【R18】愛されないとわかっていても〜捨てられ王女の再婚事情〜

浅岸 久

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 ひとりはセレスティナとよく似た色彩の女だった。銀髪に近いプラチナブロンドを振り乱し、騎乗位で激しく腰を振っている。
 ただ、色彩こそ似ているが、見た目はまるで異なる。華奢な印象のセレスティナとは対照的に、身体のくびれがはっきりとした妖艶な大人の女性だ。

 そしてその下から彼女を突き上げている男性こそが、今夜、セレスティナと結ばれるはずの夫ラルフレットその人で――――。

「…………」

 セレスティナは言葉を失った。
 今、目の前で何が起きているのか。
 結婚式。ようやく会えた。素敵な旦那さま。
 セレスティナは彼に夢を抱き、すでに恋心に近い想いを抱いていて。
 今宵、彼とどんな夜を過ごすのだろうと考えると、胸がどきどきして、期待してどうしようもなかったはずなのに。
 どうしてその旦那さまが、自分とは別の女性を抱いているのだろう――。



「――――あら?」

 そして、先にセレスティナの存在に気がついたのは、女性の方だった。
 女はゆっくりとこちらに振り返り、妖艶な瞳をふふふと細める。
 その表情には、勝ち誇ったような笑みが浮かんでいた。

 まるでセレスティナが来るのがわかっていたかのような余裕に見えた。
 額に浮かんだ汗は、これまで彼女がどれほどまでに激しくラルフレットと交わっていたのかを証明している。

「いらっしゃいましたわよ、妃殿下が」
「妃殿下? ――ああ、アレか。こんな時にやってくるとは、随分と無粋な女だな」

 底冷えのするような冷たい声だ。
 興ざめだ、と言わんばかりの表情でこちらに視線を向けながら、ラルフレットは上半身を起こす。

「なんだ? 初夜だからとやってくれば、私に抱いてもらえるとでも思ったか? 勘違いも甚だしい」

 吐き捨てるように告げ、ラルフレットはすぐにこちらへの興味をなくした。そして、ごく自然に目の前の女性の背中を撫でる。
 長い指が愛おしそうに彼女の身体をなぞり、やがて臀部に触れた。そのまま何度か揉み拉くと、女は「もう、殿下ったら!」と頬を真っ赤に染める。
 そうして、セレスティナに見せつけるように、深いキスをした。

 永遠とも感じる長い時間、セレスティナは縫いつけられたようにその場から動けなかった。
 まともに呼吸することすらできない。
 心臓の音が妙に早く聞こえるけれど、体温がゾッとするほどに冷たい。指先が凍えるほどに冷え、震える己の身体を抱きしめることもできない。

「出来損ないの半神の加護持ちなどいらん。汚らわしい」
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