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本編

ep04_2

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「お前さんほんとうに平和だな。チクショウ……調子狂うぜ」
「うーん。まあ、そういう性格なんで」
「召喚されてかわいそうだとか思ってたが、同情する気も失せるっつうか」
「あはは。でも……まだ現実味がないせいだと思います」
「ああ……それもそうか」

 なんて、あたしの言葉にすぐ納得してくれるあたり、優しいんだなーとか。

「ただ、ギリアロさん巻き込んだのは、申し訳ないって思ってますよ?」
「そりゃそうだ。とんだとばっちりだ!」
「だから、ごめんなさいって! あっ、でも、辞退されるのはこまるので、このままつきあってくれると助かります」
「はあ!? いやいやいや、説明があったろ。この国には、男がありあまってんだ。愛し子さまの婿になりたいヤツなんざ、いくらでもいる」

 うーん。こんな小娘なのにね。
 でも、召喚されたあの部屋で、目をギラギラさせたひとに取り囲まれたから、わかる。ギリアロさんの言葉は嘘じゃないんだと思う。

「でも、あたし、ギリアロさんがいいし」
「…………はあ? な、なに言ってるか……わかってんのか……?」

 ギリアロさんてば、頬がピクピクしてる。
 信じられないって顔しててさ。

「ずうずうしいのわかって言いますけど、あたし、たまたま抱きついたのがギリアロさんでよかったーって思ってますよ?」
「っ、な、なにを……」
「ギリアロさん、なんかユルいし。気を遣わなくていいし」
「おい」
「ふふっ」

 冷静なつっこみ入ったけど、嘘じゃないもんね。
 ってか、他のイケメンだったら、あたしのほうがこのベッド入っていられないって! ……なんて、さすがにデリカシーないから言わないけど。

「居心地いいっていうか。ギリアロさんとなら、一緒に住むイメージができるというか」
「……っ」
「たしかにいきなり夫婦って言われたら戸惑いますけど。あ、でも、ギリアロさんとならえっちできますよ、たぶん」
「お、おいっ……!」

 あはははは、顔真っ赤だ。
 なるほどなー。こういうこと考えるの、ちょっと悪趣味かもだけど、あたしわかったよ。ギリアロさん、いい歳だけど童貞だな? 多分。

「ちなみに聞いておきますけど、ギリアロさん、彼女さんいますか?」
「はあ? 彼女……?」
「……恋人というか。えっ、まさかその概念からなかったりする? この世界?」
「いや。恋人がいる野郎は、いなくもねえぞ。……限りなく少ないが」
「ギリアロさんは?」
「…………」

 いない、と。なるほど。
 今日聞いたこの国のこと考えたら何も不思議じゃないもんね。
 女のひとって、だいたい成人と同時に結婚するみたいだし。男と女が4:1――うん。結婚してない男のひとは、童貞多いのかもしれない。女のひととも、ほんっとに話すことないんだろうなー、この様子じゃ。

「いないのだったら、あんまり気負わなくていいかな。よかった」
「いやいや」
「あ、でも。ギリアロさんも被害者だし、別に無理して旦那さんしようとしてもらわなくてもいいです。書面だけ? うーん……ふりだけ? してもらえれば」

 うん、気になってたのはこれなんだよね。
 あたしは、ギリアロさんのことけっこー気に入った。夫婦、できると思う。
 でも、あたしだけがよくてもさ? ギリアロさんがヤだったら、申し訳ないなって思うもん。

「あたしのこと利用してくださいよ。愛し子、この国にとって大事なんでしょ? 
 だから、お金か、権力か、休みか……ギリアロさんがほしいのがなんなのかわかんないですけど、愛し子の配偶者として? ええと、護人でしたっけ? そういうので、交渉の材料になりません?」
「……お、お前さん……」
「割り切って利用してもらった方が、あたしも気が楽なので。――ね?」
「…………女か、ほんとに……?」
「はあ???」

 そこに驚かれる?
 いやいや、女ですけど。どうみても。

「おっぱい見ます?」
「っ!? いい!! ヤメロ!!」
「あはは。というわけです。細かい生活のルールは追々話しあってくことにして、今日はもう寝ましょ。つかれたー!」

 そういって、あたしは布団のなかでのびをして――ギリアロさんに背を向ける。

「ふぁ……おやすみ、なさーい」

 あ、電気。じゃないか。照明器具? 消しといてー……なんて言ってたら、ふわふわーってして。そのまま寝ちゃった。
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