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食べたい2人の番外編
相原君はチョコを買う。
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いまなん月ですか?
\\8月ーー!!!//
本編終了後の1月末頃の話です。
前作「古川さんの誕生日」から時間が遡ってます。
バレンタインネタ。
バレンタインまであと半年ですねっ♡♡
裕也、大学2年。
裕也視点
『ミニマム男子の睦事』より神田ミキ(ステージネーム:カンナ)が出てきてます。
ミキとしのぶは同棲前です。
✂ーーーーーーーーーーーーー✂
正月気分はとっくに終わっている。
大学も始まってお店だったり周りの雰囲気がピンクと赤に染まった。
そうか、バレンタインシーズンか。
そろそろバイト先のイロトリでも期間と数量限定のテリーヌショコラがメニューとして出されるのかと思うとワクワクしてきた。
見た目だけで言えばイケメン部類に入る俺は、イロトリ以外の場所では鬱々とする事が多い季節だ。
デブだった頃は女子に見向きもされなかったので、何とも思わなかったけど痩せ始めてからは知らない女子たちからのアプローチが一層酷くなる。
本当に嫌な季節だった。
しかししかし、今年は違う。
「相原せんぱーい♡♡今年のバレンタインなんですけどぉー……」
そんな甘ったるい声だって華麗に躱せる俺を見ろ。
「うん、……(誰だっけ?)……次の講義も頑張ってね」
少しだけニコっと笑えば相手は一瞬動きが止まる。
そこを狙ってその場から去ればオッケーだ。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
そんなコミュニケーション能力が少し上がった俺に、去年知り合った年上の男の人から、メッセージアプリを介して連絡が来た。
『裕也君、一緒にチョコレート買いに行こ!』
カンナさんからだ。
カンナさんは、去年のイロトリのハロウィンイベントで一緒に働いた臨時スタッフだった。
彼は秋葉原にあるコンセプトカフェ『CANDY MILK』の元スタッフで、凄く仕事の出来る方だった。たった2日間だったけど、かなり勉強になった。
そこから知り合って関係が続いている。
年上の男の人を友だちって言って良いのかは分からないけど、カンナさんは俺の事を友だちと言ってくれてるので、俺も同じように認識している。
『チョコレート?バレンタインチョコですか?』
『そうだよ。健人の分でもいいし、自分用に買ってもいいでしょ?ここ(URL)のチョコイベント大きいんだよ。裕也君と一緒に行ったら絶対楽しいと思うんだ!』
ここ、と貼られたURL先に飛ぶと、某デパートのバレンタイン特設サイトが表示された。
海外のチョコメーカーや日本のメーカーの名前が沢山羅列されている。
時間によってはパティシエの実演もあるらしい。
へぇ?この時期しか味わえないチョコレート……へぇ?へぇ?
バレンタインとは無縁もしくは嫌悪対象だった俺は、改めて日本のバレンタインの扱いを知った。
『楽しそうですね。しのぶさんとは行かないのですか?』
カンナさんも男性の恋人持ちだ。俺を誘うより恋人と一緒に行くものでは無いか?と思ったら、
『しのぶさんに贈るチョコは当日まで内緒なの。だから僕の買い物に付き合って欲しいんだ』
との事。
なるほど、何をあげるのかは内緒なのか。
少し考えてから、カンナさんに返事をした。
『分かりました。俺もカンナさんと一緒に行きたいです』
『やったー!じゃぁ後でまたスケジュール合わせようね!』
無料スタンプの「サンキュー」が送られて会話は終了。
カンナさんて見た目は可愛いんだけど、こう言う所が無頓着なんだよね。俺も人の事言えないけど。だからこそ、親近感がわく。
俺は、カンナさんに会える日を楽しみに待った。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
約束の日。
都内の某大手デパート近くで待ち合わせる。
きっちり5分前に到着すると既にカンナさんが居た。
「おはようございます。すみません、待ちましたか?」
「おはよー!ちょっと前に来たばかりだから、全然待ってないよ」
ニコっと笑うカンナさんは、相変わらず見た目が幼い。タットさんと同じ年齢なのに、並ぶと俺の方が年上っぽく見える。
俺がマジマジと見ていると、ニコッからニヤニヤとカンナさんの表情が変わった。
「んふふ……裕也君、僕が可愛いからって浮気はダメだよ。僕にはしのぶさんて言うすっごく可愛い恋人が居るからね……」
「あ、はい。俺にもタットさんて言う優しくて可愛くてカッコイイ恋人が居るのでタットさん以外は考えられません。大丈夫です」
「知ってた!」
「俺も知ってました。ちょっとカンナさんの事を見すぎてましたよね。ジロジロ見てすみませんでした」
「あ、見られるのは慣れてるから大丈夫だよー。僕って可愛いからね!」
少し胸を張って偉そうに言うカンナさんは、とても可愛かったので俺も頷いておいた。
待ち合わせた時間はデパート開店の30分前。
そんなに早く?と思ったが、2人で入り口に向かうと既に列が作られていた。
「バレンタイン特設会場最後尾はこちらでーす!」
デパートの制服を来た人がプラカードを持って誘導している。
「もう並んでるね。早く行こっ!」
キュッと手を握られ早足で列に向かった。
「……女の人だけのイベントでは無いんですねー」
列には女の人が多かったけど、男性1人で並んでいたり、俺らみたいに何人かで並んでいる人も居た。
「そうだよ。バレンタインにかこつけてるけど、要はチョコレートのお祭りだからね。チョコ好きに性別は関係ないと思うんだ」
確かに。
カンナさんにサイトを教えて貰ってから、色々と出店してるブランドを調べていたら、タットさんにあげるチョコと言うより、俺が欲しいチョコはどれかと思考がシフトしていた。
うん、女の人だけのイベントではない。
今日買う予定のチョコを思いながら、思わず顔が緩んでしまった。
「裕也君がニヤニヤしてるー。何考えてるの?健人の事?」
「あ、いえ。今日買うチョコをどうしようかと」
「ぶはっ、チョコの方か。うんうん、いいよいいよ。僕もね、今日は頭の中がチョコでいっぱい」
お互い、スマホでサイトを見ながらどこのブランドのチョコが気になるか等と会話を楽しんだ。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
「列を崩さずゆっくりお進みくださーい」
開店時間になると列がゆっくりと動き出した。
俺たちも前の人の後についてゆっくりと進む。
俺の買い物は、限定販売のチョコを大本命にして、あとは色々見て回れたらいいなと思っている。
デパートの特設会場まで進むと、カンナさんが凄く真剣な顔をしていた。
「裕也君、ここからは戦場だよ。とりあえずお互い本命買ったら合流しよう」
「は、はい」
「健闘を祈るよっ!」
パシン、とお尻を叩かれた。
……と、思ったらもうカンナさんは目の前から消えていた。
早っ。
俺も負けじと一番欲しいブランドのブースを目指した。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
「っと、この限定チョコを1つ……と、こっちも」
開店と同時に入店し、一番最初に目指したおかげか、欲しかったチョコレートは無事購入できた。
ついでに同じブランドでサイトには載ってなかったチョコも一緒に購入。
単価が高いので、なかなかの値段になってしまった……
1番の目的が達成出来たので、カンナさんにメッセージアプリから連絡を入れる。
『僕はもう少し時間かかるー!ごめんねー!』
と、言うメッセージも来たので、俺は特設会場の端からゆっくりとブースを回った。
しばらくすると、またカンナさんからメッセージが来て、本命が終わったとの事で、合流をした。
「ふふっ!欲しいチョコが買えるって嬉しいよねー」
「はい。俺も買えて良かったです」
「あ、そのブランドね。限定チョコかな?僕も去年そこの買ったけど凄く美味しかったよー」
「そうなんですね。食べるのがもっと楽しみになりました」
「健人にあげるの?」
「あ、まぁ……そうです。でも一緒に食べるつもりなので……」
「うんうん!2人で食べるともっと美味しくなるよ!」
カンナさんの手には複数の紙袋がぶら下がっていた。
……この短時間でそんなに買ったのか。
このイベントに出店してるチョコは決して安くない。
いくら使ったんだろう?
俺は予算は決めていなかったけど、買ってもあと2、3個かな?と考えた。
「裕也君は、あとどこか買うお店は決まってる?」
「いえ、会場見ながら気になるのを、いくつか買たらいいなって思ってます」
「そっかぁー。じゃぁ僕も裕也君の後について行って気になるのあったら買おうっと」
まだ買うのか。
少し驚きつつも、俺たちは一緒に会場を回った。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
結局、俺は自分用に某ゲームとコラボした見た目重視のチョコと、少し値が張るトリュフチョコを買った。
カンナさんは……うん、紙袋が2倍になっていた。
買い物が終わるとイートインスペースに立ち寄って、カンナさんの奢りで限定チョコパフェを一緒に食べた。
「美味しい……凄い……チョコ、キンキンに冷えてるのに口溶けが滑らかですね。アイスも濃厚で美味しいです」
「うんうん、僕も初めて食べたけど美味しいねー。毎年ここは買い物終えて来ると、混んでて限定パフェも終わって食べられなかったのに、今年はこっちも食べられてラッキーだよー」
「そんな人気なんですね……」
「うん、今年はパフェにありつけたって、しのぶさんにも報告しないと」
カンナさんはスマホを取り出して、トトトトっとメッセージを作ってた。
「あ、証拠も送らないと」
そう言って、ほとんど食べ終わっているパフェの写真を撮ってメッセージと一緒に送っていた。
パフェも充分に味わって、イートインスペースを出る。
もう限定パフェは売り切れていた。
僅差だったのかも知れない。
「カンナさん、ごちそうさまでした」
「はい、どういたしまして。今日は付き合ってくれてありがとう。毎年1人で来てたから、今年はいつも以上に楽しかったよ」
カンナさんは満足そうに笑っていた。
既にお昼の時間を少し過ぎてしまっていたけど、パフェも食べてしまっているけど、
「パフェとお昼ご飯は別腹だと思うんだけど、どう思う?」
そう聞かれたので
「別ですね」
と、俺も答えた。
別腹です。
なのでデパートを出てファストフード店に移動し、一緒に昼ごはんも食べた。
カンナさんが体の割には良く食べる人だと言うことが分かった。
かなり肉厚なサムライ的なバーガーセットを選び、
「LLセットで!」
ポテトとドリンクをLサイズにアップさせていた。
どこに入るんだ?
俺は余裕で入るので同じくLLセットにしたけど。
席に着いて食事を始めると、さっきパフェを食べた人とは思えない勢いでバーガーにかじりついていた。
と言っても食べ方はとても綺麗。
小さな口を大きく開けて、食べ切れるサイズでかぶりついている。
ニコニコしながら咀嚼している様が可愛い。
俺も負けじと大きな口でバーガーにかぶりついた。
うん、ニンニクの効いた甘辛醤油ソースが相変わらず美味い。
「一緒のメニューだね。このバーガー好き?」
嚥下終わったカンナさんがポテトを摘みながら聞いてきた。
「はい。ここのお店だと1番好きなバーガーです。ボリュームあって食べ応えあるし、ソースが和風で俺の好きな味です」
「わかるぅ~。僕もガッツリ行きたい時は絶対コレ」
「同感です」
会話はそこで一旦途切れ、2人無言で黙々と食べ進めた。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
「んっっふーーー!!満足!お腹いっぱい!見て見て、裕也君。僕のお腹が凄い事になってるよ」
カンナさんは綺麗に食べ終え、ドリンクをヂューっと飲みきると、俺の手を取ってお腹に当てて来た。
ふんわりポコンとお腹が膨らんでいるのが分かる。
「うわ。ポンポコリンですね」
強く刺激しないよう気をつけながらカンナさんのお腹を撫でる。
身体が小さいからお腹の膨らみも大きくなるのだろうか?
俺も食べ終えて自分のお腹の膨らみを確認する。
あまり膨らんでいない。
カンナさんも俺の腹を触ってきたので触りやすいように、カンナさんにお腹を向ける。
「あは。裕也君全然膨らんでないや。てか、これ筋肉?硬いんだけど、もしかしてシックスパックだったりするの?」
割と強めにお腹の肉を確認されたので、腹筋に力を入れた。
「うわっ!もっと硬くなった。え?凄い。コレ凄いね?」
「鍛えてるので」
「そっか。そう言えばスマホのゲームで筋トレしてるって言ってたもんね。ジム行かずに宅トレでコレなの?」
「はい。ジムは行ってません。たまに市営のジムに行く程度ですね」
ふえぇぇ、と言う声がカンナさんから漏れた後に、次の遊びも提案された。
「そしたら今度は体を動かす系で一緒に遊ぼうか?」
「あ、いいですね。そう言うのも好きです」
次がいつになるかわからないけど、恐らく今度は4人で集まりそうだ。
何となくだけど、カンナさんは俺やタットさんには社交辞令は言わないと思っている。
……しのぶさんはどうだろ?言うのかな?
カンナさんの言う「今度」は、本当にある「今度」なんだろうなと思える。
「でも僕、裕也君とだったらスイーツビュッフェとか焼肉食べ放題とかも行きたいなー」
「うわ。めっちゃ行きたいです」
「ねー!!またさ、一緒に遊んでよ」
「ぜひ!」
2人でニッコリ笑ってゴミを片付けファストフード店を出た。
今日のカンナさんとの予定はこれで終わり。
思った以上に楽しかったし、また一緒に遊びたいと思った。
「じゃあね。裕也君も素敵なバレンタインを過ごしてね」
「はい。カンナさんも、しのぶさんと素敵なバレンタインを」
挨拶を交わして別れた。
ずっと無縁だと思っていたバレンタインが、こんなにも楽しみに思える日が来るとは思わなかった。
誘ってくれたカンナさんに改めて感謝した。
ガサガサと揺れるチョコレートが入った紙袋が愛おしい。
それをバレンタインに贈る相手が居るのも嬉しい。
と、言いたいところだけど実はバレンタイン前にタットさんの誕生日もある。
付き合って初めての誕生日だ。
キチンとしたお祝いはイシヤマさんのバーでするとしても、当日もちょっと特別なことをしたい。
プレゼントはもう決まってる。
ケーキはどうしようかな?
いつも母さんが買ってくる店で買うのはどうかな?
そんな事を考えながら、足取り軽く自分の家を目指した。
✂ーーーーーーーーーーーー✂
かなり早めですが
ハッピーバレンタイン!!!
バレンタイン時期になりましたら再読もお願いします!!!(図々しく)
\\8月ーー!!!//
本編終了後の1月末頃の話です。
前作「古川さんの誕生日」から時間が遡ってます。
バレンタインネタ。
バレンタインまであと半年ですねっ♡♡
裕也、大学2年。
裕也視点
『ミニマム男子の睦事』より神田ミキ(ステージネーム:カンナ)が出てきてます。
ミキとしのぶは同棲前です。
✂ーーーーーーーーーーーーー✂
正月気分はとっくに終わっている。
大学も始まってお店だったり周りの雰囲気がピンクと赤に染まった。
そうか、バレンタインシーズンか。
そろそろバイト先のイロトリでも期間と数量限定のテリーヌショコラがメニューとして出されるのかと思うとワクワクしてきた。
見た目だけで言えばイケメン部類に入る俺は、イロトリ以外の場所では鬱々とする事が多い季節だ。
デブだった頃は女子に見向きもされなかったので、何とも思わなかったけど痩せ始めてからは知らない女子たちからのアプローチが一層酷くなる。
本当に嫌な季節だった。
しかししかし、今年は違う。
「相原せんぱーい♡♡今年のバレンタインなんですけどぉー……」
そんな甘ったるい声だって華麗に躱せる俺を見ろ。
「うん、……(誰だっけ?)……次の講義も頑張ってね」
少しだけニコっと笑えば相手は一瞬動きが止まる。
そこを狙ってその場から去ればオッケーだ。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
そんなコミュニケーション能力が少し上がった俺に、去年知り合った年上の男の人から、メッセージアプリを介して連絡が来た。
『裕也君、一緒にチョコレート買いに行こ!』
カンナさんからだ。
カンナさんは、去年のイロトリのハロウィンイベントで一緒に働いた臨時スタッフだった。
彼は秋葉原にあるコンセプトカフェ『CANDY MILK』の元スタッフで、凄く仕事の出来る方だった。たった2日間だったけど、かなり勉強になった。
そこから知り合って関係が続いている。
年上の男の人を友だちって言って良いのかは分からないけど、カンナさんは俺の事を友だちと言ってくれてるので、俺も同じように認識している。
『チョコレート?バレンタインチョコですか?』
『そうだよ。健人の分でもいいし、自分用に買ってもいいでしょ?ここ(URL)のチョコイベント大きいんだよ。裕也君と一緒に行ったら絶対楽しいと思うんだ!』
ここ、と貼られたURL先に飛ぶと、某デパートのバレンタイン特設サイトが表示された。
海外のチョコメーカーや日本のメーカーの名前が沢山羅列されている。
時間によってはパティシエの実演もあるらしい。
へぇ?この時期しか味わえないチョコレート……へぇ?へぇ?
バレンタインとは無縁もしくは嫌悪対象だった俺は、改めて日本のバレンタインの扱いを知った。
『楽しそうですね。しのぶさんとは行かないのですか?』
カンナさんも男性の恋人持ちだ。俺を誘うより恋人と一緒に行くものでは無いか?と思ったら、
『しのぶさんに贈るチョコは当日まで内緒なの。だから僕の買い物に付き合って欲しいんだ』
との事。
なるほど、何をあげるのかは内緒なのか。
少し考えてから、カンナさんに返事をした。
『分かりました。俺もカンナさんと一緒に行きたいです』
『やったー!じゃぁ後でまたスケジュール合わせようね!』
無料スタンプの「サンキュー」が送られて会話は終了。
カンナさんて見た目は可愛いんだけど、こう言う所が無頓着なんだよね。俺も人の事言えないけど。だからこそ、親近感がわく。
俺は、カンナさんに会える日を楽しみに待った。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
約束の日。
都内の某大手デパート近くで待ち合わせる。
きっちり5分前に到着すると既にカンナさんが居た。
「おはようございます。すみません、待ちましたか?」
「おはよー!ちょっと前に来たばかりだから、全然待ってないよ」
ニコっと笑うカンナさんは、相変わらず見た目が幼い。タットさんと同じ年齢なのに、並ぶと俺の方が年上っぽく見える。
俺がマジマジと見ていると、ニコッからニヤニヤとカンナさんの表情が変わった。
「んふふ……裕也君、僕が可愛いからって浮気はダメだよ。僕にはしのぶさんて言うすっごく可愛い恋人が居るからね……」
「あ、はい。俺にもタットさんて言う優しくて可愛くてカッコイイ恋人が居るのでタットさん以外は考えられません。大丈夫です」
「知ってた!」
「俺も知ってました。ちょっとカンナさんの事を見すぎてましたよね。ジロジロ見てすみませんでした」
「あ、見られるのは慣れてるから大丈夫だよー。僕って可愛いからね!」
少し胸を張って偉そうに言うカンナさんは、とても可愛かったので俺も頷いておいた。
待ち合わせた時間はデパート開店の30分前。
そんなに早く?と思ったが、2人で入り口に向かうと既に列が作られていた。
「バレンタイン特設会場最後尾はこちらでーす!」
デパートの制服を来た人がプラカードを持って誘導している。
「もう並んでるね。早く行こっ!」
キュッと手を握られ早足で列に向かった。
「……女の人だけのイベントでは無いんですねー」
列には女の人が多かったけど、男性1人で並んでいたり、俺らみたいに何人かで並んでいる人も居た。
「そうだよ。バレンタインにかこつけてるけど、要はチョコレートのお祭りだからね。チョコ好きに性別は関係ないと思うんだ」
確かに。
カンナさんにサイトを教えて貰ってから、色々と出店してるブランドを調べていたら、タットさんにあげるチョコと言うより、俺が欲しいチョコはどれかと思考がシフトしていた。
うん、女の人だけのイベントではない。
今日買う予定のチョコを思いながら、思わず顔が緩んでしまった。
「裕也君がニヤニヤしてるー。何考えてるの?健人の事?」
「あ、いえ。今日買うチョコをどうしようかと」
「ぶはっ、チョコの方か。うんうん、いいよいいよ。僕もね、今日は頭の中がチョコでいっぱい」
お互い、スマホでサイトを見ながらどこのブランドのチョコが気になるか等と会話を楽しんだ。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
「列を崩さずゆっくりお進みくださーい」
開店時間になると列がゆっくりと動き出した。
俺たちも前の人の後についてゆっくりと進む。
俺の買い物は、限定販売のチョコを大本命にして、あとは色々見て回れたらいいなと思っている。
デパートの特設会場まで進むと、カンナさんが凄く真剣な顔をしていた。
「裕也君、ここからは戦場だよ。とりあえずお互い本命買ったら合流しよう」
「は、はい」
「健闘を祈るよっ!」
パシン、とお尻を叩かれた。
……と、思ったらもうカンナさんは目の前から消えていた。
早っ。
俺も負けじと一番欲しいブランドのブースを目指した。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
「っと、この限定チョコを1つ……と、こっちも」
開店と同時に入店し、一番最初に目指したおかげか、欲しかったチョコレートは無事購入できた。
ついでに同じブランドでサイトには載ってなかったチョコも一緒に購入。
単価が高いので、なかなかの値段になってしまった……
1番の目的が達成出来たので、カンナさんにメッセージアプリから連絡を入れる。
『僕はもう少し時間かかるー!ごめんねー!』
と、言うメッセージも来たので、俺は特設会場の端からゆっくりとブースを回った。
しばらくすると、またカンナさんからメッセージが来て、本命が終わったとの事で、合流をした。
「ふふっ!欲しいチョコが買えるって嬉しいよねー」
「はい。俺も買えて良かったです」
「あ、そのブランドね。限定チョコかな?僕も去年そこの買ったけど凄く美味しかったよー」
「そうなんですね。食べるのがもっと楽しみになりました」
「健人にあげるの?」
「あ、まぁ……そうです。でも一緒に食べるつもりなので……」
「うんうん!2人で食べるともっと美味しくなるよ!」
カンナさんの手には複数の紙袋がぶら下がっていた。
……この短時間でそんなに買ったのか。
このイベントに出店してるチョコは決して安くない。
いくら使ったんだろう?
俺は予算は決めていなかったけど、買ってもあと2、3個かな?と考えた。
「裕也君は、あとどこか買うお店は決まってる?」
「いえ、会場見ながら気になるのを、いくつか買たらいいなって思ってます」
「そっかぁー。じゃぁ僕も裕也君の後について行って気になるのあったら買おうっと」
まだ買うのか。
少し驚きつつも、俺たちは一緒に会場を回った。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
結局、俺は自分用に某ゲームとコラボした見た目重視のチョコと、少し値が張るトリュフチョコを買った。
カンナさんは……うん、紙袋が2倍になっていた。
買い物が終わるとイートインスペースに立ち寄って、カンナさんの奢りで限定チョコパフェを一緒に食べた。
「美味しい……凄い……チョコ、キンキンに冷えてるのに口溶けが滑らかですね。アイスも濃厚で美味しいです」
「うんうん、僕も初めて食べたけど美味しいねー。毎年ここは買い物終えて来ると、混んでて限定パフェも終わって食べられなかったのに、今年はこっちも食べられてラッキーだよー」
「そんな人気なんですね……」
「うん、今年はパフェにありつけたって、しのぶさんにも報告しないと」
カンナさんはスマホを取り出して、トトトトっとメッセージを作ってた。
「あ、証拠も送らないと」
そう言って、ほとんど食べ終わっているパフェの写真を撮ってメッセージと一緒に送っていた。
パフェも充分に味わって、イートインスペースを出る。
もう限定パフェは売り切れていた。
僅差だったのかも知れない。
「カンナさん、ごちそうさまでした」
「はい、どういたしまして。今日は付き合ってくれてありがとう。毎年1人で来てたから、今年はいつも以上に楽しかったよ」
カンナさんは満足そうに笑っていた。
既にお昼の時間を少し過ぎてしまっていたけど、パフェも食べてしまっているけど、
「パフェとお昼ご飯は別腹だと思うんだけど、どう思う?」
そう聞かれたので
「別ですね」
と、俺も答えた。
別腹です。
なのでデパートを出てファストフード店に移動し、一緒に昼ごはんも食べた。
カンナさんが体の割には良く食べる人だと言うことが分かった。
かなり肉厚なサムライ的なバーガーセットを選び、
「LLセットで!」
ポテトとドリンクをLサイズにアップさせていた。
どこに入るんだ?
俺は余裕で入るので同じくLLセットにしたけど。
席に着いて食事を始めると、さっきパフェを食べた人とは思えない勢いでバーガーにかじりついていた。
と言っても食べ方はとても綺麗。
小さな口を大きく開けて、食べ切れるサイズでかぶりついている。
ニコニコしながら咀嚼している様が可愛い。
俺も負けじと大きな口でバーガーにかぶりついた。
うん、ニンニクの効いた甘辛醤油ソースが相変わらず美味い。
「一緒のメニューだね。このバーガー好き?」
嚥下終わったカンナさんがポテトを摘みながら聞いてきた。
「はい。ここのお店だと1番好きなバーガーです。ボリュームあって食べ応えあるし、ソースが和風で俺の好きな味です」
「わかるぅ~。僕もガッツリ行きたい時は絶対コレ」
「同感です」
会話はそこで一旦途切れ、2人無言で黙々と食べ進めた。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
「んっっふーーー!!満足!お腹いっぱい!見て見て、裕也君。僕のお腹が凄い事になってるよ」
カンナさんは綺麗に食べ終え、ドリンクをヂューっと飲みきると、俺の手を取ってお腹に当てて来た。
ふんわりポコンとお腹が膨らんでいるのが分かる。
「うわ。ポンポコリンですね」
強く刺激しないよう気をつけながらカンナさんのお腹を撫でる。
身体が小さいからお腹の膨らみも大きくなるのだろうか?
俺も食べ終えて自分のお腹の膨らみを確認する。
あまり膨らんでいない。
カンナさんも俺の腹を触ってきたので触りやすいように、カンナさんにお腹を向ける。
「あは。裕也君全然膨らんでないや。てか、これ筋肉?硬いんだけど、もしかしてシックスパックだったりするの?」
割と強めにお腹の肉を確認されたので、腹筋に力を入れた。
「うわっ!もっと硬くなった。え?凄い。コレ凄いね?」
「鍛えてるので」
「そっか。そう言えばスマホのゲームで筋トレしてるって言ってたもんね。ジム行かずに宅トレでコレなの?」
「はい。ジムは行ってません。たまに市営のジムに行く程度ですね」
ふえぇぇ、と言う声がカンナさんから漏れた後に、次の遊びも提案された。
「そしたら今度は体を動かす系で一緒に遊ぼうか?」
「あ、いいですね。そう言うのも好きです」
次がいつになるかわからないけど、恐らく今度は4人で集まりそうだ。
何となくだけど、カンナさんは俺やタットさんには社交辞令は言わないと思っている。
……しのぶさんはどうだろ?言うのかな?
カンナさんの言う「今度」は、本当にある「今度」なんだろうなと思える。
「でも僕、裕也君とだったらスイーツビュッフェとか焼肉食べ放題とかも行きたいなー」
「うわ。めっちゃ行きたいです」
「ねー!!またさ、一緒に遊んでよ」
「ぜひ!」
2人でニッコリ笑ってゴミを片付けファストフード店を出た。
今日のカンナさんとの予定はこれで終わり。
思った以上に楽しかったし、また一緒に遊びたいと思った。
「じゃあね。裕也君も素敵なバレンタインを過ごしてね」
「はい。カンナさんも、しのぶさんと素敵なバレンタインを」
挨拶を交わして別れた。
ずっと無縁だと思っていたバレンタインが、こんなにも楽しみに思える日が来るとは思わなかった。
誘ってくれたカンナさんに改めて感謝した。
ガサガサと揺れるチョコレートが入った紙袋が愛おしい。
それをバレンタインに贈る相手が居るのも嬉しい。
と、言いたいところだけど実はバレンタイン前にタットさんの誕生日もある。
付き合って初めての誕生日だ。
キチンとしたお祝いはイシヤマさんのバーでするとしても、当日もちょっと特別なことをしたい。
プレゼントはもう決まってる。
ケーキはどうしようかな?
いつも母さんが買ってくる店で買うのはどうかな?
そんな事を考えながら、足取り軽く自分の家を目指した。
✂ーーーーーーーーーーーー✂
かなり早めですが
ハッピーバレンタイン!!!
バレンタイン時期になりましたら再読もお願いします!!!(図々しく)
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