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本編

7-1.重なる時は、重なる。

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寮母♂さんが管理している騎士団寮には、現在15人の騎士たちが入寮しています。
入隊した時期は、今は様々。
入寮した時期も、今は様々。
もちろん、年齢も身分も様々。
それでも同じ釜の飯を食べる仲間です。
お互いがお互いを尊重し合って、誇り高く騎士のお勤めをしています。

国営騎士は、寮に住む騎士以外にも沢山います。そのたくさんの人数で、日々のお勤めや訓練を行っているのです。
騎士には、決まった休みはありません。しかし、月に6日。年に1回のゴカ5日間休暇があります。
みんながみんな、休みが偏らないように、お休みの日が与えられます。もちろんお休みの希望日を申告すれば、なるべくその通りにお休み出来るように配慮されます。

そう、シフト制ですね。分かります。

もう少し、騎士のお休み事情を補足しますと、上記のお休み以外に有給休暇が年間20日付与されており、毎年使い切る事が推奨されています。とは言え、使い切れない騎士もいます。使いきれなかった場合は、翌年までであれば持ち越し、最大40日まで有給休暇を所持する事が出来ます。それでも使いきれなかった場合は、保存休暇と言う名目で管理されます。有給休暇を使い切ってしまい、それでも休まなくてはならない事が生じた際に保存休暇から有給休暇へ復活させる事が出来ます。こちらは無制限。ただし、保存休暇の復活には、かなり面倒臭い手続きが必要で、最終決裁は王様です。よっぽどの事がない限り、保存休暇が使われる事はありません。そもそも、保存休暇が生じるほど、有給休暇を使わない騎士は、今はほとんどおりません。
それだけ、国営騎士たちは定期的に休む事が出来ているのです。

そんなホワイトにホワイトを重ねた国営騎士団。月の中頃に翌月の勤務表が開示されます。
そしてその勤務表は、寮母♂さんの手にも渡されます。
寮母♂さんの手に渡るのは、騎士団寮に住む15人に、何故か騎士団長を加えた一覧です。
ここは騎士団長が無理やり自分の勤務状況を捩じ込んでいるみたいですね。
隙あらば、寮母♂さんにアプローチをしたい騎士団長の職権乱用の1つです。


𓂃𓈒𓂂𓏸


「お。来月は…………ほう、久々に来たか……」

来月の勤務表を渡された寮母♂さん。
ニマニマと笑っています。
そんな横では……、

「うおぉぉぉぉおおおーー!!!」
「俺のバカヤロウ!」
「くっっ!!そんな事が……!」
「ひゃっふーー!!!」
「わぁ♡♡」
「え?あ!ホントだ!!やったぁ!」

寮に住む騎士たちが何故か阿鼻叫喚です。
いったい何が起こったのでしょう?

「この日の夜、寮の人数少ないな」

寮母♂さんが、ちょっと嬉しそうです。
そう、夜に騎士団寮へ戻る騎士たちが、極端に少ない日があったのです。
理由は、特別な事はなく、遠征訓練や不寝番、ゴカ5日間休暇、有給休暇が、たまたま重なったのです。
因みに、こういった事は特別珍しい事ではありません。
寮に住む騎士たちだけではなく、全体でシフトを組むので稀に起こる事なのです。
夜、寮に戻る騎士たちが少ないと、何故阿鼻叫喚と化すのでしょうか?
それは……

「寮母♂さん♡♡俺、肉がいいです!」
「任せろ。仕込みが少ない分、手間暇もかけてやろう」
「やったぁー!!」

そう、世話をする騎士たちが少ない分、寮母♂さんも夜のお仕事に余裕が出来るので、少し手の込んだ夕飯が提供されるのです。

「お前らズリィぞ!!」

不寝番の騎士が文句を言いました。

「そう言うアナタだって前回こっち側だったじゃないですか」

プンプンと文句を言ってきた騎士に、言い返します。

「そりゃそうだけど、けどやっぱり羨ましーんだよ!」

寮に居る組の騎士たちは、そんな羨ましがる騎士に「やーいやーい」と煽るように茶化しました。

「ほらほら、お前ら喧嘩するんじゃねぇ」

言い争いをしていた騎士たちの頭を寮母♂さんがポンポンと撫でます。

「はふん……♡♡寮母♂さん……」

たちどころに骨抜きになる騎士たちでした。


𓂃𓈒𓂂𓏸


さて。
あっという間に時は過ぎ、とうとう待ちに待った寮住まいの騎士たちが少なくなる日が来ました。

「んふん♡んふん♡」

と、朝からご機嫌な騎士も居れば、

「くそ……」

ちょっとご不満な騎士も居たり、みんなどこかしら情緒不安定です。
そんな騎士たちを見て、寮母♂さんはクスクスと笑います。

「まぁまぁ、そんな拗ねるな」

ちょうど近くに居た、ご不満な様子の騎士君をムギュギュンと雄胸で挟み、頭に軽くキスをしました。
もちろん親愛のキスです。
寮母♂さんにとっては、寮に住む騎士たちは我が子みたいなものですからね。

「そんな態度で騎士は務まらねぇぞ?機嫌なおせ」

な?と屈んで騎士君と目を合わせます。
ムギュムギュちゅーをされた騎士君は、

「は……はひぃ~……♡♡」

と、お顔が真っ赤になってました。
それを見ていた他の騎士たち。
ソワソワと寮母♂さんに群がります。

「ん?なんだ?お前ら」

「寮母♂さん、俺たちにもムギュムギュとキスをお願いします」

寮母♂さんは、みんなの寮母♂さんです。 誰かの特別ではありませんので、みんな平等に雄胸に挟まれキスを贈られる事になりました。

ちなみに、その日お勤めだった騎士たちは、尋常ではないコストパフォーマンスを見せつけたのは、当然の事ですよね。


𓂃𓈒𓂂𓏸


さてさて、そんな朝を過ごせばいつもの寮母♂さんのお仕事の始まりです。
炊事に洗濯お掃除と、パパパーと済ませ、事務仕事もシャシャシャーと今日は早めに済ませます。
そして、本日の寮のお仕事がほとんど終わると、食物保管庫を覗きに行きました。

「うん、メイン以外の食材に不足は無ぇな。あとは……狩るか」

いつものカバンをパイスラよろしく斜めにかけ、お気に入りのオリハルコン製の包丁を腰元にしまい、魔物が蔓延る森を目指すことにしました。

「ドラゴンが居れば最高なんだがなぁ」

ウロウロと森の中を散策する寮母♂さん。
いつものバッグの中には既に魔物食材がしまわれています。ひと狩り終わってるみたいですが、まだ欲しいみたいですね。
ちょっとソコまで……みたいなノリでドラゴン探ししていますが、寮母♂さんが探しているドラゴンはもちろんA級ドラゴンです。それなりにツヨツヨですからね!
まったく、欲しがり寮母♂さんです。

「おっとプーミャンめっけ」

ザシュンと手際良くプーミャンを狩ります。血抜きだけ施し、丸のままバッグにしまいました。
他にも、川でシャーケを数匹捕まえ、ウロウロ探しましたが、お目当てA級ドラゴンは見つかりませんでした。

「ま、ニジョーの肉もあるし、これくらいでいいか」

寮母♂さんは独り言を言って自分を納得させました。


𓂃𓈒𓂂𓏸


寮に戻れば夕飯の下拵えです。
今日の夕飯はバーベキューですが、その前に大釜で炊いておいたコメを手際よく三角に握り、大皿に積み上げ保存魔法を施しました。こちらはお皿2枚分。
次に、野菜やお肉を程よい大きさに切ってバランス良く串に刺していきます。それを野菜にお肉と品を変え沢山作ると、大皿にこんもりを重ね盛りました。
そんなお皿が10枚作られ保存魔法がかけられました。
つけダレは、寮母♂さん秘伝のソースを使います。こちらは、材料はシンプルなのですが、調合が寮母♂さん仕様なので、甘辛で食欲が増進される特別なソースです。
もちろんシンプルに食べられるよう塩コショウも用意します。

あとは、寮のお庭の設営です。
かなり大きなサイズのバーベキューコンロの中に炭と着火剤を設置します。
現役時代、騎士のお仕事で野営する事も多かった寮母♂さん。バーベキュー会場の設営なんて朝飯前です。
タープを設置して、その下にテーブルと椅子も置きました。今日、寮に帰ってくる騎士達全員が座っても足りる椅子の数です。

設営が終わると、寮母♂さんはウキウキしながら寮住まいの騎士達の帰りを待ちました。
寮母♂さんも楽しいみたいですね。



✚✚✚✚✚✚✚



BL大賞ご参加の皆さま、お疲れ様でした。
寮母♂さんもまた、よろしくお願いします。
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