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本編
ep04_夫婦と言われると戸惑うけど、えっちはふつーにできそう。
しおりを挟む……かわいそうなオッサンが、お部屋に押し戻されたそのあとの話するね?
「クソ……酒もねえし……やってられるか、こんなの」
オッサンてば、めちゃくちゃやさぐれてる。……まあ、気持ちはわからないでもないけどさ。
「ぷっ……」
「クソ。俺は見せ物じゃねえぞ」
「ふ、ふふふっ……寒くないです?」
「寒ぃーよ。クソ」
「じゃ、こっち来たらいいじゃないですかー。湯冷めしますって」
オッサンってば、ひとりテーブルの方に腰かけて、やるせない気持ちを発散できずにいるんだろうねえ。
……パンツ一丁で。
結局あのあと、オッサンってば自宅に帰るのに失敗して、諦めて順番にお風呂に入って今に至るって感じ。
で、あたしは広々ベッドでゴロゴロしてるんだけど、オッサンは遠慮したままなんだよねえ。
オッサン風呂ってる間に、今日着てた服も持ってかれちゃってたからね……。絶対逃がさないっていう圧を感じるよね、圧を……。
でもさ、こっちの世界の男性下着が、見慣れたトランクスみたいなのでよかったよ。
お父さん生きてたころとか、家でしょっちゅーパンいち見てたし。大事なところ隠れてたらそんなに気にならない。すね毛ぼーぼーも慣れたものだよ。
あたしの方はね? すっけすけパジャマというかベビードール? ……はさすがにどーなんだってことで。
なんと、オッサン――もとい、ギリアロさんてば、自分用のパジャマをあたしに貸してくれたの。で、自分はパンいちで我慢してくれてるってわけ。
ほんと、ギリアロさんって、なんだかんだ気をつかってくれるよね。エラいひとっぽいのに、ぜんぜんエラそうじゃないし。
そういうわけで、あたしはオッサンに敬意を表して、しっかり心の中でもギリアロさんって呼ぶことにした。一応、夫婦らしいし?
「もー! ほんとに、ギリアロさんってば風邪ひきますよ? 諦めてあたしと作戦会議しましょうよ」
「はあ? 作戦会議だあ?」
「そ。いちおー夫婦になったみたいだし、互いに快適に生活するための作戦会議。必要でしょ?」
「そこでか?」
「うん、ここで。ほんっとに風邪ひきますよ?」
「……」
なんて、ギリアロさんのほう向くと、ギリアロさんてばあいっかわらず額に手をあててヤレヤレってしてる。今日何回目だろ。
でも観念したのか、パンいちでこっちにすたすた歩いてきた。
「……」
……うーん。
マジマジ見て思うけど、ギリアロさん、ひょろっとしてるって思ってたけど、脱いだらソコソコ筋肉あるね?
すね毛ボーボーなところとか、わりかしポイントたかいよ? 親近感ポイント。
ホント日本人みたいな体つきしてるね。
年相応のちょっとしたたるみはあるかもだけど、鍛えてる? けっこうキレーじゃない???
「!? っ、な、なに見てやがる!?」
「ん? ああ。ギリアロさん、キレーな体してるなーって」
「へあ!?」
わっ。ギリアロさんてば真っ赤になった!
ウブだよねー。かわいいかよ。
たまらなくなって、くっくっくって笑いながら、おいでーって布団をぱんぱんたたく。
なんかギリアロさん、あたしのパジャマ姿でさえ見るの恥ずかしがってるのかな。だから、あたしはうつぶせになって、胸もとは見えないように。で、ギリアロさんのほうだけ布団めくる。
「あたしのとこの世界、あんまり男とか女とか気にしないところなんで。慎みあんまりなくてすみません」
これは嘘だけどね。
でも、もうちょっと肩の力抜いてくれた方があたしも気が楽だもん。
「ほら。あたし、こっちの陣地からむこういきませんから。はやく入って、慣れてくださいよ」
「お前さん、ほんと、慎みないよな」
「文化のちがいですって。ほらほら」
「……わかったよ……」
観念したギリアロさんは、はあーってまたおっきなため息ついて、ようやく隣に入ってくれた。
おおお、なんか新鮮。
あたしはうつぶせになったまま、枕に肘つけて、顔をギリアロさんの方にむける。お話してくれる気はあるのかな。ギリアロさんも同じ体勢になって、顔だけ向かいあった。
ギリアロさんってば、めっちゃくちゃ渋い顔してる。口は安定のへの字だね。
うーん、やっぱりこうやって見ると日本人……というか、アジア人顔だよね。なじむー。
外人顔のあたしのほうがこっちの国のひとみたいじゃない? 別に英語とか得意じゃないけど!
「ね、ギリアロさん」
「なんだ」
「今さらですけど、ギリアロさんでいいですよね、呼び方。――それか旦那さま?」
「っヤメロ。いいよ、名前で」
「閣下とかでも?」
「名前で」
「はーい」
だらだらーってしながら、あたしは笑う。
ほーら、なんだかんだ冗談つきあってくれるんじゃん。
ってか、本気で怒られないし、ギリアロさん可愛いところあるし、話しやすいって思うんだ。
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