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ミニマム男子の番外編
ミニマム男子と食べたい2人。
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「ミニマム男子の睦事」「食べたい2人の気散事」の、クロスオーバー回です。
同棲後の話。
しのぶ(29)、ミキ(26)
裕也(21)大学3年、健人(25)
✂ーーーーーーーーーーーーーー✂
とある休日、午後。
俺こと新井しのぶ29歳が、軽やかに車を走らせる。
助手席には、出来た後輩兼恋人の神田ミキ26歳を乗せている。
「楽しみですねー!」
ミキが待ちきれないとばかりに浮かれている。
俺もかなり張り切りモードではある。
話は変わり、ついでに時も少し遡った去年、年下のゲイカップルと知り合った。
『ブックカフェ イロトリ』と言うカフェのイベントの手伝いに、ミキと2人で行ったら同じくイベントの運営側として、そのカップルも居た。
1人はカフェアルバイターの相原裕也君。
もう1人は、その同伴として参加していた、裕也君の恋人である古川健人君だった。
2日間のイベントを共に過ごし、最終的には4人で連絡先を交換し、いつか一緒に遊ぼうと言葉を交わした。
社交辞令な所も無きにしも非ず。
の、つもりだったがミキは裕也君を気に入ったのか、2人きりで何度か出掛けていた。
もちろん、変な意味では無い事くらい分かっている。
それに必ずミキから事前報告されるし、裕也君からもミキと出掛ける旨の連絡が来る。
だいたいこの2人が出かける時は、俺宛の何かとか、健人君宛の何かを買いたい時に出掛けてるみたいで、健人君と俺は毎回蚊帳の外だ。
対抗する様に、健人君と2人で出掛けてみようかと考えなかったわけでも無いが…………正直な所、そこまで健人君と2人で出掛けたい何かがあるかと言われたら何も無かった。
恐らく向こうも同じだろう。連絡用アプリの4人のグループトーク以外で個人的に話をする事は一切無かった。
そんな微妙な関係の俺たちだが、今日は4人で会う約束をした。
行先は会員制倉庫型スーパー。
一人暮らしには持て余すくらいの大容量で食材等が売ってるので、ミキと同棲する前は興味無かったのだが、同棲を始めて少ししてから、ミキが会員になりたいと言い出して、2人で会員になった。
結果、隔週くらいで通ってる。
なんだかんだ、俺ら2人とも体の割には食べる方だし、ミキは料理が好きだ。
大容量の食材でも何も問題は無かった。
取り扱い商品は食材だけでなく、家具やら服やら家電製品等など、色々と揃っているので俺も眺めてるだけでも楽しい。
なので、楽しく会員制度を利用させて貰ってる。
なんて話をミキが健人君に話したのか、
「しのぶさんっ!裕也君カップルとダブルデートしましょ!!会員制倉庫型スーパー4人で行きましょ!!」
と、元気いっぱいに誘ってきた。
裕也君は行ったことが無いが、とても興味津々だったそうな。
そんな経緯からの今日。
いつもの目的地だが、ナビを使っていつもとは違う経路で道を進んだ。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
事前に健人君から聞いていた住所は、いつものルートから外れるが、経由地でもあったので道すがら2人を拾う事にした。
目的地は健人君の家。
平屋の戸建て。
道路端に車を寄せれば、既に2人は外で待っていた。
そのまま後部座席に乗ってもらい、車を再度走らせる。
「おはよう。昨日は良く寝れた?裕也君が凄く楽しみにしていたって、ミキから聞いてたよ」
運転に集中しつつ、話しかけると、裕也君は声音で分かるくらいの浮かれっぷりを見せてくれた。
「はい!グッスリ寝て体調万全です!今日はお誘いありがとうございました。凄く凄く行きたかった場所なので、嬉しいです!」
「ふふっ、なら良かったよ。誘った甲斐が有るね、ミキ」
「はい!僕も4人でお出掛け楽しみにしてました!健人、お店着いたらキチンと裕也君の後をついて行くんだよ?迷子にならないようにね!」
「え?俺?」
健人君は、ミキの突然のフリに驚いたみたいで少し狼狽えていた。
……てか呼び捨てか……同じ学年だって行ってたもんな……
俺と2人でいる時は可愛い可愛い年下の恋人ぶってるし、職場もどちらかと言うと可愛がられるタイプのミキなので、こういう偉そうにしてる態度も新鮮だなと、また別の魅力を発見してしまった。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
目的地に到着し、駐車場に車を停めて4人で入口に向かった。
「……RPGのパーティみたい……」
と言う裕也君の呟きにミキが反応し、
「そしたら裕也君は勇者ね!建人は魔法使いで、しのぶさんは遊び人!で、僕が踊り子!!」
それぞれ勝手に職業を決めつけ、「ふふふふんふんふん~」と歌いながらステップを踏んでた。
……無駄に上手いんだよなぁ。
「パワーバランス悪過ぎです。せめてもう1人パワー系ください」
意義を唱えたのは、裕也君。
あ、気になるのはそこか。
健人君をしたり顔で、うんうんと頷いている。
え?気になるところソコでいいの?
「ミキが戦士になればいいんじゃない?4人パーティーで遊び人と踊り子は無いでしょ」
建人君がパーティバランスに意見をする。
あ、建人君もミキの事呼び捨てなのか。
「えぇー!?僕らに戦えと言うの!?こんなに小さくて華奢で可愛いのに!?」
ミキは手をグーにし口元に当て、渾身の可哀想可愛い表情を作っている。
可愛い、あざと可愛いぞ!ミキ!
「あ、今しのぶさん僕の事可愛いって思ってる」
そしてバレる。
そんな他愛の無い会話を繰り広げながら、入口に到着した。
俺とミキがスタッフに会員証を提示し、4人で中に入る。
隔週で通っている俺らは見慣れた光景だが、初めての2人は口をポカンと開けて見上げていた。
「広……」
「天井たっか……」
うんうん、その気持ち分かる。
2人の反応が初々しい。
買い物は、ミキ1人。裕也君、建人君、俺の3人で分かれる事になった。
俺らの方は、買うものはだいたい決まっているのでミキに任せ、場所慣れしてない彼らの案内として俺が2人の買い物に付き合う事にした。
ミキは、早々に目的の売り場に向かった。
「迷いが無いね……」
と建人君がミキに向かって小さく手を振ってる。……彼も見た目に反して仕草が可愛らしいんだよなぁ。
「買うものはだいたい決まってるからね。さ、そしたら2人は最初どこ見たいのかな?オニーサンが案内してあげよう」
俺は2人に向かってニッコリと笑った。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
はい、裕也君が可愛い。
ダメだコレ可愛い。
え?可愛い。
終始首を忙しなく動かしながら事ある事に建人君の腕を引っ張って「タットさん!タットさん!」と話し掛けている。
あぁ、こんなに人懐っこい子だったのか。
建人君も鼻の下伸ばしながら、デレデレニコニコ の表情で裕也君を見てる。
なんだ?このカップル。
遠目で見ればイケメン2人組なのに彼らの成りを知れば知るほど可愛いと言う単語が良く似合う。
思わず2人のやり取りを見ながらニヤニヤしてしまう。
「ドーン」
と、後ろからミキが登場した。
売り場が被った。
「しのぶさん、見たことの無いニヤニヤ顔してます。それも可愛いですけど」
「だって、あの2人さぁ……」
「分かります、いい雰囲気ですよね。裕也君単体でも可愛いですが、2人揃うともっと可愛いです」
「だな」
ミキと軽口を叩きつつ、俺は2人のあとをついて行き、ミキは流れるように目的の商品を手にしてまた別の売り場に向かって行った。
「あれ?さっきカンナさん居ましたよね?」
裕也君がキョロキョロと当たりを見回している。
裕也君はミキがコンカフェで働いていた時に使っていた源氏名で今も呼んでいる。
「うん、一瞬来たね。欲しいもの手にしたら直ぐにどっか行ったよ」
俺が答えると納得し、ボソッと、
「カンナさんと一緒に回りたいですよね?俺たちに着いてきてくれてありがとうございます。タットさんとだけだったら完全に迷子になってました」
なんて、これまた可愛い事を言われてしまった。
「んんっ!別に気にしなくていいよ。いつも来てる場所だし、ね?」
ちょっとあざといかな?と思いながらも俺の渾身の可愛い表情で小首を傾けながら裕也君の目を見て答える。
「そっか、なら良かったです」
はにかんだ表情で答えてくれたけど、恐らく返答に反応してくれただけで、俺の容姿は関係なさそうな反応だった。
そうか、裕也君には可愛いは通じないか……と、思ってたら健人君は小動物を見つめるような目で俺を見ていたので、少し安心した。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
3人で会話をしながら、ゆっくり店内を回って買い物は終了した。
裕也君も買いたいモノが全部揃ったみたいで満足気の表情だ。
「2人とも買ったねー」
調味料にお肉にお魚、加工食品にお菓子にパン。ほとんどが食材。
トータルで2万弱?
どれも倉庫型スーパー定番の商品だった。
裕也君が支払いをしていたので、大学生にしては大きな出費だったんじゃないかなと思ったけど、
「親から軍資金を貰ってますし、あとでタットさんとも分けっこもします」
と、答えていた。
駐車場に戻って荷物を車に乗せる。
冷蔵、冷凍のものは一旦保冷バックに突っ込んだ。
裕也君カップルも用意周到で保冷バックに保冷剤も入っていた。
「さすが」
俺が褒めると、裕也君は嬉しそうに笑っていた。
「あー!裕也君マエダノソース買ってるね。いいよいいよー、それ便利だよー」
ミキが裕也君たちが購入した商品をチラチラ見ては話しかける。
「コレ気になっていたんです。汎用性高そうだなって」
「うんうん、おすすめ。僕も良く使ってる」
裕也君も料理が好きなのか、ミキと料理談義に花を咲かせていた。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
帰りも行きと同じく、いつもとルートを変えて健人君の自宅を目指す。
俺は運転手なので、あまり会話には参加出来ていないが3人で、かなり話は盛り上がっていた。
……これはまた近々4人で遊びそうだな。
なんて考えながら機嫌良く運転していると、
「あ、しのぶさんご機嫌ですね」
ミキには俺の機嫌もバレるらしい。
「んー?楽しいなぁって。大人になると人付き合いってなかなか広がらないからね。こうやって裕也君と健人君と友だちになれて良かったなぁって」
「俺も!嬉しいです。カンナさんとしのぶさんと知り合えて嬉しいです!」
バックミラー越しに裕也君を見ると、とても良い表情をしていた。
「だってー!!んふふふ!僕も裕也君と健人と友だちになれて嬉しいよ。裕也君はまた2人で出掛けようねー。健人は……また、4人で遊ぼ?」
「いや、今度ゆん君がミキに会うなら俺も着いていく」
「うわぁぁーやーだー。恋人のヤキモチみっともなぁぁい!」
「タットさん、カンナさんと俺の間には、何もやましい事は無いです」
「うん、知ってる。知ってるよ?でもついて行きたいの」
「あー、ならその時は俺もミキについて行くから……結局4人だね」
ミキの健人君弄りが酷い。
同学年と言う気安さもあるのだろう。
健人君も遠慮してる様子は無いから、コレはこれで良い関係かも知れない。
「ふふっ……しのぶさんにヤキモチ妬かれちゃった」
俺がついて行く云々をヤキモチと捉えたらしいミキがクフクフと笑っている。……可愛い。
「あ、しのぶさん今僕の事可愛いって思ってる」
そしてバレる。
「俺も分かりました。しのぶさんがカンナさんを可愛いって思うタイミング。そう言う事ですね」
「っっあー!!裕也君言っちゃダメ!!」
ミキが一生懸命「シー!」とジェスチャーしている。
……可愛い。
「なるほど?」
「健人黙って!!」
……どうやら俺以外3人とも俺がミキを可愛いと思うタイミングを理解したらしい……
そんなに分かりやすい表情でもしてるのだろうか?
「ミキ、帰ったら話し合いな?」
「ふぇぇぇん……」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
「で?別に怒ってるとかじゃないからな?ただ、いつもバレるのが不思議だったんだよ」
2人を健人君の家に送り届け、俺たちも帰路に着いた。買った食材も黙々と2人で小分けにし保存する。
一通り作業が終わって、今回購入した大容量のウエハースお菓子を皿に山盛りにし、リビングで休憩タイム。
で、今までの謎を解き明かすべくミキに詰めた。
「あぅううー。指摘してしのぶさんがビックリする表情をするまでが僕だけの特権だったのにぃー」
ブツブツとミキが文句を言ってるが、それもかわ……
「ほら、僕のこと可愛いって思った」
「そうだな」
バレる。
だからそんな分かりやすいのか?
しかめっ面をしながらミキが唸っている。
しばらくして、観念したように口を開いた。
「しのぶさんが僕の事を可愛いって思ってる時って、必ず口が一文字になるんです。こう、キュッて」
ミキが俺が可愛いと思ってる時にすると言う表情を真似するように、口に力を入れて唇を横真っ直ぐにした。
うん、その顔もかわ………
「っあぁ!!」
分かった。
自分の唇に力が入るのが分かった。
「あぁぁん!!しのぶさんが気づいちゃったー!!健人めーー!!健人めーーー!!!余計な事するんだからぁぁぁー!!!」
ミキが悔しそうにタンタンとテーブルを叩いている。
てか最初に気付いたのは裕也君の筈なんだけどな……
「ぶはっ」
健人君への悪態が理不尽過ぎて思わず吹き出してしまう。
「ミキ、可愛いよ。とても可愛い。なんで毎回バレるんだろ?って不思議だったけど、別に嫌な事とかじゃなかったし、これからも指摘していいんだからな?」
慰めるようにミキの頭を撫でると、嬉しそうに目を細め、抱き着いてきた。そのまま抱き締めて、後ろに倒れ込んだ。
ミキが俺を見下ろしている。
あー、かわ……おっと、口に力が入った。
意識して唇の力を抜こうとすると、ミキにフニっと唇を摘まれた。
「ほら、意識しちゃうとこうなるの分かってたから余り言いたくなかったんですよぅ」
「確かに気づくと意識するな」
ふにふにふにと揉まれる唇が気持ちいい。
「なぁ……キス……」
身体に乗り上げられ、セクシャルな部位を弄られれば強請りたくなるもんだ。
迷い無く、プチュンと唇が触れる。
相変わらず天使の羽か?ってくらい柔らかい。
唇同士、表面をなぞり、なぞられ、押し付ける。それすらも軽い。
薄く口を開けば当然のように口腔内に下が入り込む。
甘い。
さっきまでお菓子を食べてたせいか口の中全体が甘い。
俺が食べていたストロベリーのウエハースの酸味と、ミキが食べてたミルク味が何となく混ざってる。
チュと、音がして唇が離れた。
「なんか……しのぶさんが美味しいんですけど……」
「さっき食べてたウエハースだろ?ミキの中も甘かった」
フフっと2人で笑い合う。
……これで機嫌も直らないかなと思わなくも無いのだが……
「あ、しのぶさん誤魔化そうとしてる」
そしてバレる。
え?コレもバレるのか?
「今のは表情のクセじゃないですよ!普通に分かることですからねっ!」
「そんなもんか……てか、ミキってほぼほぼ俺の考えてる事分かるよな?」
「ふぇ?当然じゃないですか。しのぶさんの表情は一瞬たりとも見逃したくないですもん!ずっと見てたら分かりますよ?」
「なら、……別に良くないか?俺の顔のクセが1つバレたくらい。他にもミキは色々俺の知らない俺の事を知ってるんだろ?」
そう聞くと、ミキはへにゃっと笑った。
「そりゃ当然ですよぅ……他にも色々ネタは持ってますからねっ」
俺の何を想像しているのか、ちょっと怖い気もするが、聞けば薮蛇になりそうなのでスルーする。
「じゃぁ、別にあの2人にバレたっていいんじゃないか?」
「えぇー……まぁ……そこまで目くじら立てる必要は無いかな……と思いますけど……」
「うん、ミキは体は小さいけど心は広いもんな。流石俺の自慢の恋人」
「えっ!えへ……へへっ!!」
よし、このまま上手く丸め込……
「あぁー!また僕を丸め込もうとしましたね!?」
そしてバレる。
プンっと頬を膨らましたミキが可愛い。
「僕の事可愛いって思ってる!」
こちらもバレる。
んもうっ!とミキは唸って俺にギュッギュッとしがみついた。
「結局僕ってしのぶさんに弱いんだよなぁー。なんか、許しちゃう気持ち」
「その気持ちでいてくれ。ミキの機嫌が良いのが1番だ」
頬を擦り合わせて機嫌を取る。
……のも、バレてそうだが。
「むぅぅ……自分の機嫌は自分で取るのがデフォルトですけど……今日はしのぶさんにいっぱいご機嫌取って欲しい気分ですっ」
「任せろ」
疚しい事は何一つ無いが、ミキのご機嫌取りなんていくらでもやってやる。
「やった!……じゃぁ、手始めにぃー?」
「手始めに?」
「ベット行きましょ?」
ミキは凶悪な程に可愛い顔して、俺を寝室に誘った。
俺が1番得意なご機嫌取りだ。
そして俺もご機嫌になれる。
俺達は仲良く手を繋いで寝室に向かった。
その後、……2人してかなり機嫌が良くなったのは言うまでもない。
同棲後の話。
しのぶ(29)、ミキ(26)
裕也(21)大学3年、健人(25)
✂ーーーーーーーーーーーーーー✂
とある休日、午後。
俺こと新井しのぶ29歳が、軽やかに車を走らせる。
助手席には、出来た後輩兼恋人の神田ミキ26歳を乗せている。
「楽しみですねー!」
ミキが待ちきれないとばかりに浮かれている。
俺もかなり張り切りモードではある。
話は変わり、ついでに時も少し遡った去年、年下のゲイカップルと知り合った。
『ブックカフェ イロトリ』と言うカフェのイベントの手伝いに、ミキと2人で行ったら同じくイベントの運営側として、そのカップルも居た。
1人はカフェアルバイターの相原裕也君。
もう1人は、その同伴として参加していた、裕也君の恋人である古川健人君だった。
2日間のイベントを共に過ごし、最終的には4人で連絡先を交換し、いつか一緒に遊ぼうと言葉を交わした。
社交辞令な所も無きにしも非ず。
の、つもりだったがミキは裕也君を気に入ったのか、2人きりで何度か出掛けていた。
もちろん、変な意味では無い事くらい分かっている。
それに必ずミキから事前報告されるし、裕也君からもミキと出掛ける旨の連絡が来る。
だいたいこの2人が出かける時は、俺宛の何かとか、健人君宛の何かを買いたい時に出掛けてるみたいで、健人君と俺は毎回蚊帳の外だ。
対抗する様に、健人君と2人で出掛けてみようかと考えなかったわけでも無いが…………正直な所、そこまで健人君と2人で出掛けたい何かがあるかと言われたら何も無かった。
恐らく向こうも同じだろう。連絡用アプリの4人のグループトーク以外で個人的に話をする事は一切無かった。
そんな微妙な関係の俺たちだが、今日は4人で会う約束をした。
行先は会員制倉庫型スーパー。
一人暮らしには持て余すくらいの大容量で食材等が売ってるので、ミキと同棲する前は興味無かったのだが、同棲を始めて少ししてから、ミキが会員になりたいと言い出して、2人で会員になった。
結果、隔週くらいで通ってる。
なんだかんだ、俺ら2人とも体の割には食べる方だし、ミキは料理が好きだ。
大容量の食材でも何も問題は無かった。
取り扱い商品は食材だけでなく、家具やら服やら家電製品等など、色々と揃っているので俺も眺めてるだけでも楽しい。
なので、楽しく会員制度を利用させて貰ってる。
なんて話をミキが健人君に話したのか、
「しのぶさんっ!裕也君カップルとダブルデートしましょ!!会員制倉庫型スーパー4人で行きましょ!!」
と、元気いっぱいに誘ってきた。
裕也君は行ったことが無いが、とても興味津々だったそうな。
そんな経緯からの今日。
いつもの目的地だが、ナビを使っていつもとは違う経路で道を進んだ。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
事前に健人君から聞いていた住所は、いつものルートから外れるが、経由地でもあったので道すがら2人を拾う事にした。
目的地は健人君の家。
平屋の戸建て。
道路端に車を寄せれば、既に2人は外で待っていた。
そのまま後部座席に乗ってもらい、車を再度走らせる。
「おはよう。昨日は良く寝れた?裕也君が凄く楽しみにしていたって、ミキから聞いてたよ」
運転に集中しつつ、話しかけると、裕也君は声音で分かるくらいの浮かれっぷりを見せてくれた。
「はい!グッスリ寝て体調万全です!今日はお誘いありがとうございました。凄く凄く行きたかった場所なので、嬉しいです!」
「ふふっ、なら良かったよ。誘った甲斐が有るね、ミキ」
「はい!僕も4人でお出掛け楽しみにしてました!健人、お店着いたらキチンと裕也君の後をついて行くんだよ?迷子にならないようにね!」
「え?俺?」
健人君は、ミキの突然のフリに驚いたみたいで少し狼狽えていた。
……てか呼び捨てか……同じ学年だって行ってたもんな……
俺と2人でいる時は可愛い可愛い年下の恋人ぶってるし、職場もどちらかと言うと可愛がられるタイプのミキなので、こういう偉そうにしてる態度も新鮮だなと、また別の魅力を発見してしまった。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
目的地に到着し、駐車場に車を停めて4人で入口に向かった。
「……RPGのパーティみたい……」
と言う裕也君の呟きにミキが反応し、
「そしたら裕也君は勇者ね!建人は魔法使いで、しのぶさんは遊び人!で、僕が踊り子!!」
それぞれ勝手に職業を決めつけ、「ふふふふんふんふん~」と歌いながらステップを踏んでた。
……無駄に上手いんだよなぁ。
「パワーバランス悪過ぎです。せめてもう1人パワー系ください」
意義を唱えたのは、裕也君。
あ、気になるのはそこか。
健人君をしたり顔で、うんうんと頷いている。
え?気になるところソコでいいの?
「ミキが戦士になればいいんじゃない?4人パーティーで遊び人と踊り子は無いでしょ」
建人君がパーティバランスに意見をする。
あ、建人君もミキの事呼び捨てなのか。
「えぇー!?僕らに戦えと言うの!?こんなに小さくて華奢で可愛いのに!?」
ミキは手をグーにし口元に当て、渾身の可哀想可愛い表情を作っている。
可愛い、あざと可愛いぞ!ミキ!
「あ、今しのぶさん僕の事可愛いって思ってる」
そしてバレる。
そんな他愛の無い会話を繰り広げながら、入口に到着した。
俺とミキがスタッフに会員証を提示し、4人で中に入る。
隔週で通っている俺らは見慣れた光景だが、初めての2人は口をポカンと開けて見上げていた。
「広……」
「天井たっか……」
うんうん、その気持ち分かる。
2人の反応が初々しい。
買い物は、ミキ1人。裕也君、建人君、俺の3人で分かれる事になった。
俺らの方は、買うものはだいたい決まっているのでミキに任せ、場所慣れしてない彼らの案内として俺が2人の買い物に付き合う事にした。
ミキは、早々に目的の売り場に向かった。
「迷いが無いね……」
と建人君がミキに向かって小さく手を振ってる。……彼も見た目に反して仕草が可愛らしいんだよなぁ。
「買うものはだいたい決まってるからね。さ、そしたら2人は最初どこ見たいのかな?オニーサンが案内してあげよう」
俺は2人に向かってニッコリと笑った。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
はい、裕也君が可愛い。
ダメだコレ可愛い。
え?可愛い。
終始首を忙しなく動かしながら事ある事に建人君の腕を引っ張って「タットさん!タットさん!」と話し掛けている。
あぁ、こんなに人懐っこい子だったのか。
建人君も鼻の下伸ばしながら、デレデレニコニコ の表情で裕也君を見てる。
なんだ?このカップル。
遠目で見ればイケメン2人組なのに彼らの成りを知れば知るほど可愛いと言う単語が良く似合う。
思わず2人のやり取りを見ながらニヤニヤしてしまう。
「ドーン」
と、後ろからミキが登場した。
売り場が被った。
「しのぶさん、見たことの無いニヤニヤ顔してます。それも可愛いですけど」
「だって、あの2人さぁ……」
「分かります、いい雰囲気ですよね。裕也君単体でも可愛いですが、2人揃うともっと可愛いです」
「だな」
ミキと軽口を叩きつつ、俺は2人のあとをついて行き、ミキは流れるように目的の商品を手にしてまた別の売り場に向かって行った。
「あれ?さっきカンナさん居ましたよね?」
裕也君がキョロキョロと当たりを見回している。
裕也君はミキがコンカフェで働いていた時に使っていた源氏名で今も呼んでいる。
「うん、一瞬来たね。欲しいもの手にしたら直ぐにどっか行ったよ」
俺が答えると納得し、ボソッと、
「カンナさんと一緒に回りたいですよね?俺たちに着いてきてくれてありがとうございます。タットさんとだけだったら完全に迷子になってました」
なんて、これまた可愛い事を言われてしまった。
「んんっ!別に気にしなくていいよ。いつも来てる場所だし、ね?」
ちょっとあざといかな?と思いながらも俺の渾身の可愛い表情で小首を傾けながら裕也君の目を見て答える。
「そっか、なら良かったです」
はにかんだ表情で答えてくれたけど、恐らく返答に反応してくれただけで、俺の容姿は関係なさそうな反応だった。
そうか、裕也君には可愛いは通じないか……と、思ってたら健人君は小動物を見つめるような目で俺を見ていたので、少し安心した。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
3人で会話をしながら、ゆっくり店内を回って買い物は終了した。
裕也君も買いたいモノが全部揃ったみたいで満足気の表情だ。
「2人とも買ったねー」
調味料にお肉にお魚、加工食品にお菓子にパン。ほとんどが食材。
トータルで2万弱?
どれも倉庫型スーパー定番の商品だった。
裕也君が支払いをしていたので、大学生にしては大きな出費だったんじゃないかなと思ったけど、
「親から軍資金を貰ってますし、あとでタットさんとも分けっこもします」
と、答えていた。
駐車場に戻って荷物を車に乗せる。
冷蔵、冷凍のものは一旦保冷バックに突っ込んだ。
裕也君カップルも用意周到で保冷バックに保冷剤も入っていた。
「さすが」
俺が褒めると、裕也君は嬉しそうに笑っていた。
「あー!裕也君マエダノソース買ってるね。いいよいいよー、それ便利だよー」
ミキが裕也君たちが購入した商品をチラチラ見ては話しかける。
「コレ気になっていたんです。汎用性高そうだなって」
「うんうん、おすすめ。僕も良く使ってる」
裕也君も料理が好きなのか、ミキと料理談義に花を咲かせていた。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
帰りも行きと同じく、いつもとルートを変えて健人君の自宅を目指す。
俺は運転手なので、あまり会話には参加出来ていないが3人で、かなり話は盛り上がっていた。
……これはまた近々4人で遊びそうだな。
なんて考えながら機嫌良く運転していると、
「あ、しのぶさんご機嫌ですね」
ミキには俺の機嫌もバレるらしい。
「んー?楽しいなぁって。大人になると人付き合いってなかなか広がらないからね。こうやって裕也君と健人君と友だちになれて良かったなぁって」
「俺も!嬉しいです。カンナさんとしのぶさんと知り合えて嬉しいです!」
バックミラー越しに裕也君を見ると、とても良い表情をしていた。
「だってー!!んふふふ!僕も裕也君と健人と友だちになれて嬉しいよ。裕也君はまた2人で出掛けようねー。健人は……また、4人で遊ぼ?」
「いや、今度ゆん君がミキに会うなら俺も着いていく」
「うわぁぁーやーだー。恋人のヤキモチみっともなぁぁい!」
「タットさん、カンナさんと俺の間には、何もやましい事は無いです」
「うん、知ってる。知ってるよ?でもついて行きたいの」
「あー、ならその時は俺もミキについて行くから……結局4人だね」
ミキの健人君弄りが酷い。
同学年と言う気安さもあるのだろう。
健人君も遠慮してる様子は無いから、コレはこれで良い関係かも知れない。
「ふふっ……しのぶさんにヤキモチ妬かれちゃった」
俺がついて行く云々をヤキモチと捉えたらしいミキがクフクフと笑っている。……可愛い。
「あ、しのぶさん今僕の事可愛いって思ってる」
そしてバレる。
「俺も分かりました。しのぶさんがカンナさんを可愛いって思うタイミング。そう言う事ですね」
「っっあー!!裕也君言っちゃダメ!!」
ミキが一生懸命「シー!」とジェスチャーしている。
……可愛い。
「なるほど?」
「健人黙って!!」
……どうやら俺以外3人とも俺がミキを可愛いと思うタイミングを理解したらしい……
そんなに分かりやすい表情でもしてるのだろうか?
「ミキ、帰ったら話し合いな?」
「ふぇぇぇん……」
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「で?別に怒ってるとかじゃないからな?ただ、いつもバレるのが不思議だったんだよ」
2人を健人君の家に送り届け、俺たちも帰路に着いた。買った食材も黙々と2人で小分けにし保存する。
一通り作業が終わって、今回購入した大容量のウエハースお菓子を皿に山盛りにし、リビングで休憩タイム。
で、今までの謎を解き明かすべくミキに詰めた。
「あぅううー。指摘してしのぶさんがビックリする表情をするまでが僕だけの特権だったのにぃー」
ブツブツとミキが文句を言ってるが、それもかわ……
「ほら、僕のこと可愛いって思った」
「そうだな」
バレる。
だからそんな分かりやすいのか?
しかめっ面をしながらミキが唸っている。
しばらくして、観念したように口を開いた。
「しのぶさんが僕の事を可愛いって思ってる時って、必ず口が一文字になるんです。こう、キュッて」
ミキが俺が可愛いと思ってる時にすると言う表情を真似するように、口に力を入れて唇を横真っ直ぐにした。
うん、その顔もかわ………
「っあぁ!!」
分かった。
自分の唇に力が入るのが分かった。
「あぁぁん!!しのぶさんが気づいちゃったー!!健人めーー!!健人めーーー!!!余計な事するんだからぁぁぁー!!!」
ミキが悔しそうにタンタンとテーブルを叩いている。
てか最初に気付いたのは裕也君の筈なんだけどな……
「ぶはっ」
健人君への悪態が理不尽過ぎて思わず吹き出してしまう。
「ミキ、可愛いよ。とても可愛い。なんで毎回バレるんだろ?って不思議だったけど、別に嫌な事とかじゃなかったし、これからも指摘していいんだからな?」
慰めるようにミキの頭を撫でると、嬉しそうに目を細め、抱き着いてきた。そのまま抱き締めて、後ろに倒れ込んだ。
ミキが俺を見下ろしている。
あー、かわ……おっと、口に力が入った。
意識して唇の力を抜こうとすると、ミキにフニっと唇を摘まれた。
「ほら、意識しちゃうとこうなるの分かってたから余り言いたくなかったんですよぅ」
「確かに気づくと意識するな」
ふにふにふにと揉まれる唇が気持ちいい。
「なぁ……キス……」
身体に乗り上げられ、セクシャルな部位を弄られれば強請りたくなるもんだ。
迷い無く、プチュンと唇が触れる。
相変わらず天使の羽か?ってくらい柔らかい。
唇同士、表面をなぞり、なぞられ、押し付ける。それすらも軽い。
薄く口を開けば当然のように口腔内に下が入り込む。
甘い。
さっきまでお菓子を食べてたせいか口の中全体が甘い。
俺が食べていたストロベリーのウエハースの酸味と、ミキが食べてたミルク味が何となく混ざってる。
チュと、音がして唇が離れた。
「なんか……しのぶさんが美味しいんですけど……」
「さっき食べてたウエハースだろ?ミキの中も甘かった」
フフっと2人で笑い合う。
……これで機嫌も直らないかなと思わなくも無いのだが……
「あ、しのぶさん誤魔化そうとしてる」
そしてバレる。
え?コレもバレるのか?
「今のは表情のクセじゃないですよ!普通に分かることですからねっ!」
「そんなもんか……てか、ミキってほぼほぼ俺の考えてる事分かるよな?」
「ふぇ?当然じゃないですか。しのぶさんの表情は一瞬たりとも見逃したくないですもん!ずっと見てたら分かりますよ?」
「なら、……別に良くないか?俺の顔のクセが1つバレたくらい。他にもミキは色々俺の知らない俺の事を知ってるんだろ?」
そう聞くと、ミキはへにゃっと笑った。
「そりゃ当然ですよぅ……他にも色々ネタは持ってますからねっ」
俺の何を想像しているのか、ちょっと怖い気もするが、聞けば薮蛇になりそうなのでスルーする。
「じゃぁ、別にあの2人にバレたっていいんじゃないか?」
「えぇー……まぁ……そこまで目くじら立てる必要は無いかな……と思いますけど……」
「うん、ミキは体は小さいけど心は広いもんな。流石俺の自慢の恋人」
「えっ!えへ……へへっ!!」
よし、このまま上手く丸め込……
「あぁー!また僕を丸め込もうとしましたね!?」
そしてバレる。
プンっと頬を膨らましたミキが可愛い。
「僕の事可愛いって思ってる!」
こちらもバレる。
んもうっ!とミキは唸って俺にギュッギュッとしがみついた。
「結局僕ってしのぶさんに弱いんだよなぁー。なんか、許しちゃう気持ち」
「その気持ちでいてくれ。ミキの機嫌が良いのが1番だ」
頬を擦り合わせて機嫌を取る。
……のも、バレてそうだが。
「むぅぅ……自分の機嫌は自分で取るのがデフォルトですけど……今日はしのぶさんにいっぱいご機嫌取って欲しい気分ですっ」
「任せろ」
疚しい事は何一つ無いが、ミキのご機嫌取りなんていくらでもやってやる。
「やった!……じゃぁ、手始めにぃー?」
「手始めに?」
「ベット行きましょ?」
ミキは凶悪な程に可愛い顔して、俺を寝室に誘った。
俺が1番得意なご機嫌取りだ。
そして俺もご機嫌になれる。
俺達は仲良く手を繋いで寝室に向かった。
その後、……2人してかなり機嫌が良くなったのは言うまでもない。
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