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第2話 恋のライバル登場に「えっ、ベタな……」ってなるのは許してほしい。
2−12
しおりを挟む「はぁー…………っ。疲れた……」
とりあえずラルフの部屋になだれ込んでから、ラルフにぎゅーって抱きしめられる。
「マジで……さんざんな目に遭った……」
「……」
「アイツ、索敵能力がスゲエから、マジで油断するとすぐ見つか……」
「……」
「…………スマン。変なのに、絡まれて」
「…………」
ううん。とか、言えなくて。
わたしはかわりに、ぎゅうぎゅうと彼を抱きしめる腕に力を込める。
「っ、ま、待て。な? ちょっと荷物置こう。な? リリー」
「……ぅん」
彼もまだ武器を背負ってたからね。今日は普通の剣を装備してた他、ショートボウなんかも身につけてて、がちゃがちゃとそれを棚に並べていく。
わたしの鞄もコートも適当に壁にかけて、そのまま彼に、彼のベッドのところまで連れていかれた。
ふわっと漂う甘いかおり。
……これ、ミリアムの香水のにおい?
わたしのラルフになにつけてくれてんのよって思って、なけなしの魔力めちゃくちゃ放出する。
でも、わたしくらいじゃ全然、ちょっと風を吹かせるくらいで、どうにもならない。
「ラルフは、わたしの……だもん」
くやしくて。
ようやく声が絞り出せて、抱きつく。
彼が、ごくりを息をのむのがわかった。
はぁー……昨日の今日なのにな。
またラルフに、みっともないところ見せちゃった。つきあい始めてから、こんなのばかりな気がする。
でもねっ。でもっ。
「ごめんね。ちゃんと、言い返せなくて」
「いや。いーよ。言い返したところでどうこうできるようなタマでもねーだろーし」
「う……」
たしかに、そうかもしれない。
はぁー……ほんとに厄介なひとに目をつけられちゃった。
「ジャックさんは……いま、空いてないの?」
「は? なんでジャック?」
「……いくらラルフがその気はなくても、結果的にふたりでクエストしてきたんでしょ……?」
「うっ……」
やっぱりそうだった。
多分、ひとりでクエストに出かけてたラルフに、彼女が無理矢理合流したんでしょうけど。
「まだ、3人なら……ゆるせる」
「明日からはぜってー誰か男誘う。登録人数限界ギリギリまで」
「うん」
それから、ラルフからぽろぽろ話を聞いた。
彼女は首都のギルドに登録した冒険者だけど、仲間数名で、エイルズ方面の大討伐に参加してきたこと。――もちろんこれは、わたしもしってる。
で、大討伐の際、ジャックとふたりで組んで、成果をあげてたラルフに興味を持ったらしいこと。
試しに組んでみたら、前衛のラルフと、後衛のミリアムで、いい具合の討伐ができたこと。ついでに、仲間の能力を引き出すのが意外と上手いラルフに、彼女が興味を持ったこと。
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「ごめんね」
「いや、オマエ悪くねーだろ。オレこそ、すまん」
「ラルフも悪くない……」
「……」
「……」
「…………悩むだけ、アホらしい、ってことだな」
「そう思いたい」
「うん。ほら、リリーこっち」
「ん?」
なんて、彼はいつものようにキスしてきて。
「やっぱ、オマエがいい」
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