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約束当日。
楽しみ過ぎて普段使いもしないフレックスタイムを使用し、いつもより早めの時間に仕事を終わらせた。
別に何かを期待してるワケでも無いのだけど、一応軽くシャワーを浴びて身だしなみを整えてから、家を出た。
ゆん君が通う大学の最寄り駅には、少し早めに到着。時間潰しに入った喫茶店で頼んだ珈琲が、かなり苦味が強かったので、次来た時はカフェラテにしようと心に誓った。
ゆん君の大学周辺のマップをネットで確認しつつ、時計を見て、そろそろ最後の講義も終わる時間かな?と思い喫茶店を出る。大学に向かって歩いていると、ゆん君からメッセージが届いた。
『今から大学を出ます。今どこにいますか?』
すぐに返信をする。
『遅くまで講義おつかれ!俺がそっちに行くから門を出た所で待ってて。大学って出口ひとつだよね?』
『うちは正門しかないので大丈夫です。待ってます』
そんなやり取りを経て正門に向かった。
門の近くで待っていると、俺を探してるのか、険しい表情をしながら、落ち着き無く視線を動かし歩いている、ゆん君を見つけた。
少し遠目だったので、しばらく様子を見ていると、彼に話しかけたそうに見ている女の子や男の子が居ることに気づいた。ゆん君は全く気付いてないのか、あえて無視してるのか、分からないけど。
まぁ、格好良いもんね。
門の近くまで来ると、俺に気付いてくれたのか、目が合った。思わず笑みが零れる。すると、ゆん君も笑顔を見せてくれた。
「お待たせしました」
「待ってないよ。俺も来た所」
やり取りがデートっぽいなと、思わず呟いてしまい、ゆん君にもしっかり聞かれてしまった。
取り繕うように、これからの予定は俺のエスコートで良いか確認し、駅とは反対の道へ連れ出した。
2人で向かった場所は大学から少し離れた路線バスの停留所。学生らしき人は誰も居ない。
バスが来る時間も、まだ少し先だ。
俺は、少し気になった事を聞いてみた。
「ゆん君、大学では有名人なの?門の前で、ゆん君と居たら、あんな短時間なのに行き交う学生みんな振り返ってるし、なんなら出待ち?みたいな女の子達も居たよね?男の子も居た?かな?」
そう聞くと、男女関わらず面識が無くても良く話しかけられるらしい。
あぁ、やっぱりそうか。
ゆん君は格好良いから大学の子達にモテて当然だ。いつもアプローチされているんだろうな。
そう言うのは無視してるって教えてくれたけど、確かにいちいち対応してたら大変そうだ。
バスを選んだのも、そういう女の子や男の子から話しかけられないように、あえて真逆の方向を進んだのだけど、それを伝えると、ゆん君も話しかけられたくなかったのか、
「こう言う気遣いは嬉しいです」
と、逆にこっちが気遣われるような返事を貰った。本当に、この子は相手の事を考えて言葉を選んでるなと、また好きの気持ちが膨らんでしまった。
何か、言葉を発しようとすると、どうしても自分の気持ちを伝えたくなってしまうので、しばらく黙っていると、結構な強さで肩を叩かれた。
「タットさん!タットさん!出た!出た!レアドラゴン出た!これ2人なら倒せますよ絶対!あぁ~!バス!まだ来ないですよね!?はやく!はやく!」
「え?え!?」
戸惑いながらもゲーム画面を開くと、確かに神出鬼没のレアボスが出現していた。戦闘画面に素早く切り替え、2人でボス戦に挑んだ。
「レアアイテムドロップ無しかぁ」
レアと言っても難易度は高くなかったので、2人がかりで簡単に倒してしまった。ゆん君はレアアイテムが貰えなくて残念そうだったけど、俺としては初めて倒したドラゴンだったので、モンスター図鑑の種類が増えて満足だった。
しばらく、CDフィットの話で盛り上がっていると、バスが到着した。2人で乗り込んで、経路を確認。目的地近くの停留所で降車。
ゆん君は、初めて降りた場所なのか、珍しそうに辺りを見回していた。
どさくさに紛れて、ゆん君の腕を掴んで道案内をする。
……と言っても、掴んだのは一瞬だけ。
わざとらしかったかな?
簡単に店の説明をしながら扉を開け、エスコートする。
ゆん君は少し照れ臭そうにしていた。
楽しみ過ぎて普段使いもしないフレックスタイムを使用し、いつもより早めの時間に仕事を終わらせた。
別に何かを期待してるワケでも無いのだけど、一応軽くシャワーを浴びて身だしなみを整えてから、家を出た。
ゆん君が通う大学の最寄り駅には、少し早めに到着。時間潰しに入った喫茶店で頼んだ珈琲が、かなり苦味が強かったので、次来た時はカフェラテにしようと心に誓った。
ゆん君の大学周辺のマップをネットで確認しつつ、時計を見て、そろそろ最後の講義も終わる時間かな?と思い喫茶店を出る。大学に向かって歩いていると、ゆん君からメッセージが届いた。
『今から大学を出ます。今どこにいますか?』
すぐに返信をする。
『遅くまで講義おつかれ!俺がそっちに行くから門を出た所で待ってて。大学って出口ひとつだよね?』
『うちは正門しかないので大丈夫です。待ってます』
そんなやり取りを経て正門に向かった。
門の近くで待っていると、俺を探してるのか、険しい表情をしながら、落ち着き無く視線を動かし歩いている、ゆん君を見つけた。
少し遠目だったので、しばらく様子を見ていると、彼に話しかけたそうに見ている女の子や男の子が居ることに気づいた。ゆん君は全く気付いてないのか、あえて無視してるのか、分からないけど。
まぁ、格好良いもんね。
門の近くまで来ると、俺に気付いてくれたのか、目が合った。思わず笑みが零れる。すると、ゆん君も笑顔を見せてくれた。
「お待たせしました」
「待ってないよ。俺も来た所」
やり取りがデートっぽいなと、思わず呟いてしまい、ゆん君にもしっかり聞かれてしまった。
取り繕うように、これからの予定は俺のエスコートで良いか確認し、駅とは反対の道へ連れ出した。
2人で向かった場所は大学から少し離れた路線バスの停留所。学生らしき人は誰も居ない。
バスが来る時間も、まだ少し先だ。
俺は、少し気になった事を聞いてみた。
「ゆん君、大学では有名人なの?門の前で、ゆん君と居たら、あんな短時間なのに行き交う学生みんな振り返ってるし、なんなら出待ち?みたいな女の子達も居たよね?男の子も居た?かな?」
そう聞くと、男女関わらず面識が無くても良く話しかけられるらしい。
あぁ、やっぱりそうか。
ゆん君は格好良いから大学の子達にモテて当然だ。いつもアプローチされているんだろうな。
そう言うのは無視してるって教えてくれたけど、確かにいちいち対応してたら大変そうだ。
バスを選んだのも、そういう女の子や男の子から話しかけられないように、あえて真逆の方向を進んだのだけど、それを伝えると、ゆん君も話しかけられたくなかったのか、
「こう言う気遣いは嬉しいです」
と、逆にこっちが気遣われるような返事を貰った。本当に、この子は相手の事を考えて言葉を選んでるなと、また好きの気持ちが膨らんでしまった。
何か、言葉を発しようとすると、どうしても自分の気持ちを伝えたくなってしまうので、しばらく黙っていると、結構な強さで肩を叩かれた。
「タットさん!タットさん!出た!出た!レアドラゴン出た!これ2人なら倒せますよ絶対!あぁ~!バス!まだ来ないですよね!?はやく!はやく!」
「え?え!?」
戸惑いながらもゲーム画面を開くと、確かに神出鬼没のレアボスが出現していた。戦闘画面に素早く切り替え、2人でボス戦に挑んだ。
「レアアイテムドロップ無しかぁ」
レアと言っても難易度は高くなかったので、2人がかりで簡単に倒してしまった。ゆん君はレアアイテムが貰えなくて残念そうだったけど、俺としては初めて倒したドラゴンだったので、モンスター図鑑の種類が増えて満足だった。
しばらく、CDフィットの話で盛り上がっていると、バスが到着した。2人で乗り込んで、経路を確認。目的地近くの停留所で降車。
ゆん君は、初めて降りた場所なのか、珍しそうに辺りを見回していた。
どさくさに紛れて、ゆん君の腕を掴んで道案内をする。
……と言っても、掴んだのは一瞬だけ。
わざとらしかったかな?
簡単に店の説明をしながら扉を開け、エスコートする。
ゆん君は少し照れ臭そうにしていた。
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