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本編

4.寮母♂さんの夜は遅い。

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「うるぁぁぁ!!!お前ら遅ぇぇんだよ!!何があった!?」

日も暮れて一番星が輝く頃、騎士団寮の出入口近くで怒声が響きました。
寮母♂さんの声です。
彼の声は、高過ぎず、低過ぎず、そしてとても良く通るイケボです。

バサバサバサー!と木々に止まっていた鳥たちも飛び立ちました。

……怖かったね……

それ以上に恐怖を抱いているのは、本日お勤めだった騎士団寮に住む騎士たちです。
寮の外で綺麗に横並びになってビクゥッと体を震わせました。

熱を出してない方の新米騎士くんなんて怖くて涙ぐんでます。

こう言う時は、年長者もしくはその時のお勤めの中で1番地位のある騎士が代表で答えます。
今日は寮長みたいですね。
寮長は足を肩幅に広げ、手を後ろで組み、出来うる限りの声を張り上げて答えました。

「討伐に!時間がかかりました!」

「獲物は!?」

「ワニワニです!!」

「数は!?」

「15頭ほどの群れを確認しました!」

ワニワニとは、とっても大きくて凶暴なワニです。
そして美味しいです。
群れで暮らしていますが、森の奥で暮らす分には害が無いので基本放置しています。
しかし、餌等を求めて浅い森まで来ると、人間を襲ってしまうので討伐対象になります。
数が少なければ、討伐の難易度は低いのですが、数が増えればそれだけ大変になります。

「結果は!?」

「全て始末しました!」

「良くやった!!」

寮母♂さんは横並びになっていた騎士たちの肩を、一人一人叩き労いました。
騎士たちは一安心です。
行儀良く、寮の中に入りました。

すると、最後に入った寮母♂さんが、また声を張り上げました。

「お前らぁ!分かってるな!!」

「「「はい!!脱いだ鎧はきちんと元の場所に片付けます!」」」

「「「はい!洗濯物は洗濯カゴに入れます!」」」

声がとても揃ってます。
そして寮母♂さんが聞きます。

「名前の無いもんはどうなる!?」

「「「破棄されます!!!」」」

そう、お名前の無い衣類は、容赦なく捨てられます。
それが寮の鉄則なのです。
そんなやり取りを経て、みんな揃って夜ご飯が始まります。

ちなみに、非番の騎士たちのご飯は申告制です。
お外で食べたい騎士も居ますからね……と、言いたい所なのですが……

「んっ、今日も全員揃ってるな」

寮母♂さんが食堂に着席した騎士たちを見回せば、1、2、3、4、5、、、15人が揃っていました。

「寮母♂さんの手料理に比べたら外の食事は……」

「よっぽどの事情が無ければ寮で食事がしたいです」

「寮母♂さんのご飯おいしいです!大好きです!」

概ねそんな感じで、遠征等、寮に帰れない日以外は全員が揃います。

さて、今日のお夕飯のメニューは何でしょうか?

「お前ら、今日もおつかれ。非番だった奴らも良く休んで偉いぞ。今日はウケッコーの香草焼きにポトフ、サラダとパンだ。よく噛んで食べろよー」

ウケッコーとは、食用家畜として改良された大きめの鳥です。
良質なタンパク質が摂取出来るため、体を鍛えている騎士たちに人気のある食材です。
香草焼き……と、言ってますが、もちろんマリィの葉も使われています。
これで騎士たちも元気モリモリになる事でしょう。


𓂃𓈒𓂂𓏸


食事が終わると、各々が使った食器を洗い場に持って行きます。

「寮母♂さん、今日も美味しいご飯をありがとうございました」

寮母♂さんへの感謝の言葉も忘れません。

「お前らも、しっかり飯を食ってくれてありがとう。ゆっくり休めよ」

そうご挨拶を交わせば、騎士たちは就寝時間まで自由時間になります。すぐにお風呂に向かう者、談話室でダラダラと過ごす者、自室で勉学に勤しむ者、様々です。

「寮母♂さん、片付け手伝いますよ」

寮長みたいに寮母♂さんのお手伝いをする者も居ます。

「俺も手伝います。今日休んでしまったので……」

おずおずとマッシュくんも声を上げました。
マッシュくん、すっかり元気になったみたいですね。

「ははっ、ありがとうなぁー。それなら寮長は食器洗ってくれ。マッシュはテーブルを拭いてきてくれるか?あと床の水拭き」

「「はい」」

2人とも、良いお返事をして指示された持ち場に行きました。
それを見ていた他の騎士たちが、ゾロゾロとやって来ました。

「寮長ぉー、相変わらず寮母♂さんにベッタリっすねー。俺も手伝います」

「マッシュ、熱はもういいのか?床は俺らがやっとくよ」

なんだかんだとみんなお手伝いに来て、直ぐに食堂の片付けは終わってしまいました。
寮母♂さんも、そんな騎士たちのやり取りを見てニコニコです。

「ほんっっと、お前らは俺の自慢の騎士団寮の騎士たちだよ」

それを聞いた騎士たちもニコニコです。

「それを言うなら、寮母♂さんは俺たち自慢の騎士団寮の寮母♂さんですよっ」


𓂃𓈒𓂂𓏸


ほのぼのとしたやり取りを経て、騎士たちの就寝時間がやって来ました。

「明かり消すぞー」

と言う寮母♂さんの合図で、寮全体の明かりが消え、真っ暗になりました。
みんな良い子にベッドに潜ります。
枕元には、寮母♂さんが調合してくれた安眠ハーブの香り袋が置かれています。
騎士たちは、みんなそのハーブのおかげで毎夜ぐっすりと眠りにつく事ができます。

「おやすみ、いい夢を」

寮母♂さんは1人呟いて自室に戻ると、小さな明かりを灯しました。


𓂃𓈒𓂂𓏸


残ったお仕事は、帳簿付け、食料や備品等の在庫管理と発注、業務報告書、それとは別に騎士たち個々の記録。
明日のスケジュールの確認と準備。
書き物が多く、頭を使います。

黙々と作業をしていれば、日付もそろそろ変わる頃。
寮母♂さんは時計を見やり、軽く伸びをして、パタンと記録していたノートを閉じました。

あとはお風呂に入って寝るだけです。
寮母♂さんは共同風呂に向かいました。
お風呂は騎士たちの入浴が済み、すっかりと冷めてしまっていますが、そこは剣と魔法の国です。

「ジョウカ、ワカシカエシ」

お風呂のお湯は一瞬にして清潔に、そして適温になりました。
魔法って便利ですね。

豊満な肉体を惜しげも無く晒して浴場に入ります。
きちんと掛け湯、頭と体を洗って入浴すれば、タプン、、、と寮母♂さんのお胸が揺れました。
一日の疲れが吹き飛ぶ瞬間です。
はふん、と悩ましく息を吐いてしばらく目を閉じます。

明日はどんな日になるだろうか?
今日みたいに体調不良の騎士がいなければいいな。
みんな元気で安全でありますように、、、

そんな事を願いながら、寮母♂さんはゆっくりと体を温めました。

体が温まれば、脱衣場に向かい体の水滴を拭い、ゆったりとした衣類に着替えます。
余談ですが、寮母♂さんが寝る時の格好は、触り心地の良い柔らかく薄い生地で作られた衣類を1枚纏うのみで、下着類は付けないものですから、色々とうすーく透けています。
官能的ですね。
 


そんな寮母♂さんも、寝る時間です。




最後に出入口の施錠を確認し、自室に戻りました。

「おやすみ」

誰に言うでも無く、寮母♂さんはひとり呟き眠りにつきました。

誰よりも遅く寝て、そして明日も誰よりも早く起きて、騎士団寮に住む騎士たちのために働く、それが騎士団寮に住む騎士たちよりも屈強な寮母♂さんなのでした。





それではみなさま、また明日。






✂ーーーーーーーーーー✂




ここまでお読み頂きありがとうございました。
またお話がまとまりましたら、更新しますので、お気に召しましたらオキニ登録して頂くか、気が向いた時にフラっと立ち寄って頂けたらと思います。
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感想 3

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