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ミニマム男子の番外編
ミニマム男子はコンカフェで働く。前編
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※ミキのコンカフェ時代のお話です
✂ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂
「それでね、是非ミキ君にね、うちのCANDY MILKで働いて欲しいんです」
今年の春、地元の公立高校に入学した僕、神田ミキは、今まさにスカウトを受けてる。
と言っても怪しい事務所ではない。
ダンス講師兼振付師として働いているうちの両親と懇意にしているコンカフェのオーナーからだ。
秋葉原にあるコンセプトカフェ「CANDY STAGE」略して「キャンステ」は、アイドルデビューを目指す女の子や男の子がお給仕したりステージパフォーマンスをするカフェだ。フロアによって「女の子」「男装女子」「男の子」「女装男子」と、コンセプトも分かれている。実際、メジャーデビューを何人も輩出しており、アイドルなら必ず目指すライブ会場でライブを成功させてるグループもいる。
そんな「CANDY STAGE」が、数年前に新しくコンカフェを始めた。
それが、今僕がスカウトを受けてる「CANDY MILK」だ。「CANDY MILK」は、身長165センチ以下の小柄な男性をスタッフにした、いわゆる「ショタカフェ」
制服は、黒の半ズボンに白シャツ、胸元には階級で分かれたリボン、サスペンダー。白のハイソックスに焦げ茶のローファー。
何故そんな事を知ってるかと言うと、今ちょうどパンフレットを眺めているからだ。
「コレばっかりは、本人の意思を尊重しますので……」
「そうねぇ……親がどうこう言う事ではないですからねぇ……」
両親は、あまり気乗りはしていなさそうだった。たまに愚痴として、キャンミスタッフ同士の有象無象を聞いてるので、諸手を挙げられないのだろう。
「必ず、ミキ君の尊厳は守りますので!」
「「当然でしょう」」
両親がピシャリと言った。
「ミキ君自身は、どうかな?君もご両親の指導でダンスの心得はあるでしょ?普通のアルバイトに比べたら、少し覚える事が多いけど、時給は近所のファミレスコンビニよりずっといいし、あと度胸もつくよ!」
「あ、お願いします」
「「「え?」」」
「ん?」
僕はコテン、と首を傾げた。
僕としては願ったり叶ったりのスカウトだ。僕の下にはまだ2人、妹がいる。両親は今でこそダンス講師兼振付師として成功しているが、僕が小さかった頃は、割と貧しい生活をしていた。これだって人気商売だ。いつまた貧乏な生活に戻るか分かったもんじゃない。
僕は、キチンと大学を出て手堅い企業に就職したい。その為には学歴は大卒まで欲しいし、その学費だって出来るだけ自分で稼いでおきたい。今の両親の稼ぎは妹たちに残しておいてもらわないとダメなのだ。
「ミキ君、いいの?」
オーナーが再度聞いてくる。
「はい。一生懸命頑張りますので、ご指導お願いします」
ぴょこんと、頭を下げると、両親は半ば諦めたように「やるなら真面目にやりなさいね」と応援してくれた。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
「カンナです。よろしくお願いします」
前髪はパッツン、黒髪ストレートを前下がりボブに切りそろえ、細い銀フレームのメガネをかけた僕、ミキことステージネーム「カンナ」の初出勤だ。
少し緊張しつつ、ステージリーダーと名乗った「ルキ」君から説明を受ける。
「最初はキッチンで2ヶ月、次はフロアで2ヶ月、キッチンとフロア両方を1ヶ月、これらの研修が終わって、ようやくステージデビュー。頑張れる?」
「はいっ!」
元気よく、良い子のお返事。ルキ君は目を細めて俺の頭を撫でてくれた。キャンミでは、スタッフ同士先輩後輩関係なく「君」呼びをする。
ルキ君は、キャンステを兼任する29歳の大ベテランだ。身長は162センチ。
「いい加減、裏方に回りたいよ」
が、口癖。
キャンステは、アイドルデビューを目指すアルバイトスタッフが殆どだが、ルキ君は教育とマネジメントもしてるので正社員だ。ここも人気商売なので、安定には程遠い。僕はアルバイトスタッフとして頑張ろう。
最初はキッチンと言う事だったが、ものすごく戦場だった。コンカフェとは言え提供するメニューは本格的。きちんとした料理やドリンクを出してるので、キッチン専属スタッフは居るには居るのだが、僕らも料理補助に必ず入る。
料理そのものは、僕も妹2人の面倒を見るために多少の心得はあったので入りやすかった。ただ、見栄えは全然。なので飾り付けはマニュアルを見ながら慎重に行った。
「カンナ!パスタ入った!その次パフェ飾り付け!」
「はいっ!」
「カンナ!終わったら食器洗え!足りないっ!」
「はいっ!」
最初は指示通りに動くばかりだったが、慣れてくると何となく自分で考えられるようになってきた。
「緑席の前菜入ります!」
「頼む!」
「オムライス仕上がりました!」
「上出来!」
指示が段々褒め言葉になってくるのも嬉しい。怒涛の2ヶ月が終わると、キッチン長から熱い抱擁と「ずっとココに居て……」とラブコールも貰えた。ちなみに、キッチン長は身長175センチのガチムチマッチョでフロアには絶対出てこないスタッフだ。キッチンスタッフに身長制限は無い。
キッチンが終わるとフロアデビュー。
お客さまから注文を受けたり、出来上がったメニューを速やかに運ぶ。
キッチンの流れを2ヶ月身体に叩き込んだので、注文されたメニューがどのタイミングで仕上がるのか、ある程度予測が出来た。
最初にキッチンに入ったのはこの為だったのかな?と納得した。
たまに、お客さまに話しかけられる事もあるけど
「ごめんなさい、僕まだ白リボンなの」
と、断りを入れる。
白リボンとは、首元に結ばれたリボンの色だ。
キャンミスタッフは、リボンの色で格付されており、白が1番下っ端のデビュー前の色。
この色はまだ研修中なので、お客さまも話しかけてはいけないとされている。
ステージデビューを果たすと、オレンジ色のリボンが渡される。ここで初めて「キャンミステージスタッフ」と名乗れるようになる。
その後は勤続年数だったりお店への貢献具合だったりで、青→黄→緑→茶→黒と変化する。
ルキ君はもちろん黒リボンだ。
フロアの仕事も何とかこなし、キッチンとフロア双方に入る。コレが僕としては1番楽しかった。他のスタッフは、1番辛い時期と言ってたけど、こう言うどちらも見ながら自分で考えて色々仕事をこなすのは楽しいと思えた。
多分、家でも妹たちの面倒を見ながら家事をしてた影響もあるかも知れない。
ルキ君が「タスク管理が上手い」って褒めてくれたけど、いまいち意味が分からなかったので「エヘ」と笑っておいた。
そんなキッチンとフロア両方期間もおしまい。
とうとうステージデビューの許可もおりた。
とは言え、カフェスタッフとしてキッチンとフロアで動く事は出来ても、ステージパフォーマンスは未経験だ。
今度は、ルキ君からのパフォーマンス指導が始まった。
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「それでね、是非ミキ君にね、うちのCANDY MILKで働いて欲しいんです」
今年の春、地元の公立高校に入学した僕、神田ミキは、今まさにスカウトを受けてる。
と言っても怪しい事務所ではない。
ダンス講師兼振付師として働いているうちの両親と懇意にしているコンカフェのオーナーからだ。
秋葉原にあるコンセプトカフェ「CANDY STAGE」略して「キャンステ」は、アイドルデビューを目指す女の子や男の子がお給仕したりステージパフォーマンスをするカフェだ。フロアによって「女の子」「男装女子」「男の子」「女装男子」と、コンセプトも分かれている。実際、メジャーデビューを何人も輩出しており、アイドルなら必ず目指すライブ会場でライブを成功させてるグループもいる。
そんな「CANDY STAGE」が、数年前に新しくコンカフェを始めた。
それが、今僕がスカウトを受けてる「CANDY MILK」だ。「CANDY MILK」は、身長165センチ以下の小柄な男性をスタッフにした、いわゆる「ショタカフェ」
制服は、黒の半ズボンに白シャツ、胸元には階級で分かれたリボン、サスペンダー。白のハイソックスに焦げ茶のローファー。
何故そんな事を知ってるかと言うと、今ちょうどパンフレットを眺めているからだ。
「コレばっかりは、本人の意思を尊重しますので……」
「そうねぇ……親がどうこう言う事ではないですからねぇ……」
両親は、あまり気乗りはしていなさそうだった。たまに愚痴として、キャンミスタッフ同士の有象無象を聞いてるので、諸手を挙げられないのだろう。
「必ず、ミキ君の尊厳は守りますので!」
「「当然でしょう」」
両親がピシャリと言った。
「ミキ君自身は、どうかな?君もご両親の指導でダンスの心得はあるでしょ?普通のアルバイトに比べたら、少し覚える事が多いけど、時給は近所のファミレスコンビニよりずっといいし、あと度胸もつくよ!」
「あ、お願いします」
「「「え?」」」
「ん?」
僕はコテン、と首を傾げた。
僕としては願ったり叶ったりのスカウトだ。僕の下にはまだ2人、妹がいる。両親は今でこそダンス講師兼振付師として成功しているが、僕が小さかった頃は、割と貧しい生活をしていた。これだって人気商売だ。いつまた貧乏な生活に戻るか分かったもんじゃない。
僕は、キチンと大学を出て手堅い企業に就職したい。その為には学歴は大卒まで欲しいし、その学費だって出来るだけ自分で稼いでおきたい。今の両親の稼ぎは妹たちに残しておいてもらわないとダメなのだ。
「ミキ君、いいの?」
オーナーが再度聞いてくる。
「はい。一生懸命頑張りますので、ご指導お願いします」
ぴょこんと、頭を下げると、両親は半ば諦めたように「やるなら真面目にやりなさいね」と応援してくれた。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
「カンナです。よろしくお願いします」
前髪はパッツン、黒髪ストレートを前下がりボブに切りそろえ、細い銀フレームのメガネをかけた僕、ミキことステージネーム「カンナ」の初出勤だ。
少し緊張しつつ、ステージリーダーと名乗った「ルキ」君から説明を受ける。
「最初はキッチンで2ヶ月、次はフロアで2ヶ月、キッチンとフロア両方を1ヶ月、これらの研修が終わって、ようやくステージデビュー。頑張れる?」
「はいっ!」
元気よく、良い子のお返事。ルキ君は目を細めて俺の頭を撫でてくれた。キャンミでは、スタッフ同士先輩後輩関係なく「君」呼びをする。
ルキ君は、キャンステを兼任する29歳の大ベテランだ。身長は162センチ。
「いい加減、裏方に回りたいよ」
が、口癖。
キャンステは、アイドルデビューを目指すアルバイトスタッフが殆どだが、ルキ君は教育とマネジメントもしてるので正社員だ。ここも人気商売なので、安定には程遠い。僕はアルバイトスタッフとして頑張ろう。
最初はキッチンと言う事だったが、ものすごく戦場だった。コンカフェとは言え提供するメニューは本格的。きちんとした料理やドリンクを出してるので、キッチン専属スタッフは居るには居るのだが、僕らも料理補助に必ず入る。
料理そのものは、僕も妹2人の面倒を見るために多少の心得はあったので入りやすかった。ただ、見栄えは全然。なので飾り付けはマニュアルを見ながら慎重に行った。
「カンナ!パスタ入った!その次パフェ飾り付け!」
「はいっ!」
「カンナ!終わったら食器洗え!足りないっ!」
「はいっ!」
最初は指示通りに動くばかりだったが、慣れてくると何となく自分で考えられるようになってきた。
「緑席の前菜入ります!」
「頼む!」
「オムライス仕上がりました!」
「上出来!」
指示が段々褒め言葉になってくるのも嬉しい。怒涛の2ヶ月が終わると、キッチン長から熱い抱擁と「ずっとココに居て……」とラブコールも貰えた。ちなみに、キッチン長は身長175センチのガチムチマッチョでフロアには絶対出てこないスタッフだ。キッチンスタッフに身長制限は無い。
キッチンが終わるとフロアデビュー。
お客さまから注文を受けたり、出来上がったメニューを速やかに運ぶ。
キッチンの流れを2ヶ月身体に叩き込んだので、注文されたメニューがどのタイミングで仕上がるのか、ある程度予測が出来た。
最初にキッチンに入ったのはこの為だったのかな?と納得した。
たまに、お客さまに話しかけられる事もあるけど
「ごめんなさい、僕まだ白リボンなの」
と、断りを入れる。
白リボンとは、首元に結ばれたリボンの色だ。
キャンミスタッフは、リボンの色で格付されており、白が1番下っ端のデビュー前の色。
この色はまだ研修中なので、お客さまも話しかけてはいけないとされている。
ステージデビューを果たすと、オレンジ色のリボンが渡される。ここで初めて「キャンミステージスタッフ」と名乗れるようになる。
その後は勤続年数だったりお店への貢献具合だったりで、青→黄→緑→茶→黒と変化する。
ルキ君はもちろん黒リボンだ。
フロアの仕事も何とかこなし、キッチンとフロア双方に入る。コレが僕としては1番楽しかった。他のスタッフは、1番辛い時期と言ってたけど、こう言うどちらも見ながら自分で考えて色々仕事をこなすのは楽しいと思えた。
多分、家でも妹たちの面倒を見ながら家事をしてた影響もあるかも知れない。
ルキ君が「タスク管理が上手い」って褒めてくれたけど、いまいち意味が分からなかったので「エヘ」と笑っておいた。
そんなキッチンとフロア両方期間もおしまい。
とうとうステージデビューの許可もおりた。
とは言え、カフェスタッフとしてキッチンとフロアで動く事は出来ても、ステージパフォーマンスは未経験だ。
今度は、ルキ君からのパフォーマンス指導が始まった。
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