65 / 65
15−4【終】
しおりを挟むリカルドは、愛し始めると本当に長い。
空が白むまで、何度も何度もセレスティナを求め続ける。
〈糸の神〉と〈処女神〉の加護が巡り会ったことで、セレスティナは体内から作りかえられている。数多の適性を授かった影響か、以前よりも体力は大幅に増えたけれども、それでも最後までは難しい。
最終的に全身にぴくりとも力が入らなくなって、ベッドにその身体を預けていた。
リカルドはその後も、セレスティナをゆっくり貪ったり、ただただ撫でながら愛でたり、眠るセレスティナの顔をじっと眺めて楽しんだり――それはもう、引き続きたっぷりと愛されているようだけれども、この日はちょっとだけ違った。
「いつか――」
セレスティナのお腹を撫でながら、ゆっくりと未来を語る。
「いつか、ここに。あなたとの愛の結晶が宿る日が来るのだろうか」
セレスティナは瞬いた。
だって。まさか。
まさかリカルドがそんな話をしてくるだなんて。
「…………怖い?」
「いや」
彼はことさら、セレスティナとふたりきりになることにこだわり続ける。
もちろん、こうして直接愛を注がれては、いつかそれが芽吹く日もあるだろうと、互いに覚悟をしているけれど。
それでも、リカルドは、いつか来るその日を恐れもしているのかと思っていた。
第一降神格は子ができにくいと聞く。
正確には、授かるまでに時間がかかった子は、高位の加護を持って生まれやすいと。
第一降神格の子は第一か第二か、高位加護を授かることが多いため、結果的にやきもきする親も多いという。
ことリカルドに限れば、ある種、心の準備ができる期間になるのではと、思っていたけれど。
「――それも、悪くないかと、最近は思う」
はらりと、隣に横たわる彼の前髪が流れた。
そのときの瞳。黒曜石の奥に、赤く鈍い輝きを宿している。
ゾクゾクした。
多分、悪くないという言葉は嘘ではないと思う。
でもきっと、それだけが真実ではない。
お腹をなぞる彼の手が、じっとりとした感情を孕んでいる。
おそらく。
きっと。
子供ができたら、もっとセレスティナを縛れると思っているのだろう。
子供のことよりも、セレスティナ本人を。
血という絆で。
(でも――――)
悪くないと思う。
だって、セレスティナもリカルドも、まだまだ変化の途中だ。
これまでリカルドは、たくさんの変化を見せてくれたから。きっと。もっと。変わっていくのだろう。互いに――。
この屋敷から見た遠くの景色を思い出す。
はじめてあの景色を見たとき、セレスティナは希望を見つけた。
きっと彼との未来はいいものにできると、予感めいたものすら感じた。
今だってそうだ。
セレスティナと、リカルドと――もしかしたら新しい命も迎えて。
きっと素敵な家族になれるとセレスティナは思う。
たっぷりリカルドとの生活を楽しんで2年後、セレスティナたちは第1子を授かることになる。
リカルドは大層不安がっていたが、産まれてきた子供がセレスティナ似の可憐な女の子で、大いに喜ぶことになる。
セレスティナをとられて少し寂しそうな表情も見せることもあったが、それでもリカルドは家族の愛情というものを知り、はにかむような笑顔を見せることが増えた。
それから立て続けに男の子が2人産まれて、微笑みの絶えない家になったという。
リカルドはフォルヴィオン帝国の守護神として名を馳せたが、彼の存命中、大きな戦は起こらなかったという。
彼がいる、という存在だけで、他国が一切手を出してこなかったからだ。
リカルドの勤務態度は――まあ、及第点か? と呼べる程度のものではあったようだが、そこはお目こぼしだ。
やがて妻だけでなく、娘にも勤務態度を咎められ、焦る姿もあったようだが、それすらも周囲に微笑ましく見守られ、幸せに暮らしたそうな。
~おしまい~
1,256
お気に入りに追加
2,264
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(20件)
あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
最後の「くらしたそうな」が日本昔話を思い出しました
㊗️完結おめでとう🎊御座います🍾大変面白かったです。セレスティナとリカルドが幸せになれてよかったです。碌でもない王太子との結婚で大変な思いをしたセレスティナだけど家族やリカルドに愛されていて本当に良かったです。あのまま監禁されて魔力を奪われ続けたら死んでいたかもしれませんね。何も考えていない馬鹿だからできた所業でしょうね。次の作品も楽しみしています。これからも応援していまのすので頑張って下さいね♪
ありがとうございます💕
重たい事情がある人たちが全部丸ごと幸せになる話が大好物ですので、気に入っていただけて何より!
私も書いていて楽しかったです😚💕
これからも楽しく創作を続けて参りますので、投稿した折はお付き合いいただけると嬉しいです🙇♀️✨
楽しかった〜😆
子供ちゃんも産まれてよかったね✨
最後までお読みくださり、ありがとうございます💕
お子もわちゃわちゃ賑やか家族で、「俺にこんな人生があるなんて…」と、リカルド本人も、思い返すたびにめちゃくちゃびっくりしてそうですよね😂
楽しんでいただけて何よりでした〜🩷嬉しい!!!