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6−7 *
しおりを挟むだって、彼はセレスティナを不幸にしたくないと言った。
セレスティナを突き放したのも、やっぱりセレスティナのため。神の意志に逆らってまで、セレスティナを逃がそうとしてくれた。
でも、最初からそんな必要はないのだ。
だって、セレスティナは彼のものになりにきた。
セレスティナはリカルドの元へ輿入れして、自分も、彼も、一緒に幸せになるためにやってきた。
彼の渇望を満たせるのはセレスティナだけ。
セレスティナは今、ようやく自分の存在意義を見つけた。
嬉しくて目を細める。
蕩けるような微笑みが溢れると、リカルドが呆けるように目を丸くした。
身体の力が抜けたのか、今なら、セレスティナでも彼を抱き寄せられる。そうして、ぎゅっと強く抱き寄せ、近付いてきた彼の唇にセレスティナからキスをした。
くっつけるだけの優しいキス。でも、これがセレスティナの真心だった。
「大丈夫。奪ってください」
「………………そん、な」
リカルドが震えた。恐れるような目を向け、身体を離そうとするも、離してあげない。
「どうぞ捕らえて、閉じ込めて、ぶつけてください。好きなだけ」
「セレスティナ姫……」
ああ、と思う。
ようやく彼が名前で呼んでくれた。
それが嬉しくて、セレスティナは目を細める。
「どうか、ティナと。もう、あなたの妻なのですから」
彼と家族になりたい。
祖国の家族は、皆、セレスティナのことを愛称で呼んでくれた。
〈処女神〉の名を授かった自分じゃない。セレスティナ自身のことを見つめてくれているようで、それがとても嬉しかったのだ。
だから彼にも――と、どうしても望んでしまう。
「……………………ティナ」
掠れた声で囁かれ、セレスティナは満面の笑みを浮かべた。
瞬間、リカルドはうっと口を噤む。かと思えば、もう我慢できないとばかりに激しく腰を振りはじめる。
「ティナ! っ、ああ、ティナ……っ!」
「ぁぁぁんっ!」
すっかり火照ったセレスティナの身体も、彼の与える刺激がそのまま快楽に変換されるようになっていた。
簡易ベッドがギシギシ揺れる。この音が、声が、外に漏れることまで意識が回らない。セレスティナはリカルドが与えてくれる刺激を受けとめるのでいっぱいいっぱいだった。
ザッと意識が白に塗りつぶされ、呼吸することもできない。
同時に、どくんっ、とお腹の奥で何かが脈動したのがわかった。
堰が切れたかのように、びゅくびゅくと熱いモノが流れ込んでくる。
セレスティナはなすがまま、ただただその熱を受けとめた。
お腹の奥がかき混ぜられるような感覚がある。
ああ、これは魔力だ。リカルドの魔力が、直接セレスティナに注がれている。
長く、体内を巡る魔力の存在を感じることすらできなかった。けれども、彼の魔力に包まれ、セレスティナは目を閉じる。
深くて、暗くて、重くて、熱い。
けっして、温かくも優しくもない何か。
でも、今はこの魔力が愛しい。
だからセレスティナは、彼の精と共に、その魔力をも全部受けとめた。
きっとひどい顔をしている。髪はボサボサだし、ドレスも二度と着られないほどにビリビリに引き裂かれたものが、かろうじて引っかかっているだけ。むしろ、取り払ってしまった方がいいだろうに、もう指一本動かせない。
リカルドの腕の中。互いの心臓がバクバクと鼓動しているのがわかる。
痛みは快楽へ。そしてその快楽も、今は心地よさへと変化している。
セレスティナは無意識に、彼の胸元にキスを落とす。だって、もっと彼の温もりを感じていたかったから。
――――でも、それがいけなかったらしい。
むくりと、腹の奥で何かが首をもたげるのがわかった。
一度力を取り戻すと、その何かはムクムクと大きく、硬くなる。あっという間に、セレスティナのナカで、彼のモノが力を取り戻したことを悟った。
「さて、ティナ」
「あ、あ……」
「言いましたよね。好きなだけぶつけてくれと」
「それ、は……」
言った。確かに言ったけれどもだ。
たった一回でセレスティナの体力は根こそぎ持っていかれた。
セレスティナは甘く見ていたのだ。この行為にどれほどの体力が必要なのか。そして、リカルドの執着――ついでに言えば、絶倫具合も。
「俺は、あなたを逃がさない」
リカルドの瞳が怪しく光る。
結局、セレスティナは意識を失うまで――いや、失ってからも、延々と彼に貪り続けられたのだった。
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