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第二章 過去との対峙編
107.彼が陽の光を浴びる時-戦闘編-1
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********
(なんなんだこの男は……)
勇者一族の屋敷にて。地面に尻餅をつきながら膝を震わせているその男は、怯え切った瞳でコニアを見上げた。
見たことも聞いたこともない、怪しげな術によって大量の刃物を出現させ、仲間の半数以上を戦闘不能にまで追い詰めたコニアは、彼らにとって脅威以外の何者でもない。
アデルを侮辱されたことでたかが外れてしまっているコニアは、普段の温かい表情からは想像もできないほど冷徹な眼差しで彼らを見下ろしていた。
最初の攻撃で意識を失わなかった残党たちは、筆をとるコニアに対して最大限の警戒を露わにする。そんな中、未だ戦意を喪失してはいなかった重鎮の一人が、コニアの攻撃を待たずして攻めに入る。
あの筆で刻まれた文字による攻撃が脅威であることは先の一撃で理解したが、要は文字を書かせなければいい話だと、その重鎮は解釈したのだ。
半紙の上で筆を走らせるコニア目掛け、重鎮は剣を振るおうとした。だが、彼は知らなかった。そんな自らを、遥か遠くから皿のような瞳で監視する人物がいることに。
「はぁっ!!」
ガキンっ!!
猛烈な勢いの何かに阻まれ、その刃がコニアの元に届くことはなかった。突然のことに目を回す重鎮に分かるのは、自らの手に酷い痺れが走っていることだけ。
当惑し、泳ぐ目で状況を確認すると、その手に剣は握られておらず、愛刀は地面に転がっていた。その上、衝撃を一身に受けた刀身は真っ二つにされていた。
あまりにも突然の出来事に重鎮が当惑していると、その間に作業を済ませたコニアは半紙を破り、それを彼らに向けて突き付ける。
「いやぁ、ほんとに助かるぜ。オイラ、この技なしじゃ碌に戦えないからなぁ。ナツメちゃん様様って感じだぜ」
ナツメの援護射撃に対する感謝を述べつつ、コニアは攻撃にかかった。だが、先刻のように半紙を突き付けられたというのに、彼らに対する攻撃手段が姿を見せない。
思わず彼らが首を傾げていると、それは前触れもなくやってきた。
「「っ!?」」
抗う隙を一切与えない、強烈な重みが彼らを襲う。まるで重力を何十倍、何百倍にもした力が襲っているかのようで、彼らはあっという間に地面に叩きつけられる。
起き上がろうとしても、身体はびくともしてくれず、まるで自分の身体が自分の物ではないような感覚に陥る。それどころか、自らを押しつぶす圧力はどんどん増していき、仕舞いには地面に窪みができるほど。
地面に埋めこまれてから数十秒後。とうとう意識を保つ者は消失してしまい、全員が戦闘不能に陥るという結果になった。
「うっし……。倒したはいいけど、オイラこっからどうやって脱出すればいいんだ?」
コニアは首を傾けつつ、地面に転がる彼らを白い目で眺めた。レディバグ序列一位であるところの、あのリオでも脱出困難な結界をコニアが破るというのは困難を極める。
コニアは己の最大の武器――その半紙と筆に視線を落とすと、自分にできることを模索し、熟考するのだった。
********
ハヤテ、ライトによる、一族との戦いはまさに熾烈を極めた。ハヤテとライトは二人で、彼らの父を含めた重鎮、騎士団の軍勢を相手にしている為、彼らの攻防は亀の歩みのような進展しかしていない。
一人一人の実力差でいえば、ハヤテとライトが勝っているのだろう。だが、彼らは腐っても勇者一族、そして騎士団である。血の滲むような訓練を幼少から施されている点は同じ。
そんな相手に数で負けている以上、敵の戦力を削ることは困難を極めた。少しずつ、少しずつ、戦闘能力で劣る敵から戦闘不能に追い詰めてはいるものの、長時間の戦闘は二人の体力を無慈悲に蝕んでいく。
「はぁっ……はぁっ……」
「諦めが悪いな、ライト。降参してロクヤの居所を吐けば許してやると、再三の慈悲を与えているというのに」
「はっ」
自慢の大刀を構えながら息を切らすライトを前に、父であるエイトは忌々し気に呟いた。その声音は威圧感と平静を纏っているが、長時間の戦闘による疲労により、少し声が上がっている。恐らく、体力を少しでも回復させるために、エイトは彼に話しかけたのだろう。
相変わらず高圧的な父を前に、乾いた笑い声を漏らしたライト。
「その慈悲ってやらを、ロクヤに向ける気はねぇんですかね」
「弱者に与える慈悲などない」
「はっ、それが先代勇者の吐く台詞かよ……弱きを助け強きを挫くが、あんたらの崇拝する勇者のあるべき姿じゃねぇのかよ」
「その通りだ。だがその弱き者に、一族の人間は含まれない。誇り高き勇者一族の人間として生まれた以上、いかなる理由があろうとも弱者として生きることを許すことはできない。一族の人間は強き者として、弱者を守り悪魔を討伐することが使命なのだからな」
そう言い放つと、エイトは戦闘再開の狼煙を上げるように剣を振り下ろした。その刃を大刀で受け止めるライトだったが、ふと違和感に気付く。気づいた瞬間、ライトは心臓を撫でられるような危機感を覚え、全身を泡立たせる。
鎬を削りながら後方を振り向くと、そこには多くの敵に囲まれたハヤテの姿があった。思わずライトが歯を食いしばり、エイトを睨み据えると、彼は不気味に微笑んだ。
ハヤテを助けに行きたくとも、ライトはエイト一人を相手するので手一杯で、彼に背を向けた時点で勝敗は決してしまう。恐らく、最初から作戦だったのだろう。人数で圧倒的に不利な状況に追い込まれている二人は、どうしても戦闘中に視野が狭まってしまう。
それを利用し、ハヤテとライトを分断させ、多くの戦闘員をハヤテ一人に集中させることで、先にハヤテを落とす手筈なのだ。
その間ライトは、敵側で最も戦闘力の高いエイトが抑え込むことで、この作戦は成り立っている。
「ちっ……このくそ野郎ども」
思わず顔を顰めると、ライトは舌打ち交じりに呟いた。その罵倒が、少し離れた場所で奮闘するハヤテに届くことはない。
********
ハヤテは落ち着いていた。気味が悪いほどに。ハヤテ自身も、何故こんなに落ち着いているのか理解できない程に。
目の前の状況は最悪を極めているというのに、その実頭はとてもクリアで、冴えわたり、ただ目の前の憎き相手をべっこう色の瞳で捉えるのみ。
本人でも不可解に思うほどのハヤテの様子に、他人である彼らが不気味がらない道理はなく、父のソウセイは眉を顰めた。
「随分と落ち着いているじゃないか。ハヤテ。この状況が見えていないのか?」
「……あなたはいつも、俺から大事なものを排除しようとしましたね」
「?」
俯きがちに落ち着いた声音で発したハヤテに、ソウセイは訝しげな視線を向けた。その視線の理由を、ハヤテは理解していた。
ソウセイには、ハヤテの大事なものを排除した自覚がないのだ。母親のことも、ロクヤのことも、自分が正しいのだと信じて疑っていない。この一族における正解が、ハヤテにとっての正解ではないことをまるで理解していない。
そんなソウセイの心情を理解するつもりがなくとも、なんとなく察してしまうハヤテは、自嘲じみた声で続けた。
「あなたから親らしいことをされた覚えが、何一つありません。育てられたことも、教えを授けられたことも、やさしい声をかけられたことも、感情をぶつけられたことも、ぶたれたこともない……。
普通の幸せも、ロクヤも、仲間も……お母さんも。全部全部、あなたは俺から奪おうとする。……だからかもしれません。あなたは今初めて、俺自身を害そうとしている……この状況が、何故か途轍もなく落ち着くんです」
「……」
自嘲じみた笑みだというのに、何故かとても晴れやかな表情を浮かべると、ハヤテは彼しか持たない細く美しい剣を抜きなおした。
そのまま一気に駆け出すと、ハヤテは敵の一人に飛び掛かる。男の肩にその切っ先を突き刺すと、彼のうめき声と共に肩から緋色の糸が飛び出す。
そのまま糸を伸ばすと、ハヤテは目にも止まらぬ速さで別の敵の懐へ忍び寄った。切っ先から伸びた糸が敵の身体中に巻き付けられたかと思うと、糸の触れた箇所に切り傷が出来、プシャ……とあらゆる所から出血した。
先刻その剣を敵の肩に突き刺したことで、敵の体内のジルを糸が吸い込み、そのジルによって生じさせた衝撃波が、別の敵の身体を害したのだ。
それを繰り返すように素早い動きで敵を攪乱させるハヤテだが、やられっぱなしの相手ではない。ハヤテの素早い動きについていくことはできずとも、糸の浸食を妨害することはできる。
ジル術、剣撃を繰り出すことでハヤテの攻撃を少しでも遅らせようとした。
そんな彼らの攻撃をかわしながら、少しずつ糸を絡めるハヤテだったが、喉の奥が痞えたような違和感を覚えていた。
その痞えの原因は、敵の軍勢の後ろで様子を窺っているだけのソウセイにあった。ソウセイは元勇者であるエイトには及ばないものの、一族の中での戦闘能力は悪くない方だとハヤテは認識していた。そんな彼が加勢すれば、状況が二転三転する可能性もある。にもかかわらず、戦闘に参加せず、高みの見物を決め込んでいるソウセイに対し、ハヤテは奇妙な不快感を覚える。
そしてその不快な違和感は、早々に姿を現した。
「ハヤテ……お前は先刻こう言ったな。私はお前の大事なものを排除しようとすると……」
「?」
「正直驚いたよ。どうやらお前は、私よりも私のことを理解していたようだ」
「っ!?」
刹那、ハヤテはソウセイの身体から尋常ではない程強力なジルの気配を察知し、目を見開いた。明らかに彼自身の力によって生じたジルではなく、ハヤテはそのジルの発生源をたどる。
(なんだこの莫大なジルは……。明らかにこの人の術によるものじゃない…………っ!このジル……どこかで感じた覚えが……)
そう。それはハヤテの良く知るジルの波動だった。
いつも傍にいて、いつでも自身を守ってくれた、強く、温かく、優しいジルの波動。間違えるわけがなかった。
(これはチサトのジル……どういうことだ?……まさかっ!?)
ハヤテに分かったのは、今置かれている状況と、そこから推測されるごく僅かな情報のみ。
理由は定かではないが、今ソウセイの身体から感じられるジルはチサトが生み出し、ユウタロウが行使したもの。チサトのジルを行使できるのは、契約者であるユウタロウしかあり得ないからだ。
つまり、何らかの方法でユウタロウの攻撃を、ソウセイを経由してハヤテに放とうとしているということ。
(こんな悪趣味な技を実現できる人間なんて、一族に一人しかいない……)
ツキマの仕業だ――。
ハヤテがその結論に至った瞬間、ソウセイの身体から膨大なジルによる衝撃波が放たれようとした。
********
ソウセイがハヤテの行く手を阻む少し前のこと。ソウセイは事前にツキマからとある指示を受けていた。
『ソウセイ。これからユウタロウがスザクを取り戻すため、ここに乗り込んでくるだろう。その際、ユウタロウの相手は俺が務める。そこで一つ相談なのだが、ハヤテを大人しくさせるため、ユウタロウの力を利用してみないか?』
『どういうことでしょうか?』
『俺は一度だけ、敵の攻撃を別の場所のいる人間を通して移動させることが出来るんだ。つまり、俺が受けたユウタロウの攻撃を、お前に送り、ハヤテに向けることが出来る』
『よろしいのですか?』
『あぁ。ハヤテは強いからな。俺がお前の手助けをしてやろう』
この指示を受け、ハヤテの元へ向かったソウセイだったが、そこで想定外の事態が発生する。それが、ライトの介入だった。だがこれは、ソウセイにとって嬉しい誤算でもあった。
理由は簡単。ハヤテにユウタロウの攻撃を向けた場合、十中八九ライトが庇いに来るからだ。そうなった場合、ライトは戦闘不能に陥り、自分を庇ったことで仲間が倒れた事実は、ハヤテを使い物にならなくするだろう。
そうなれば、一つの攻撃で実質二人同時に伸すことが出来るため、ソウセイは一石二鳥だと考えたのだ。
だがソウセイは一つ、重大なミス――見落としをしていた。
それは、ソウセイがあることに気づけなかったという点だ。
ソウセイは気づけなかった。何故ツキマは、その技を一度しか行使できないのか。その理由を追求しようとしなかった。
その慢心が、自らを滅ぼすことになるとも知らずに――。
********
「っ……!?ハヤテっ……」
少し離れた場所からハヤテの危機を察知したライトは、焦ったように振り返る。対するエイトも、ソウセイとツキマの間で交わされた計画を知らなかったのか、訝しげな視線を彼らに向けていた。
その一瞬の隙を見逃さなかったライトは、目一杯の力を込めて大刀を振り上げた。エイトはその剣撃を剣で受け止めたが、受け止めきれずに体勢を崩した。そのままライトは一切逡巡する様子もなく、ハヤテの元へ駆けていった。
「おいライトっ!!」
鬼気迫るエイトの呼びかけにも応じず、ライトは必死に足を動かした。その実、彼の視界に映る世界は酷くスローモーションで、ハヤテに迫る危機が犇々と伝わってきていた。
精霊術師としてのユウタロウの攻撃を真面に浴びれば、まず普通の人間は助からない。だがライトの持つ大刀は、斬ったもののジルを奪うという特性を持っている。
衝撃波を斬ることができれば、そのジルを吸い込むことが出来るため、ライトはそこに勝機を見出したのだ。
「ハヤテっ!!!」
「っ!?ライトっ……?」
その鬼気迫る呼び声で、ようやくライトの存在に気付いたハヤテは、当惑気味に視線を移す。自らに迫る危機と、突然視界に飛び込んできたライトの存在に当惑するあまり、ハヤテの思考は上手く纏まらない。
そんなハヤテと、迫りくる衝撃波の間に割り込むと、ライトはその大刀を振り下ろして衝撃波を受け止めた。
「っ……くっ……」
何とか衝撃波を斬り裂こうとするライトだったが、彼が想定していた衝撃よりも遥かに強く、彼は顔を顰めた。それは、ライトがユウタロウの力を過少評価していたというわけではない。
(この力……まさかチサトのやつっ……!)
想定以上の威力を前に、ライトはチサトに生じたある変化に気付く。そしてそれは、ユウタロウとチサトに危機が迫っていることも意味していた。
だが、この状況で二人の心配をしている余裕はライトになく、歯を食いしばることしかできない。この衝撃波を斬ることは不可能だと悟ったライトは、衝撃波のジルを吸い込みつつ、方向をずらすことにした。
「っ……ぐぁああああああああああああああ!!」
衝撃波の向きを少し左側へずらしたかと思うと、ライトは衝撃波に押し負けたことで大刀と共に仰け反り、その半身に衝撃波を食らってしまう。
「ライトっ!!」
今にも崩れてしまいそうな相好でその名を呼ぶが、ハヤテも衝撃の余波によって後方に飛ばされてしまった。
「っ……ライ……ト…………?」
酷い耳鳴りと眩暈に襲われながらも、何とかライトの姿を探そうと、ハヤテは重い頭を上げた。土埃の立つ中、視界の端に倒れるライトの姿を見つけ、ハヤテは声を上げようとした。
だがその声が、ライトの名前を呼ぶことはなかった。
ライトの姿をはっきりと捉えた刹那、ハヤテはひゅっと息を呑む。
それはかつて目の当たりにした光景と酷似していた。
幼い頃、目の前で母を無残に殺されたあの日と同じ――。
――左上半身を裂かれ、血の海に溺れるライトを前に、ハヤテの瞳は再び絶望の色に染め上げられるのだった。
(なんなんだこの男は……)
勇者一族の屋敷にて。地面に尻餅をつきながら膝を震わせているその男は、怯え切った瞳でコニアを見上げた。
見たことも聞いたこともない、怪しげな術によって大量の刃物を出現させ、仲間の半数以上を戦闘不能にまで追い詰めたコニアは、彼らにとって脅威以外の何者でもない。
アデルを侮辱されたことでたかが外れてしまっているコニアは、普段の温かい表情からは想像もできないほど冷徹な眼差しで彼らを見下ろしていた。
最初の攻撃で意識を失わなかった残党たちは、筆をとるコニアに対して最大限の警戒を露わにする。そんな中、未だ戦意を喪失してはいなかった重鎮の一人が、コニアの攻撃を待たずして攻めに入る。
あの筆で刻まれた文字による攻撃が脅威であることは先の一撃で理解したが、要は文字を書かせなければいい話だと、その重鎮は解釈したのだ。
半紙の上で筆を走らせるコニア目掛け、重鎮は剣を振るおうとした。だが、彼は知らなかった。そんな自らを、遥か遠くから皿のような瞳で監視する人物がいることに。
「はぁっ!!」
ガキンっ!!
猛烈な勢いの何かに阻まれ、その刃がコニアの元に届くことはなかった。突然のことに目を回す重鎮に分かるのは、自らの手に酷い痺れが走っていることだけ。
当惑し、泳ぐ目で状況を確認すると、その手に剣は握られておらず、愛刀は地面に転がっていた。その上、衝撃を一身に受けた刀身は真っ二つにされていた。
あまりにも突然の出来事に重鎮が当惑していると、その間に作業を済ませたコニアは半紙を破り、それを彼らに向けて突き付ける。
「いやぁ、ほんとに助かるぜ。オイラ、この技なしじゃ碌に戦えないからなぁ。ナツメちゃん様様って感じだぜ」
ナツメの援護射撃に対する感謝を述べつつ、コニアは攻撃にかかった。だが、先刻のように半紙を突き付けられたというのに、彼らに対する攻撃手段が姿を見せない。
思わず彼らが首を傾げていると、それは前触れもなくやってきた。
「「っ!?」」
抗う隙を一切与えない、強烈な重みが彼らを襲う。まるで重力を何十倍、何百倍にもした力が襲っているかのようで、彼らはあっという間に地面に叩きつけられる。
起き上がろうとしても、身体はびくともしてくれず、まるで自分の身体が自分の物ではないような感覚に陥る。それどころか、自らを押しつぶす圧力はどんどん増していき、仕舞いには地面に窪みができるほど。
地面に埋めこまれてから数十秒後。とうとう意識を保つ者は消失してしまい、全員が戦闘不能に陥るという結果になった。
「うっし……。倒したはいいけど、オイラこっからどうやって脱出すればいいんだ?」
コニアは首を傾けつつ、地面に転がる彼らを白い目で眺めた。レディバグ序列一位であるところの、あのリオでも脱出困難な結界をコニアが破るというのは困難を極める。
コニアは己の最大の武器――その半紙と筆に視線を落とすと、自分にできることを模索し、熟考するのだった。
********
ハヤテ、ライトによる、一族との戦いはまさに熾烈を極めた。ハヤテとライトは二人で、彼らの父を含めた重鎮、騎士団の軍勢を相手にしている為、彼らの攻防は亀の歩みのような進展しかしていない。
一人一人の実力差でいえば、ハヤテとライトが勝っているのだろう。だが、彼らは腐っても勇者一族、そして騎士団である。血の滲むような訓練を幼少から施されている点は同じ。
そんな相手に数で負けている以上、敵の戦力を削ることは困難を極めた。少しずつ、少しずつ、戦闘能力で劣る敵から戦闘不能に追い詰めてはいるものの、長時間の戦闘は二人の体力を無慈悲に蝕んでいく。
「はぁっ……はぁっ……」
「諦めが悪いな、ライト。降参してロクヤの居所を吐けば許してやると、再三の慈悲を与えているというのに」
「はっ」
自慢の大刀を構えながら息を切らすライトを前に、父であるエイトは忌々し気に呟いた。その声音は威圧感と平静を纏っているが、長時間の戦闘による疲労により、少し声が上がっている。恐らく、体力を少しでも回復させるために、エイトは彼に話しかけたのだろう。
相変わらず高圧的な父を前に、乾いた笑い声を漏らしたライト。
「その慈悲ってやらを、ロクヤに向ける気はねぇんですかね」
「弱者に与える慈悲などない」
「はっ、それが先代勇者の吐く台詞かよ……弱きを助け強きを挫くが、あんたらの崇拝する勇者のあるべき姿じゃねぇのかよ」
「その通りだ。だがその弱き者に、一族の人間は含まれない。誇り高き勇者一族の人間として生まれた以上、いかなる理由があろうとも弱者として生きることを許すことはできない。一族の人間は強き者として、弱者を守り悪魔を討伐することが使命なのだからな」
そう言い放つと、エイトは戦闘再開の狼煙を上げるように剣を振り下ろした。その刃を大刀で受け止めるライトだったが、ふと違和感に気付く。気づいた瞬間、ライトは心臓を撫でられるような危機感を覚え、全身を泡立たせる。
鎬を削りながら後方を振り向くと、そこには多くの敵に囲まれたハヤテの姿があった。思わずライトが歯を食いしばり、エイトを睨み据えると、彼は不気味に微笑んだ。
ハヤテを助けに行きたくとも、ライトはエイト一人を相手するので手一杯で、彼に背を向けた時点で勝敗は決してしまう。恐らく、最初から作戦だったのだろう。人数で圧倒的に不利な状況に追い込まれている二人は、どうしても戦闘中に視野が狭まってしまう。
それを利用し、ハヤテとライトを分断させ、多くの戦闘員をハヤテ一人に集中させることで、先にハヤテを落とす手筈なのだ。
その間ライトは、敵側で最も戦闘力の高いエイトが抑え込むことで、この作戦は成り立っている。
「ちっ……このくそ野郎ども」
思わず顔を顰めると、ライトは舌打ち交じりに呟いた。その罵倒が、少し離れた場所で奮闘するハヤテに届くことはない。
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ハヤテは落ち着いていた。気味が悪いほどに。ハヤテ自身も、何故こんなに落ち着いているのか理解できない程に。
目の前の状況は最悪を極めているというのに、その実頭はとてもクリアで、冴えわたり、ただ目の前の憎き相手をべっこう色の瞳で捉えるのみ。
本人でも不可解に思うほどのハヤテの様子に、他人である彼らが不気味がらない道理はなく、父のソウセイは眉を顰めた。
「随分と落ち着いているじゃないか。ハヤテ。この状況が見えていないのか?」
「……あなたはいつも、俺から大事なものを排除しようとしましたね」
「?」
俯きがちに落ち着いた声音で発したハヤテに、ソウセイは訝しげな視線を向けた。その視線の理由を、ハヤテは理解していた。
ソウセイには、ハヤテの大事なものを排除した自覚がないのだ。母親のことも、ロクヤのことも、自分が正しいのだと信じて疑っていない。この一族における正解が、ハヤテにとっての正解ではないことをまるで理解していない。
そんなソウセイの心情を理解するつもりがなくとも、なんとなく察してしまうハヤテは、自嘲じみた声で続けた。
「あなたから親らしいことをされた覚えが、何一つありません。育てられたことも、教えを授けられたことも、やさしい声をかけられたことも、感情をぶつけられたことも、ぶたれたこともない……。
普通の幸せも、ロクヤも、仲間も……お母さんも。全部全部、あなたは俺から奪おうとする。……だからかもしれません。あなたは今初めて、俺自身を害そうとしている……この状況が、何故か途轍もなく落ち着くんです」
「……」
自嘲じみた笑みだというのに、何故かとても晴れやかな表情を浮かべると、ハヤテは彼しか持たない細く美しい剣を抜きなおした。
そのまま一気に駆け出すと、ハヤテは敵の一人に飛び掛かる。男の肩にその切っ先を突き刺すと、彼のうめき声と共に肩から緋色の糸が飛び出す。
そのまま糸を伸ばすと、ハヤテは目にも止まらぬ速さで別の敵の懐へ忍び寄った。切っ先から伸びた糸が敵の身体中に巻き付けられたかと思うと、糸の触れた箇所に切り傷が出来、プシャ……とあらゆる所から出血した。
先刻その剣を敵の肩に突き刺したことで、敵の体内のジルを糸が吸い込み、そのジルによって生じさせた衝撃波が、別の敵の身体を害したのだ。
それを繰り返すように素早い動きで敵を攪乱させるハヤテだが、やられっぱなしの相手ではない。ハヤテの素早い動きについていくことはできずとも、糸の浸食を妨害することはできる。
ジル術、剣撃を繰り出すことでハヤテの攻撃を少しでも遅らせようとした。
そんな彼らの攻撃をかわしながら、少しずつ糸を絡めるハヤテだったが、喉の奥が痞えたような違和感を覚えていた。
その痞えの原因は、敵の軍勢の後ろで様子を窺っているだけのソウセイにあった。ソウセイは元勇者であるエイトには及ばないものの、一族の中での戦闘能力は悪くない方だとハヤテは認識していた。そんな彼が加勢すれば、状況が二転三転する可能性もある。にもかかわらず、戦闘に参加せず、高みの見物を決め込んでいるソウセイに対し、ハヤテは奇妙な不快感を覚える。
そしてその不快な違和感は、早々に姿を現した。
「ハヤテ……お前は先刻こう言ったな。私はお前の大事なものを排除しようとすると……」
「?」
「正直驚いたよ。どうやらお前は、私よりも私のことを理解していたようだ」
「っ!?」
刹那、ハヤテはソウセイの身体から尋常ではない程強力なジルの気配を察知し、目を見開いた。明らかに彼自身の力によって生じたジルではなく、ハヤテはそのジルの発生源をたどる。
(なんだこの莫大なジルは……。明らかにこの人の術によるものじゃない…………っ!このジル……どこかで感じた覚えが……)
そう。それはハヤテの良く知るジルの波動だった。
いつも傍にいて、いつでも自身を守ってくれた、強く、温かく、優しいジルの波動。間違えるわけがなかった。
(これはチサトのジル……どういうことだ?……まさかっ!?)
ハヤテに分かったのは、今置かれている状況と、そこから推測されるごく僅かな情報のみ。
理由は定かではないが、今ソウセイの身体から感じられるジルはチサトが生み出し、ユウタロウが行使したもの。チサトのジルを行使できるのは、契約者であるユウタロウしかあり得ないからだ。
つまり、何らかの方法でユウタロウの攻撃を、ソウセイを経由してハヤテに放とうとしているということ。
(こんな悪趣味な技を実現できる人間なんて、一族に一人しかいない……)
ツキマの仕業だ――。
ハヤテがその結論に至った瞬間、ソウセイの身体から膨大なジルによる衝撃波が放たれようとした。
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ソウセイがハヤテの行く手を阻む少し前のこと。ソウセイは事前にツキマからとある指示を受けていた。
『ソウセイ。これからユウタロウがスザクを取り戻すため、ここに乗り込んでくるだろう。その際、ユウタロウの相手は俺が務める。そこで一つ相談なのだが、ハヤテを大人しくさせるため、ユウタロウの力を利用してみないか?』
『どういうことでしょうか?』
『俺は一度だけ、敵の攻撃を別の場所のいる人間を通して移動させることが出来るんだ。つまり、俺が受けたユウタロウの攻撃を、お前に送り、ハヤテに向けることが出来る』
『よろしいのですか?』
『あぁ。ハヤテは強いからな。俺がお前の手助けをしてやろう』
この指示を受け、ハヤテの元へ向かったソウセイだったが、そこで想定外の事態が発生する。それが、ライトの介入だった。だがこれは、ソウセイにとって嬉しい誤算でもあった。
理由は簡単。ハヤテにユウタロウの攻撃を向けた場合、十中八九ライトが庇いに来るからだ。そうなった場合、ライトは戦闘不能に陥り、自分を庇ったことで仲間が倒れた事実は、ハヤテを使い物にならなくするだろう。
そうなれば、一つの攻撃で実質二人同時に伸すことが出来るため、ソウセイは一石二鳥だと考えたのだ。
だがソウセイは一つ、重大なミス――見落としをしていた。
それは、ソウセイがあることに気づけなかったという点だ。
ソウセイは気づけなかった。何故ツキマは、その技を一度しか行使できないのか。その理由を追求しようとしなかった。
その慢心が、自らを滅ぼすことになるとも知らずに――。
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「っ……!?ハヤテっ……」
少し離れた場所からハヤテの危機を察知したライトは、焦ったように振り返る。対するエイトも、ソウセイとツキマの間で交わされた計画を知らなかったのか、訝しげな視線を彼らに向けていた。
その一瞬の隙を見逃さなかったライトは、目一杯の力を込めて大刀を振り上げた。エイトはその剣撃を剣で受け止めたが、受け止めきれずに体勢を崩した。そのままライトは一切逡巡する様子もなく、ハヤテの元へ駆けていった。
「おいライトっ!!」
鬼気迫るエイトの呼びかけにも応じず、ライトは必死に足を動かした。その実、彼の視界に映る世界は酷くスローモーションで、ハヤテに迫る危機が犇々と伝わってきていた。
精霊術師としてのユウタロウの攻撃を真面に浴びれば、まず普通の人間は助からない。だがライトの持つ大刀は、斬ったもののジルを奪うという特性を持っている。
衝撃波を斬ることができれば、そのジルを吸い込むことが出来るため、ライトはそこに勝機を見出したのだ。
「ハヤテっ!!!」
「っ!?ライトっ……?」
その鬼気迫る呼び声で、ようやくライトの存在に気付いたハヤテは、当惑気味に視線を移す。自らに迫る危機と、突然視界に飛び込んできたライトの存在に当惑するあまり、ハヤテの思考は上手く纏まらない。
そんなハヤテと、迫りくる衝撃波の間に割り込むと、ライトはその大刀を振り下ろして衝撃波を受け止めた。
「っ……くっ……」
何とか衝撃波を斬り裂こうとするライトだったが、彼が想定していた衝撃よりも遥かに強く、彼は顔を顰めた。それは、ライトがユウタロウの力を過少評価していたというわけではない。
(この力……まさかチサトのやつっ……!)
想定以上の威力を前に、ライトはチサトに生じたある変化に気付く。そしてそれは、ユウタロウとチサトに危機が迫っていることも意味していた。
だが、この状況で二人の心配をしている余裕はライトになく、歯を食いしばることしかできない。この衝撃波を斬ることは不可能だと悟ったライトは、衝撃波のジルを吸い込みつつ、方向をずらすことにした。
「っ……ぐぁああああああああああああああ!!」
衝撃波の向きを少し左側へずらしたかと思うと、ライトは衝撃波に押し負けたことで大刀と共に仰け反り、その半身に衝撃波を食らってしまう。
「ライトっ!!」
今にも崩れてしまいそうな相好でその名を呼ぶが、ハヤテも衝撃の余波によって後方に飛ばされてしまった。
「っ……ライ……ト…………?」
酷い耳鳴りと眩暈に襲われながらも、何とかライトの姿を探そうと、ハヤテは重い頭を上げた。土埃の立つ中、視界の端に倒れるライトの姿を見つけ、ハヤテは声を上げようとした。
だがその声が、ライトの名前を呼ぶことはなかった。
ライトの姿をはっきりと捉えた刹那、ハヤテはひゅっと息を呑む。
それはかつて目の当たりにした光景と酷似していた。
幼い頃、目の前で母を無残に殺されたあの日と同じ――。
――左上半身を裂かれ、血の海に溺れるライトを前に、ハヤテの瞳は再び絶望の色に染め上げられるのだった。
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2019年 5月。第8巻
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