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本編

6-10 里帰りの、寮母♂さん。

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朝です。

今日も今日とて兄弟たちは、寮母♂さんの体に乗り上げ、雄っぱいを枕にしてクフクフと幸せそうに眠っています。
寮母♂さんは、愛おしそうに2人を抱き締めてます。

「くそ……お前ら……またソレか……!」

2人の寝相はもっと酷いのだと、薬師が主張しましたが、

「こんなチビ共が俺に乗り上げたって何も問題は無ぇよ。薬師には大変だろうがな」

わはは、と笑う寮母♂さんを薬師が睨みます。

ちなみに、薬師は申請から1日経過したので「庭師あらため」は省かれ「薬師」のみになりました。
あれだけ主張したのですか「薬師」と言えば「庭師あらため薬師」と印象付けられた事でしょう。

「寮母♂さんおはよう」
「おはよう」

兄弟たちも起きました。
お兄ちゃんは、寮母さんが今日帰ってしまう事を知っていたので、少し元気がありません。
弟君は、良く分かってないので今日も元気です。

「寮母♂さん、今日も一緒にいてくれるの?」

無邪気に弟君が聞きます。
寮母♂さんは、少し困ったように眉を下げて弟君に説明をしました。

「いや、お前らと朝ごはんを食べたら王都に帰るよ。向こうの仕事があるからな」

「そっかぁー。寮母♂さん、また来てね」

意外と弟君はあっさりとしていました。
昨夜、お兄ちゃんがショックを受けていたので、弟君は泣き出してしまうのではないか?と薬師もお兄ちゃんも思っていたので、ちょっと肩透かしを食らいました。

「おう、また来るぜ。それまで、きちんと父ちゃんのお手伝いを頑張って、良く寝て良く遊んで良く学べよ?」

「「はぁーい」」

お兄ちゃんも一緒に元気なお返事をしました。


𓂃𓈒𓂂𓏸


さて、4人で朝ごはんを食べ終われば、寮母♂さんは、この村を出て王都に帰ります。
お見送りには、村長さんと奥さん、薬師と息子たち、他にも時間のある村人たちはみんな出てきました。

「みんな元気そうで良かったよ。また来年戻ってくる」

寮母♂さんが、お見送りに来てくれたみんなに聞こえるように声を張りました。

「寮母♂も、タマサワリノギだけじゃなくて、いつでも帰ってきて良いんだからな?」
「そうよ、ここは寮母♂ちゃんのおさとなんだから。いつでも帰ってきてね」

村長と奥さんが言います。

「お前の家を使わせ貰う俺が言うのもおかしな話だが、部屋は余ってる。いつでも泊まりに来い」
「寮母♂さん!また来てね。今度は僕にも稽古してね」
「寮母♂さん、今度お薬になる草の育て方教えて?僕は父ちゃんのお手伝い頑張る」

薬師とその息子たちが言います。
他にも村の人たちは寮母♂さんに思い思いに話しかけ、寮母♂さんも嬉しそうに応えます。
みんな、寮母♂さんの事が大好きなのです。

しばらく別れを惜しみ、みんな想いを伝えきると、寮母♂さんは居住まいを正して改めて村の人たちにお別れのご挨拶をします。

「じゃぁ!!みんなも元気でな!王都に戻るわっ!!!」

寮母♂さんも、村の人たちも、みんな大きく手を振っています。
寮母♂さんはバビューンと土埃を上げ走り、村の人たちは、寮母♂さんが見えなくなるまで手を振り続けるのでした。


𓂃𓈒𓂂𓏸


さて、こちらは王都にある国営騎士団の寮です。
少しばかり活気がありません。
それもそのはず。
活気の源である、寮母♂さんが3日もお留守にしているのです。
活気が無くても騎士のお仕事をしなくてはいけませんし、寮の事は全部自分たちでやらなくてはいけません。
元々、寮母♂さんの愛情たっぷりな教育のおかげで、どんなお貴族様育ちであっても、身の回りの事は全部1人で出来るようになった寮住まいの騎士たちです。
活気は無くとも、非番の騎士たちはペソペソと掃除洗濯料理とこなしました。

寮母♂さんは、本日帰宅予定ですが、寮母♂さんが寮母♂さんとして戻るのは、明日からです。
今日までお休みですからね。
なので、非番の騎士たちは早々に夕飯の支度に取り掛かっています。

「寮母♂さんて、これを1人で毎日こなしてるんだよなぁ……」

騎士の誰かが言いました。

「3日間だけだし、俺らは何人かでやってるけど、普通に大変だよな」

「で、この合間に寮母♂さんはコレクトもハントもしてるんだろ?」

改めて、寮母♂さんの凄さを実感する非番の騎士たちなのでした。

そんなこんなでバタバタとしていると、寮の出入口から大きな声が聞こえてきました。

「今帰って来たぞー!!」

寮母♂さんです。
非番の騎士たちはパッとお顔が明るくなりました。

「寮母♂さんっ!!」
「おかえりなさい!!」
「お変わりはないですか?」
「あちらはどうでしたか?」

みんなドドドドっと重量級の体で床を揺らし寮母♂さんを出迎えれば、口々にご挨拶をします。

「お前ら苦労かけたな。こっちは変わり無ぇよ。里のみんなも元気だった。お前らこそ変わりは無いか?飯はしっかり食ってるか?今日の夕飯は何だ?俺も手伝うぞ?それより溜まってる作業が先か?」

帰って来た途端に寮母♂さんは寮母♂さんとして仕事を始めようとしましたが、騎士たちはそんな寮母♂さんを止めました。

「寮母♂さんは今日まで休暇です。お仕事は明日からですよ。今日の分は俺たちに任せてください」

「寮母♂さんは、部屋で休んでてください。夕飯は俺たちがもう作り始めてますし、溜まってる作業も今のところありません」

さぁさぁ、と騎士たちは寮母♂さんの背中を押して、お部屋に進ませました。
寮母♂さん、ちょっと嬉しそうですね。

「お前らも、随分と成長したなぁ」

寮母♂さんがしみじみと呟きます。
そんな事を言われた騎士たちも嬉しそです。

「夕飯は、ウケッコーとキノコのクリーム煮を作ります」

「ブロッコリーのチーズ焼きも作ります」

「メインは白魚とベーコンのパスタです」

なかなかボリューム感のあるメニューに、寮母♂さんはニッコリです。
時間はまだ夕刻前。早く寮の仕事に戻らなくちゃと思っていた寮母♂さんでしたが、頼もしい騎士たちに甘えて、ゆっくりするために自室へ向かいました。

夕飯の時刻になればお勤めで不在だった騎士たちも、みんな戻って来る事でしょう。
そして、騎士団寮に住む騎士たちは、15人揃って改めて寮母♂さんに言うのです。


「寮母♂さん!!おかえりなさい!!」




おしまい。





の、はずなのですが……
数日後、宰相さんが血相を抱えて騎士団寮に乗り込むのです。


「寮母♂!!!この薬師をなんでもっと早くこちらに報告しなかったのですか!!!国を挙げて捜索してた方なんですよ!!!ノドカナ村で薬師だなんて……こんな貴重な人材をノドカナ村に置くだなんて……あなたも申請に立ち会ってるじゃないですか!!」

「はえ?」

寮母♂さんは、キョトン顔です。
そんなお顔も可愛いじゃないですかと宰相は思いましたが、まずは薬師の事です。
どうやら、ノドカナ村に戻った庭師あらため薬師は、とても優秀な薬師だったみたいですね。
そんな彼が王都の薬師登録からフッツリと消え、ノドカナ村の登録に変わったと言う事が、とても衝撃だったみたいです。

「いやぁ、そんな事言われてもなぁ……」

「彼が王都に戻る予定は……」

「いや無いだろ。子育てもあるし」

「子育て……!母親は?」

「居ねぇよ」

「そうですか……ではノドカナ村への行路の整備と……」

戻る気配が無いと分かった宰相は、それ以上寮母♂さんに突っかかる事はせず、ブツブツと独り言を言いながらお城へ戻って行きました。

「なんだぁ?あいつは……」

国にとって、とても優秀な薬師だった事は、寮母♂さんにかかれば些細な事でした。
大切なのは、薬師が、その息子たちが幸せに暮らす事。
ノドカナ村で過ごす3人は、寮母♂さんから見ても、とても幸せそうでした。

それでいい。

それでいいのです。
寮母♂さんは、一旦止めていた手を、再び寮のお仕事へと動かすのでした。




明日もみんな、幸せであーれ!





おしまい。



✂ーーーーーーーーー✂



ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
と、言いつつ閑話も上げてますので、お時間がありましたらお付き合いください。


また、ネタが出来ましたら、投下したいと思いますので、引き続き寮母♂さんをよろしくお願いします。
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