……?
なんて願いながら、並んで歩いていると、
「タットさん、」
名前を呼ばれ、ゆん君が立ち止まった。
「ん?」
いつもの様に顔を覗き込んで返事をすると、そのままゆん君の顔が近付き……
キスされた…………
確かにそうだ。
でも……
「最初から、ゆん君はきちんと俺に言ってくれていたよね?君のハタチのお祝いをした帰りに。それでもいいから、これからも一緒に居たいって、俺は言ったはずだよ」
ここに罪悪感を覚えたのなら、しっかり訂正しておきたい。俺だって、この曖昧な関係を享受してきたんだから。
「今は……タットさんの気持ちを蔑ろにしていた、と言う気持ちでいっぱいです……ごめんなさい」
「うん……俺としては、気にしなくていいよって言いたい所だけど、ゆん君にとっては、そう言う話では無いよね」
「はい……」
店主さん、なんて事をけしかけてくれたんだ?と恨めしい気持ちが沸きつつ、俺も俺で少しこの関係にナーバスになっていたから、良いタイミングだったかも知れない。
こうやって、俺の気持ちを真剣に考えてくれてるんだ。
「じゃぁ、改めて聞くよ?俺は、ゆん君の事が好き。なんなら、最初の告白した頃よりもっと好き。もちろん、恋愛的な意味で言ってるからね。出来る事ならお付き合いしたい。恋人なら許されるような関係を築きたい。独占したい。ゆん君は?」
「俺も、タットさんが好きです。恋愛的な意味か、まだ分かりません。でも、タットさん以上に好きな人はいません。これからも出来る気配はありません。タットさんが、他の人を好きになってしまう事を想像すると、悲しくなります」
あぁ、なんでコレが恋愛じゃないんだろう?
「コレは、恋愛的な意味で好きって事なんでしょうか?」
俺に聞かないでよ。悪い大人になってしまいたい。
「それ、俺に聞く?そんな事聞かれたら、悪い大人になって『そうだよ、ゆん君のソレは恋愛的な意味で俺の事が好きと言う意味だ。だから俺と付き合おう』って言っちゃうよ?」
ほんと、俺で良かったね?ゆん君を前にして、あの店主さんの威圧を貰って、悪い大人になんてなれるはずがない。
「タットさんが、俺の気持ちを大事にしてくれている事、とても嬉しいです。でも、その大事にしてくれている裏で、俺はタットさんの気持ちを蔑ろにしていたんだと、今は感じています」
それでいい。その言葉だけで、今はいい。
「うん、俺はそれで今は十分だよ。意識してくれるようになったんだなって、感じられる。とても嬉しい」
厳密に言えば、これからも現状維持だけど、ゆん君の心持ちが少しだけ変わったのは、俺にとっては大きな進歩だ。
気持ちを完全に切り替え、店主さんに作って貰ったココアを頂く。
「おいしーぃ!苦味と甘味のバランスが絶妙だね!」
さすがイロトリ。
ココアすらも特別なのか。
今度どこのココアを使ってるのか、店主さんに聞いてみよう。
ゆん君にもココアをすすめて、2人で飲み干すと、ゆん君がカップを片付けてくれた。
裏口から店を出て、ゆん君が施錠を確認すると、2人並んで駅に向かった。
「明日は朝からバイトなんだね」
店主さんとのやり取りを思い出しながら予定を聞く。
「はい。でも、明日は通常営業がランチタイムまでなので、俺はそこで終わりです…………あの……迷惑じゃなかったら、タットさんがお仕事終わってから、一緒に夕飯どうですか?もう何か予定とか入ってますか?」
さっきのやり取りの後にコレ!
あぁ~!もう好き!!ありがとう!!
「全然っ。何も予定入ってないよ?仕事も、夜の打ち合わせ無いし。定時で終われる。むしろ何がなんでも終わらせるよ!夜から会おう!一緒にご飯食べよう」
ギュッと手を握って、体をひっつけると、ゆん君もその距離感を受け入れてくれた。
少しは意識してくれている、と思っている。
あともう少し……こっちに向いてくれたらいいな……好きになって。
俺の事、お願いだから好きになって……?
なんて願いながら、並んで歩いていると、
「タットさん、」
名前を呼ばれ、ゆん君が立ち止まった。
「ん?」
いつもの様に顔を覗き込んで返事をすると、そのままゆん君の顔が近付き……
キスされた…………
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