中本さんの事情事

黒川

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「平久はゲイなのか?」

もうストレートに聞く。後ろから抱きしめられてたけど振り向いて向かい合う形になる。
すると平久はスンッとさっきの変態モードはどこ吹く風と言わんばかりに、いつもの人好きする笑顔に戻って答えた。

「そう言う事になりますかね?女性は恋愛対象では無いです」

回答が曖昧だった。まぁ、最近のLGBTQ事情は複雑だからな。

「性自認は?」

「男、ですね」

「そうか……で?抱かれる方が好きなのか?」

「どっちも出来ますよ。その時の相手によって抱いた方がいいか抱かれた方がいいかで変わります」

「ふーん?そう言うもんなのか?」

「で?中本さんはどうなんですか?」

ニコニコと笑顔のまま俺の唇にキスをする平久。チュッと軽く。

「俺は?……ヘテロで性自認は男だな」

「こんな事しといて?」

平久はチュッチュッと俺の唇にキスを続ける。

「そう、こんな事しといて」

チュッチュッと唇にキスしてくる平久を手のひらで制して、俺から奴の頬にキスをする。

「あひゃぁぁぁぁ……中本さんからのキスぅぅぅぅ!!!」

平久は両手で顔を覆って天を仰いだ。
あ、また変態モードに戻った。
確かに、こんな事しといて女性が性対象であって男性は違うとは言いきれないな……
俺は少し考えてから

「例外もあり……って事になるのか?」

と呟いた。
変態モードの平久が顔を覆ってた指の間からチラリと俺を見て、

「その例外は、俺に限りって事でいいですか?」

指を閉じたり開いたりしながらチラチラ聞いてきた。少しウザい。

「平久に限り……?どうだかな?男とやったのは平久以外居ないから何とも言えないけど、……今の所、別の誰かとこういう事したいとは思わないな。……って事は、平久に限りか……」

覆ってた平久の手のひらを剥がして頬にキスをし、その流れで口にも軽くキスをする。……キスなんて何年ぶりだ?……いや、それ言ったらセックスも同等のレベルか。チュッチュと平久にキスを繰り返す。嫌悪感は無い。強いて言うならさっきからアヒャアヒャ言ってる平久に引いてる位だ。こいつ研修の時はもっとマトモだったはず。どこら辺からこうなったんだろ?いや、研修の時の夜も語尾にハートが見えたし片鱗は見えてたのか?

「平久に限り……って事にしとくわ」

平久の後頭部を掴み引き寄せ、ピトっと改めてしっかりと唇と唇を合わせ舌を奴の中にねじ込む。レロっと軽く舌を舐め吸い付いてから離す。

うん、ディープも嫌悪感無いわ。
他も色々試したかったけど、平久がなんつーか色々とヤバいので止めといた。

「中本さん……俺もうお嫁に行けない……」

ベッドに横たわり再び両手で顔を覆いフルフルと震えてる平久。いやお前さっきもっと凄い事してたよな?

「もとから行けねーだろ。性別的に」

犬の頭を撫でる様にわしゃわしゃと撫でる。

「つきましては中本さんは責任とるために俺とお付き合いしてください。ありがとうございます。大切にします」

「自己完結すな」

ペシっと頭を叩く。
突っ込むのも疲れる。

「でも、中本さんは俺の事嫌いじゃないですよね?」

「嫌いではないな。嫌いだったらこんな事出来ない」

「じゃぁ、とりあえず付き合っておきましょうよ。女性との恋愛はしばらくしないんですよね?だったら俺は男だし問題無いと思います」

いや、あるだろ。あぁ、もう突っ込みが疲れる。
俺が少し呆れ顔をしてると、平久はニコニコしながら話を続けた。

「中本さんって、結構流されやすいですよね?飲みに誘えばサラッと来てくれるし、家に誘えばフラっと来るし、押し倒して乗っかれば良い所突いてくれるし俺のチンコ平気でしごくしキスもしてくれた。本当にノンケ?って疑いますよこれ」

流されやすい自覚はあるが、ここまでとは思って無かったんだがな……

「中本さん、もうここまで来たならとことん流されましょう。俺と付き合いましょう」

「……そうだな……俺、男と付き合った事無いからよく分かんないけど」

そう答えると、ガバッと平久は俺にのしかかって抱きついた。

「っしゃ!言質取った!言いましたね?撤回は不可ですよ?いいですね?今日から俺と中本さんはお付き合いですよ?恋人同士ですからね!!」

ぎゅーぎゅー締め付けてくる力が苦しい。絞め殺されそうな位。

「平久、平久。苦しい。潰れる」

パンパンとタップする。

「すみません、ある程度見込みはあったとは言え、嬉しくて」

するっと腕を緩めてくれた。見込みって……そんなに俺はチョロいのか……?

「ねぇ、中本さん。今はそんなに俺の事好きとか考えなくても良いです。付き合えるだけで、中本さんがどこぞの馬の骨に捕まらないって安心があるので。少しずつ、俺の事好きになってください。俺はいくらでも待ちますし、好きになって貰えるよう頑張りますんで!で、最終的に俺の事が好きで好きで堪らないし傍に居ないと泣いちゃう位になってくれれば良いです!」

最後のそれは頂けないが、まだ平久と俺の温度差は大きいと思う。それでも良い、少しずつと言ってくれるのは安心する。

「まぁ……おいおい……って事で」

スリっと平久に体を擦り寄せて、少し長めに奴の頬にキスをする。チュッとリップ音を出して離れれば、再度頬をスリスリ……あ、髭でゾリゾリすんなコレ。……もとい、髭をゾリっと合わせて

「男は初めてなんで、よろしく頼むな。先輩」

と平久に言った。

「任せてください!」

相変わらずの人好きする笑顔で応えてくれた。


そんなわけで俺、中本大地32歳は、バツイチから男の恋人が出来ました。
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