さよなら、しゅうまつ。

黒川

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2:n回目

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「今度のしゅうまつ、何する?」


アイツは一方的に決まり事を作った。


『しゅうまつの予定を聞かれたら、終末の過ごし方を答える』


俺たちは、何度も終末を繰り返している。
不思議なことに、何故か俺もアイツも、同じ世界線に必ず存在し、出会い、終末で人生が終わる。
お互い、ソレに気づいた時は目を見張った。
そして、ソレに気付くと俺たちは、この世の終末が、いつやってきて、どの様に終わるのかを知る。


「初めては隕石が衝突してたな」
「あぁ、それそれ。懐かしい」
「人外生命体は何度経験しても怖い」
「戦争も嫌だな」
「同意」
「てかさ、人外生命体系多くね?」
「それなー」
「隕石衝突系も同じくらいかー?」
「それなー」

思い出すタイミングは、いつも違う。
いつだったか、終末が来るまで気付かずにずっと過ごしていた時があった。
アイツは、早々に気づいてたらしい。

「ほんっっと、あの時のお前ニブちんだっからな?何度も俺はしゅうまつの予定聞いてんのによ、仕事だ寝てるだ何も予定無いとか、何なら一緒に映画観に行こうとか誘ってくるし。ふっつーの週末の予定ばかり答えやがんの」

「悪かったよ」

と言っても、その映画の誘いは俺にとって決死のデートの誘いだった。
コイツは気付いてないだろうけどさ。


「寂しかった……」

「おう……」

「俺ばかりが覚えててさ……」

「悪かったよ」

「あん時の終末、お前は何してたんだよ」

「テレビ見てた」

「普通だな」

「気づけなきゃ普通に過ごすだろ」


コイツが『寂しい』と言うのは、同じ終末を知る仲間が居なかった事への孤独感だ。
因みに、相手が気付いてない内は、無理に明かさない。
知らない方が幸せ、なんて事もあるしな。


俺が気付けなかった時、互いに気付けた世界でコイツは『寂しかった』と責めてくる。


でも俺はいつだって『寂しい』


俺が気付こうが、気付けまいが。
コイツが気付こうが、気付けまいが。


今だって『寂しい』


「じゃぁさ、今度のしゅうまつ、お前は何して過ごすんだ?」


そう聞けば、コイツは当たり前の様に答える。


「今回は、今の恋人と一緒に過ごすわ」


今回の終末は1ヶ月後。
大きな天変地異が起こり、世界は真っ二つに割れ、そのままおしまい。
急に来て、急に終わる。
苦しむ事は無いだろう。
楽な終わり方だ。
分かっていれば、好きな人とのんびり最期を過ごせばいい。




何故、それが俺では無いんだ……




『寂しい』『寂しい』



そんな気持ちに蓋をして、俺は今出来る精一杯の笑顔を作ってコイツに言う。




「良いしゅうまつを」




今回も、駄目だった……
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