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本編
ep02_結婚しちゃったものはしょうがないね。
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なんかやる気のなさそうなオッサンと、結婚することになったらしい。
……というか、結婚させられてる。いま。現在進行形。
事情を説明しよう――って別の部屋につれていかれて、そこで真っ先にエドアルド殿下ってば結婚の証明書を書いてるんですけど。
……え?
あたしやオッサンの本人確認サインとか必要ない感じですか!?
「殿下、いくらなんでもいきなりすぎます」
ヤレヤレ、といった感じでオッサンがストップかけてる。
――そりゃそうだよね。オッサンもとんだとばっちりだよね。
オッサンてばしわだらけ制服で、髪の毛も寝癖がそのまま。猫っ毛らしく後ろっかわがひょろんってしてて、雰囲気もなんだか締まりがない。
言葉づかいは丁寧だけど、殿下とおはなししてても飄々とした態度はそのままっていうか。
「うーん? だが、ノウトもわかってあそこにいたろう?
召喚の儀は、愛し子の婿の選別の儀でもある。君はこちらが予め定めた候補ではなかったが、そもそも、候補など大した意味はないのだよ。愛し子が最初に君に触れた。それがすべてだ」
「それは……そうですが。事故です、これは」
オッサンてばふるふる首を横に振る。
顔にデカデカと「めんどう」って書いてあるよね。
「あはは! だがチセはさほど嫌がっていないようだが?」
「まだ事態を把握できてないだけでしょう。私みたいな歳の離れた……どうしようもない男に、彼女のような若い娘などあり得ないでしょう。妻を娶りたい男など、この世にごまんといるのに」
はああああ。と、オッサンはわかりやすくため息をつく。
あたしはほけーって見てるだけだったけど、ふたりの視線が同時にこっち向いたので、びくってした。
「ほら。お前さんもぼさっとするな。ほかに若いのがいろいろいたろ? 選びなおせ」
おお、オッサン、殿下以外にはけっこう口が悪いな。
エドアルド殿下相手じゃないと、こんな感じなんだー。っていっても、殿下に対しても、態度は砕けてるよね。
「選びなおせと言われましても」
さっきの候補者のひとたちはもうここにはいない。
召喚された部屋から一緒に移動してきたのは、エドアルド殿下と、このギリアロ・デ・ノウトっていうオッサン。ほか、宰相っぽいひととか、護衛っぽいひととかで、少人数だ。
「さっきの人たち、ふつーに怖かったし。……ないかな」
ずばっと本音を言ったところで、オッサンが固まった。
いや、でも、目がね? みんなギラギラってしてたし。
正直イケメンは遠くから眺めるものだと思っているし。一緒に生活とかムリじゃん?
油断できないっていうかさ。あのレベルのイケメンになると、緊張しちゃってだらだらできないじゃん。
そうやって考えると目の前のオッサンのが断然いい。てか、殿下とふつーにぽんぽんやりとりできるところとか、ポイント高くない?
突然召喚されて、これから何やらされるか知らないけど、あたしだって面倒ごとはごめんだ。だったら、ある程度責任者っぽいひとに近いところにいるひとって、何かあったときに頼れると思うんだ。
ま、それもこれも、結婚って言葉に全然ぴんときてないから、余裕ぶってるだけかも。
オッサンもあたしと同じ被害者だし。
被害者同士、適度な距離を保ってくれそうな気がするとか……甘い? 甘いかな???
「そんなことより、他に聞きたいこといっぱいあるんですけど」
「そんなこと! あはは、聞いたかいノウト? 彼女、大物だ」
「くっ……!!」
本音を言うと、気にならないはずないんだよ?
だって、結婚だよ?
でも、相手のオッサンもこんな感じだからなんとかなるって思ってるだけ。
互いが結婚を意識してないんだから、なにも起こりようがないというか。……ま、そのことは、あとで直接オッサンと話すとして。
話、切り替える。
で、いろいろこの世界の話を聞いたんだ。
やっぱりここは夢でもなんでもなくて、あたしが住んでいる場所とはまた全然ちがったどこかの――異世界、ということは理解した。
途中お茶を出してもらって、それがふつーに普段飲んでるような紅茶だったから安心はしたけどね。食べ物は大丈夫そう。言葉の通じる外国っぽいとこだなって。
ここはイージルギア王国の王都メルケード。
通称〈鉄と鋼、そして空の街〉。
晶精っていうエネルギーで動いている街らしく――まだあたしもよく理解はできてないんだけど、その晶精って、妖精? 精霊? なんとなくそういったファンタジーな存在らしく。
その晶精が最近不安定だから? 機嫌を直してもらおうって呼んだのが、あたし〈晶精の愛し子〉なんだって。
いやいや、さすがに急には信じられないしょ、って思ったんだけどね。みんな、あたしの姿を――正確には瞳を見て、納得したとか。
うーん……瞳、ねえ。
実はあたしはお母さんがイギリス人でね? ハーフなんだよね。
で、瞳の色が碧。ふつーは大人になるまでに目の色茶色っぽくなったりするらしいんだけど、……あたし、ならなかったんだよね。不思議なことに。
ちなみに髪の毛も暗めだけどブロンド。
お母さんはあたしが小学生のころに病気で死んじゃって。……かなり昔の話だからね。ちゃんと乗り越えた。
で、そっからはお父さんが男手ひとつで育ててくれて……まあ、その大好きなお父さんもいなくなっちゃったからさ。
……だからかな。
身内もいないし。この世界に連れてこられたことに対しては、思いのほか冷静に考えてるみたい、あたし。
ま、召喚されちゃったものは仕方がないし! それよりも今は、この状況を理解するところからはじめなくっちゃ。
「ええと、あたしがいると、晶精が元気になる……?」
「うん、そういうこと」
まとめると、あたしがいろんなところで晶精と触れあうことで、この世界のエネルギー事情が改善するってことみたいだね。
だいたい100年とか200年に一度、こうやって異世界の女の子を呼び出してるんだってさ。
……というか、結婚させられてる。いま。現在進行形。
事情を説明しよう――って別の部屋につれていかれて、そこで真っ先にエドアルド殿下ってば結婚の証明書を書いてるんですけど。
……え?
あたしやオッサンの本人確認サインとか必要ない感じですか!?
「殿下、いくらなんでもいきなりすぎます」
ヤレヤレ、といった感じでオッサンがストップかけてる。
――そりゃそうだよね。オッサンもとんだとばっちりだよね。
オッサンてばしわだらけ制服で、髪の毛も寝癖がそのまま。猫っ毛らしく後ろっかわがひょろんってしてて、雰囲気もなんだか締まりがない。
言葉づかいは丁寧だけど、殿下とおはなししてても飄々とした態度はそのままっていうか。
「うーん? だが、ノウトもわかってあそこにいたろう?
召喚の儀は、愛し子の婿の選別の儀でもある。君はこちらが予め定めた候補ではなかったが、そもそも、候補など大した意味はないのだよ。愛し子が最初に君に触れた。それがすべてだ」
「それは……そうですが。事故です、これは」
オッサンてばふるふる首を横に振る。
顔にデカデカと「めんどう」って書いてあるよね。
「あはは! だがチセはさほど嫌がっていないようだが?」
「まだ事態を把握できてないだけでしょう。私みたいな歳の離れた……どうしようもない男に、彼女のような若い娘などあり得ないでしょう。妻を娶りたい男など、この世にごまんといるのに」
はああああ。と、オッサンはわかりやすくため息をつく。
あたしはほけーって見てるだけだったけど、ふたりの視線が同時にこっち向いたので、びくってした。
「ほら。お前さんもぼさっとするな。ほかに若いのがいろいろいたろ? 選びなおせ」
おお、オッサン、殿下以外にはけっこう口が悪いな。
エドアルド殿下相手じゃないと、こんな感じなんだー。っていっても、殿下に対しても、態度は砕けてるよね。
「選びなおせと言われましても」
さっきの候補者のひとたちはもうここにはいない。
召喚された部屋から一緒に移動してきたのは、エドアルド殿下と、このギリアロ・デ・ノウトっていうオッサン。ほか、宰相っぽいひととか、護衛っぽいひととかで、少人数だ。
「さっきの人たち、ふつーに怖かったし。……ないかな」
ずばっと本音を言ったところで、オッサンが固まった。
いや、でも、目がね? みんなギラギラってしてたし。
正直イケメンは遠くから眺めるものだと思っているし。一緒に生活とかムリじゃん?
油断できないっていうかさ。あのレベルのイケメンになると、緊張しちゃってだらだらできないじゃん。
そうやって考えると目の前のオッサンのが断然いい。てか、殿下とふつーにぽんぽんやりとりできるところとか、ポイント高くない?
突然召喚されて、これから何やらされるか知らないけど、あたしだって面倒ごとはごめんだ。だったら、ある程度責任者っぽいひとに近いところにいるひとって、何かあったときに頼れると思うんだ。
ま、それもこれも、結婚って言葉に全然ぴんときてないから、余裕ぶってるだけかも。
オッサンもあたしと同じ被害者だし。
被害者同士、適度な距離を保ってくれそうな気がするとか……甘い? 甘いかな???
「そんなことより、他に聞きたいこといっぱいあるんですけど」
「そんなこと! あはは、聞いたかいノウト? 彼女、大物だ」
「くっ……!!」
本音を言うと、気にならないはずないんだよ?
だって、結婚だよ?
でも、相手のオッサンもこんな感じだからなんとかなるって思ってるだけ。
互いが結婚を意識してないんだから、なにも起こりようがないというか。……ま、そのことは、あとで直接オッサンと話すとして。
話、切り替える。
で、いろいろこの世界の話を聞いたんだ。
やっぱりここは夢でもなんでもなくて、あたしが住んでいる場所とはまた全然ちがったどこかの――異世界、ということは理解した。
途中お茶を出してもらって、それがふつーに普段飲んでるような紅茶だったから安心はしたけどね。食べ物は大丈夫そう。言葉の通じる外国っぽいとこだなって。
ここはイージルギア王国の王都メルケード。
通称〈鉄と鋼、そして空の街〉。
晶精っていうエネルギーで動いている街らしく――まだあたしもよく理解はできてないんだけど、その晶精って、妖精? 精霊? なんとなくそういったファンタジーな存在らしく。
その晶精が最近不安定だから? 機嫌を直してもらおうって呼んだのが、あたし〈晶精の愛し子〉なんだって。
いやいや、さすがに急には信じられないしょ、って思ったんだけどね。みんな、あたしの姿を――正確には瞳を見て、納得したとか。
うーん……瞳、ねえ。
実はあたしはお母さんがイギリス人でね? ハーフなんだよね。
で、瞳の色が碧。ふつーは大人になるまでに目の色茶色っぽくなったりするらしいんだけど、……あたし、ならなかったんだよね。不思議なことに。
ちなみに髪の毛も暗めだけどブロンド。
お母さんはあたしが小学生のころに病気で死んじゃって。……かなり昔の話だからね。ちゃんと乗り越えた。
で、そっからはお父さんが男手ひとつで育ててくれて……まあ、その大好きなお父さんもいなくなっちゃったからさ。
……だからかな。
身内もいないし。この世界に連れてこられたことに対しては、思いのほか冷静に考えてるみたい、あたし。
ま、召喚されちゃったものは仕方がないし! それよりも今は、この状況を理解するところからはじめなくっちゃ。
「ええと、あたしがいると、晶精が元気になる……?」
「うん、そういうこと」
まとめると、あたしがいろんなところで晶精と触れあうことで、この世界のエネルギー事情が改善するってことみたいだね。
だいたい100年とか200年に一度、こうやって異世界の女の子を呼び出してるんだってさ。
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