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本編
11-カナタ キリ の、自覚。
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「……僕、太ったよね?」
自分の頬を触ってマチ君に聞く。
ラキちゃんの定期ライブの帰り、マチ君と歩きながら恐る恐る聞いた。
「もともとガリガリだったんだし、いんじゃね?」
マチ君は何とも無さそうに返事をしたけど、僕は気が気じゃなかった。
だって、いつも履いてるウエストゆるゆるのズボンがちょうど良くなってるんだもん。
これ以上太って履けなくなったら新しいの買わないとだめだし、そんな出費してる余裕なんて無い。
僕がうーうー唸ってると、マチ君がポンポンと優しく頭を叩いてきた。
「キリ、人間見た目じゃないって言うけど、見た目も大事だぜ?」
「いいの!僕はラキちゃんに全てを捧げてるから自分の容姿は関係ないもん!」
キモオタ、陰キャ、ギョロ目、根暗、コミュ障、クソダサセンス、そんなの知ってる。分かってる。
でも、僕はそれを受け入れてるんだから、とやかく言わないで欲しい。
……たとえマチ君だとしても、言われたくない……
「……あー、気に障ったならゴメン、謝る。でもさ、ファンはアイドルの鏡って言うだろ?キリはラキの古参ファンで、彼女のオキニじゃん。少し自分を良く見せてもいいんじゃないか?あと多分ラキも喜ぶ」
「え?オキニ?誰が?」
ファンは鏡と言われてドキリとした。けど、もっとドキリとした言葉に思わず聞き返してしまった。
「キリだよ。明らかにファンサ多いだろ?SNSのラキの反応だって段違いだし」
「そんなのマチ君の勘違いだよ。ラキちゃんはみんな平等に接してくれているよ」
「って、思ってるのは恐らくキリと……他のラキのオキニくらいだろうな。ラキの好みって分かりやすいぜ?フワフワした全肯定の脳内お花畑ばっかだ」
「誰?それ」
「キリの事だよ」
マチ君がニヤニヤ笑っている。
「信じられない」
僕がラキちゃんのオキニなのも、僕の頭がお花畑なのも。
「じゃぁ信じなくていいや。で、話戻すけどさ、キリはさ、素質あると俺は思ってるんだよ。磨いたら美少年になる」
「僕26歳。少年は厳しいよ」
「どこが26歳だよ、せいぜい俺と同い歳とでも言ってろ童顔」
「酷い」
でも陰キャは総じて年齢不詳に見られがちだから、マチ君の言い分は分からなくもない。
また、僕がうーうー唸り始めると、マチ君が頬を摘んできた。頭触ったり頬を摘んだり、今日のマチ君はスキンシップが多い。
「俺がキリの見た目を全プロデュースするって言ったら乗ってくれる?費用は全額こっち持ち、どう?」
どう?って言われても……
僕が困った顔をすると、マチ君も困った顔をした。
「俺、こんなに人に関わりたいって思ったのキリが初めてなんだよ。次点でラキな?」
「ラキちゃんよりも僕なの?」
「ラキより、キリ」
そう真っ直ぐに見つめられて、心臓がバクバクして顔が赤くなってしまった。
なんか……恥ずかしい。
なんて答えたらいいか分からなくて、僕もマチ君の顔を見つめていたら、マチ君も顔を真っ赤にしていた。
「やべ、告ってるみたいだったな」
「あ、僕もそう思ったのかも?」
「で?返事は?」
見た目のこと?告白のこと?どっちか分からなくて、でも何か返事しなくちゃと思って、マチ君に嫌われるようなことは言いたくないなって思って……
「よろしくおねがいします……」
気づいたら、ペコっとマチ君に頭を下げていた。
僕はもしかしたら、フワフワした全肯定の脳内お花畑……なのかも知れない。
自分の頬を触ってマチ君に聞く。
ラキちゃんの定期ライブの帰り、マチ君と歩きながら恐る恐る聞いた。
「もともとガリガリだったんだし、いんじゃね?」
マチ君は何とも無さそうに返事をしたけど、僕は気が気じゃなかった。
だって、いつも履いてるウエストゆるゆるのズボンがちょうど良くなってるんだもん。
これ以上太って履けなくなったら新しいの買わないとだめだし、そんな出費してる余裕なんて無い。
僕がうーうー唸ってると、マチ君がポンポンと優しく頭を叩いてきた。
「キリ、人間見た目じゃないって言うけど、見た目も大事だぜ?」
「いいの!僕はラキちゃんに全てを捧げてるから自分の容姿は関係ないもん!」
キモオタ、陰キャ、ギョロ目、根暗、コミュ障、クソダサセンス、そんなの知ってる。分かってる。
でも、僕はそれを受け入れてるんだから、とやかく言わないで欲しい。
……たとえマチ君だとしても、言われたくない……
「……あー、気に障ったならゴメン、謝る。でもさ、ファンはアイドルの鏡って言うだろ?キリはラキの古参ファンで、彼女のオキニじゃん。少し自分を良く見せてもいいんじゃないか?あと多分ラキも喜ぶ」
「え?オキニ?誰が?」
ファンは鏡と言われてドキリとした。けど、もっとドキリとした言葉に思わず聞き返してしまった。
「キリだよ。明らかにファンサ多いだろ?SNSのラキの反応だって段違いだし」
「そんなのマチ君の勘違いだよ。ラキちゃんはみんな平等に接してくれているよ」
「って、思ってるのは恐らくキリと……他のラキのオキニくらいだろうな。ラキの好みって分かりやすいぜ?フワフワした全肯定の脳内お花畑ばっかだ」
「誰?それ」
「キリの事だよ」
マチ君がニヤニヤ笑っている。
「信じられない」
僕がラキちゃんのオキニなのも、僕の頭がお花畑なのも。
「じゃぁ信じなくていいや。で、話戻すけどさ、キリはさ、素質あると俺は思ってるんだよ。磨いたら美少年になる」
「僕26歳。少年は厳しいよ」
「どこが26歳だよ、せいぜい俺と同い歳とでも言ってろ童顔」
「酷い」
でも陰キャは総じて年齢不詳に見られがちだから、マチ君の言い分は分からなくもない。
また、僕がうーうー唸り始めると、マチ君が頬を摘んできた。頭触ったり頬を摘んだり、今日のマチ君はスキンシップが多い。
「俺がキリの見た目を全プロデュースするって言ったら乗ってくれる?費用は全額こっち持ち、どう?」
どう?って言われても……
僕が困った顔をすると、マチ君も困った顔をした。
「俺、こんなに人に関わりたいって思ったのキリが初めてなんだよ。次点でラキな?」
「ラキちゃんよりも僕なの?」
「ラキより、キリ」
そう真っ直ぐに見つめられて、心臓がバクバクして顔が赤くなってしまった。
なんか……恥ずかしい。
なんて答えたらいいか分からなくて、僕もマチ君の顔を見つめていたら、マチ君も顔を真っ赤にしていた。
「やべ、告ってるみたいだったな」
「あ、僕もそう思ったのかも?」
「で?返事は?」
見た目のこと?告白のこと?どっちか分からなくて、でも何か返事しなくちゃと思って、マチ君に嫌われるようなことは言いたくないなって思って……
「よろしくおねがいします……」
気づいたら、ペコっとマチ君に頭を下げていた。
僕はもしかしたら、フワフワした全肯定の脳内お花畑……なのかも知れない。
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