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15:表~25
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イロトリのランチタイムの予約が取れた当日。仕事は休み。のんびりと起きて、ゆん君の大学近くのカフェに向かい、そこで時間を潰す。
ストーカー?なんとでも言えばいい。
それだけ必死なんだ。
そろそろかな?と言うタイミングでメッセージを送った。
『講義最終日おつかれさま!このあとバイトだよね?昼ごはん一緒に食べる時間あるかな?』
時期的には、大学生は夏休みに入っているだろうけど、ゆん君は夏季休暇中の集中講義をいくつか取ってるみたいで、夏休みのようで夏休みでは無い。集中講義、なんて銘を打ってるので、毎日のように大学に通っていた。
そして、今日がその最終日。
『14時からなので結構時間あります。ご飯一緒に食べたいです。どこで待ち合わせますか?』
よし。ちょうど良い時間だ。
俺はすぐに彼に電話をかけた。
さほどコールする事も無く、電話に出てくれる。
引かれるかな?と、思いつつも、今日は仕事が休みであること、既に大学近くまで来てることを伝えた。
『あぁ、だったら俺も今日バイト入れなければ良かったなぁ。そしたらタットさんと平日に遊べたのに……』
ゆん君は、なんとも残念そうな声音でそんな事を言ってくれて、思わず俺の喉が変な風に鳴った。
ゆん君は、そんな俺から出た人外っぽい音は、そっちのけで、
『とりあえず、ダッシュでそっちに向かいますので、今どこに居るのか教えてください』
と、割と声のボリュームが大きくなった。ご機嫌なのかな?だったら嬉しいんだけどな。
大学近くのカフェの名前を言うと『すぐ向かいます』と、電話は切られた。
俺は自分のニヤケ顔を押さえながら、クリーム増し増しのアイスカフェラテをストローで回し続けた。
あぁ、楽しみだ……!
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
入り口近く、頻繁に目線を送ると自動ドアが開いた。
ゆん君だ。
思わず立ち上がり、彼の名前を呼んで手を振った。すぐに気付いてくれて、彼は席を案内しようとするカフェスタッフに一礼してから近付いて来てくれる。あぁ、丁寧な子だよなぁ。好き。
向かいの席の椅子を引いて座らせる。
暑かったのか、頬がほんのりピンクだ。
えぇ?どうしよう?可愛い食べたい。
なんて邪な気持ちを隠して、少しばかり接触もしたく、「おつかれ」と言う言葉と一緒に彼の頭を撫でた。うーん、汗ばんでいてしっとり。まぁ、暑かったしね。
されるがままの彼の様子を、外気の気温と屋内の気温の温度差に慣れるための態度だと観察していたのだけど、どうも違うみたい。
こう、何か嫌なことを飲み込む様な態度?
「なにか、いやなこと、あった?」
ストレートに聞く。
「いつもの女子達の勝手な行動に振り回されただけです。きちんと拒否ってきましたけど……」
「……嫌だったんだね、そっちもおつかれさま」
ゆん君は、女性が苦手だ。さしずめ大学の女の子たちが彼の都合を無視するようなアプローチでもしたのだろう。馬鹿だな。手順さえ守れば、きっとゆん君は君たちにも振り向いてくれるだろうに。
見た事も無い、ゆん君を取り巻く女の子たちに、心の中で悪態を吐き、少しばかりの優越感を持って彼の頭を更に撫でた。
トゲついた彼の心を柔くさせるため、クリーム増し増しのアイスカフェラテを注文して受け取る。
俺が初めてここの喫茶店に入った時、普通にコーヒーを頼んだのだけど、まぁ苦味特化の炭火系の豆を使っていた。嫌いでは無いけど、ここまで求めていない。と、ゆん君にボヤいたら、このクリーム増し増しのカフェラテを勧められた。もともと、この店はカフェラテとかクリーム系の珈琲が人気らしい。
それを聞いて、俺も最初の来店以降はずっとカフェラテ一択だ。クリームと珈琲のバランスがとても良い。
スタッフさんから受け取ったカフェラテをゆん君の目の前に置く。
「ありがとうございます」
ゆん君は俺に小さく頭を下げてから、マドラーをスプーン代わりにしてトッピングのクリームを掬い口の中に入れた。
「あぅああああー、これこれぇ~ぅぇえええ~」
すかさずグラスに口をつけて、カフェラテを1口飲む。
そーぅ、これこれぇ~。
俺も口元を緩ませながら、ゆん君がカフェラテを飲んでる姿を見守る。
ここのクリームは暴力的に甘い。それを珈琲の苦味で中和をする。逆を言えば、珈琲の苦味をクリームで中和する、とも言える持ちつ持たれつなカフェラテなんだ。
ゆん君は、これを飲む時必ずクリームだけを最初に口にする。そして頭を抱えるように甘さに耐え、珈琲で緩和をする。
「ふふっ……相変わらずその飲み方だよね。見てて楽しい」
可愛い、とも言う。
「ここのカフェラテはこれが1番美味いんです」
美味しいを追求するその姿勢も好き。
「知ってる。ゆん君の飲み方見てからは、俺もお馴染みの飲み方だもん」
俺も、ゆん君の飲み方を見てからは同じ飲み方をしてる。なんか、一緒って嬉しいよね?
一息いてから、カフェを後にして2人並んで駅に向かった。
ゆん君は、昼をどこで食べようか思案顔だ。俺は「ニシシシシシ……」と、らしくない声を漏らし、
「ゆん君、ご飯どこで食べようか気にしてたでしょ?バイト先に近いところか道すがらか、とか」
なんて、ゆん君が考えていただろう事を言い当て、自分のスマホのイロトリ予約完了画面を見せつけた。
「えぇー……?」
「1度でいいから、ゆん君とイロトリでゆっくり食事がしてみたかったんだよ」
約束した時点で伝えても良かったのだけど、驚かせてみたかった。
お客として入るのは久しぶりだと言うので、それも含めて楽しみが余計に膨らんだ。
ストーカー?なんとでも言えばいい。
それだけ必死なんだ。
そろそろかな?と言うタイミングでメッセージを送った。
『講義最終日おつかれさま!このあとバイトだよね?昼ごはん一緒に食べる時間あるかな?』
時期的には、大学生は夏休みに入っているだろうけど、ゆん君は夏季休暇中の集中講義をいくつか取ってるみたいで、夏休みのようで夏休みでは無い。集中講義、なんて銘を打ってるので、毎日のように大学に通っていた。
そして、今日がその最終日。
『14時からなので結構時間あります。ご飯一緒に食べたいです。どこで待ち合わせますか?』
よし。ちょうど良い時間だ。
俺はすぐに彼に電話をかけた。
さほどコールする事も無く、電話に出てくれる。
引かれるかな?と、思いつつも、今日は仕事が休みであること、既に大学近くまで来てることを伝えた。
『あぁ、だったら俺も今日バイト入れなければ良かったなぁ。そしたらタットさんと平日に遊べたのに……』
ゆん君は、なんとも残念そうな声音でそんな事を言ってくれて、思わず俺の喉が変な風に鳴った。
ゆん君は、そんな俺から出た人外っぽい音は、そっちのけで、
『とりあえず、ダッシュでそっちに向かいますので、今どこに居るのか教えてください』
と、割と声のボリュームが大きくなった。ご機嫌なのかな?だったら嬉しいんだけどな。
大学近くのカフェの名前を言うと『すぐ向かいます』と、電話は切られた。
俺は自分のニヤケ顔を押さえながら、クリーム増し増しのアイスカフェラテをストローで回し続けた。
あぁ、楽しみだ……!
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
入り口近く、頻繁に目線を送ると自動ドアが開いた。
ゆん君だ。
思わず立ち上がり、彼の名前を呼んで手を振った。すぐに気付いてくれて、彼は席を案内しようとするカフェスタッフに一礼してから近付いて来てくれる。あぁ、丁寧な子だよなぁ。好き。
向かいの席の椅子を引いて座らせる。
暑かったのか、頬がほんのりピンクだ。
えぇ?どうしよう?可愛い食べたい。
なんて邪な気持ちを隠して、少しばかり接触もしたく、「おつかれ」と言う言葉と一緒に彼の頭を撫でた。うーん、汗ばんでいてしっとり。まぁ、暑かったしね。
されるがままの彼の様子を、外気の気温と屋内の気温の温度差に慣れるための態度だと観察していたのだけど、どうも違うみたい。
こう、何か嫌なことを飲み込む様な態度?
「なにか、いやなこと、あった?」
ストレートに聞く。
「いつもの女子達の勝手な行動に振り回されただけです。きちんと拒否ってきましたけど……」
「……嫌だったんだね、そっちもおつかれさま」
ゆん君は、女性が苦手だ。さしずめ大学の女の子たちが彼の都合を無視するようなアプローチでもしたのだろう。馬鹿だな。手順さえ守れば、きっとゆん君は君たちにも振り向いてくれるだろうに。
見た事も無い、ゆん君を取り巻く女の子たちに、心の中で悪態を吐き、少しばかりの優越感を持って彼の頭を更に撫でた。
トゲついた彼の心を柔くさせるため、クリーム増し増しのアイスカフェラテを注文して受け取る。
俺が初めてここの喫茶店に入った時、普通にコーヒーを頼んだのだけど、まぁ苦味特化の炭火系の豆を使っていた。嫌いでは無いけど、ここまで求めていない。と、ゆん君にボヤいたら、このクリーム増し増しのカフェラテを勧められた。もともと、この店はカフェラテとかクリーム系の珈琲が人気らしい。
それを聞いて、俺も最初の来店以降はずっとカフェラテ一択だ。クリームと珈琲のバランスがとても良い。
スタッフさんから受け取ったカフェラテをゆん君の目の前に置く。
「ありがとうございます」
ゆん君は俺に小さく頭を下げてから、マドラーをスプーン代わりにしてトッピングのクリームを掬い口の中に入れた。
「あぅああああー、これこれぇ~ぅぇえええ~」
すかさずグラスに口をつけて、カフェラテを1口飲む。
そーぅ、これこれぇ~。
俺も口元を緩ませながら、ゆん君がカフェラテを飲んでる姿を見守る。
ここのクリームは暴力的に甘い。それを珈琲の苦味で中和をする。逆を言えば、珈琲の苦味をクリームで中和する、とも言える持ちつ持たれつなカフェラテなんだ。
ゆん君は、これを飲む時必ずクリームだけを最初に口にする。そして頭を抱えるように甘さに耐え、珈琲で緩和をする。
「ふふっ……相変わらずその飲み方だよね。見てて楽しい」
可愛い、とも言う。
「ここのカフェラテはこれが1番美味いんです」
美味しいを追求するその姿勢も好き。
「知ってる。ゆん君の飲み方見てからは、俺もお馴染みの飲み方だもん」
俺も、ゆん君の飲み方を見てからは同じ飲み方をしてる。なんか、一緒って嬉しいよね?
一息いてから、カフェを後にして2人並んで駅に向かった。
ゆん君は、昼をどこで食べようか思案顔だ。俺は「ニシシシシシ……」と、らしくない声を漏らし、
「ゆん君、ご飯どこで食べようか気にしてたでしょ?バイト先に近いところか道すがらか、とか」
なんて、ゆん君が考えていただろう事を言い当て、自分のスマホのイロトリ予約完了画面を見せつけた。
「えぇー……?」
「1度でいいから、ゆん君とイロトリでゆっくり食事がしてみたかったんだよ」
約束した時点で伝えても良かったのだけど、驚かせてみたかった。
お客として入るのは久しぶりだと言うので、それも含めて楽しみが余計に膨らんだ。
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