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「ん。ティナ。おいで」

 ああ、この仕草だけで何を求めているのかわかってもらえた。
 それがとても嬉しくて、セレスティナはさらに腕を伸ばす。そんなセレスティナを支えるように彼自身も腕を伸ばし、ゆっくりとセレスティナの身体を引き上げてくれた。

 胡座をかいた彼の上に跨がる形で、セレスティナは彼に抱きついた。
 ああ、この体勢だと身体がぴったりとくっつけられる。細身だが、しっかりとした筋肉の付いた彼の身体は逞しく、抱きしめられているととても心地がいい。
 全てを預けたくなってしまいぎゅうぎゅうとしがみつくと、リカルドが幸福そうに息を吐く。

「そんなに可愛いことをされたら、俺は」
「いいのよ? こうしてぎゅってしてくれてたら。激しくしてくれて」
「だが……」

 今日は優しくする。そう宣言したことを危惧しているのだろう。
 だからセレスティナはふふふと微笑み、彼の耳元でそっと囁く。

「あなたの愛を知りたいの。――教えて?」

 リカルドがバッと顔を上げた。目をまん丸にして、頬を紅潮させている。
 セレスティナの言葉を噛みしめ、理解をし、次の瞬間には欲望を瞳に宿らせる。

「…………そんなに煽って。怖く、ないのか?」
「全然。あなただもの」

 望む所よ、とキスをするなり、彼からも強く抱きしめられる。かと思えば下から激しく突き上げられ、その衝撃にのけ反った。
 これまで余程我慢していたのだろう。溜め込んでいた欲望をぶつけるように、何度も何度も穿たれる。その度に強すぎる刺激がセレスティナを支配する。
 もう幾度も達した身体は敏感になっていて、激しいまぐわいにすぐに達してしまいそうだ。

「ぁ、あんっ、リカルド、リカルド……!」

 振り落とされないように強くしがみつき、無意識のうちに彼の首元にいくつもキスを落とす。それが余計に火を付けたらしく、リカルドもセレスティナをかき抱いた。
 互いの身体がじっとりと汗ばむ。繋がっている部分は焼けるように熱く、でも、その熱が気持ちいい。

 肌がぶつかる音、同時に微かな水音が漏れ聞こえ、接合部が愛液でぐちゃぐちゃになる。
 互いが汚れることなど厭わずに、ふたりでその快楽に溺れ合う。
 前後不覚になるほどに激しく突き上げられ、いよいよ我慢しきれなくなった。

「あ、リカルド! わたし、もう……」
「くっ、はぁ……ああ! イけ。いくらでも、イけ。俺も……っ」

 彼も堪えきれなくなったのか、荒く息を吐いた。
 ギュウギュウに眉間に皺を寄せ、イく、と短く言葉を切って――。

「あ、ああ――――っ!」
「くっ――――!」

 チカチカと視界が弾けたのと、体内に熱が吐き出されたのを感じたのは同時。
 真っ白い波に呑まれ、セレスティナは己の身体を支えることもできずに崩れ落ちる。それをリカルドに強く抱きとめられ、びゅくびゅくと、彼のモノが脈動しているのを感じていた。

 息が荒い。
 ずっと求めていたものが満たされるような感覚に包まれ、心地のいい疲労感に襲われる。
 ドクドクと、互いの心音を感じながら、ずっと身を寄せあっていた。

「愛してる」

 ふと。
 リカルドが、耳元で呟く。

「あなたが、好きだ。ずっと。こうして抱きしめていたい」

 それは無意識にこぼれ落ちた言葉だったのだろう。
 吐き出したあとに、リカルド自身がハッとしている。
 溢れた想いが嬉しくて、セレスティナもギュウギュウに彼のことを抱きしめた。

 リカルドは全然わかっていない。
 彼は、セレスティナを捕らえて、離さないと言っている。
 でも、それはセレスティナも同じだ。

 セレスティナは彼を求めることを諦めない。
 それは、生まれてこのかた諦めることに慣れてきたはずのセレスティナに芽生えた、はじめての感情だった。
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