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第2話 恋のライバル登場に「えっ、ベタな……」ってなるのは許してほしい。

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「はぁー…………っ。疲れた……」

 とりあえずラルフの部屋になだれ込んでから、ラルフにぎゅーって抱きしめられる。

「マジで……さんざんな目に遭った……」
「……」
「アイツ、索敵能力がスゲエから、マジで油断するとすぐ見つか……」
「……」
「…………スマン。変なのに、絡まれて」
「…………」

 ううん。とか、言えなくて。
 わたしはかわりに、ぎゅうぎゅうと彼を抱きしめる腕に力を込める。

「っ、ま、待て。な? ちょっと荷物置こう。な? リリー」
「……ぅん」

 彼もまだ武器を背負ってたからね。今日は普通の剣を装備してた他、ショートボウなんかも身につけてて、がちゃがちゃとそれを棚に並べていく。
 わたしの鞄もコートも適当に壁にかけて、そのまま彼に、彼のベッドのところまで連れていかれた。

 ふわっと漂う甘いかおり。
 ……これ、ミリアムの香水のにおい?
 わたしのラルフになにつけてくれてんのよって思って、なけなしの魔力めちゃくちゃ放出する。
 でも、わたしくらいじゃ全然、ちょっと風を吹かせるくらいで、どうにもならない。

「ラルフは、わたしの……だもん」

 くやしくて。
 ようやく声が絞り出せて、抱きつく。
 彼が、ごくりを息をのむのがわかった。

 はぁー……昨日の今日なのにな。
 またラルフに、みっともないところ見せちゃった。つきあい始めてから、こんなのばかりな気がする。
 でもねっ。でもっ。

「ごめんね。ちゃんと、言い返せなくて」
「いや。いーよ。言い返したところでどうこうできるようなタマでもねーだろーし」
「う……」

 たしかに、そうかもしれない。
 はぁー……ほんとに厄介なひとに目をつけられちゃった。

「ジャックさんは……いま、空いてないの?」
「は? なんでジャック?」
「……いくらラルフがその気はなくても、結果的にふたりでクエストしてきたんでしょ……?」
「うっ……」

 やっぱりそうだった。
 多分、ひとりでクエストに出かけてたラルフに、彼女が無理矢理合流したんでしょうけど。

「まだ、3人なら……ゆるせる」
「明日からはぜってー誰か男誘う。登録人数限界ギリギリまで」
「うん」

 それから、ラルフからぽろぽろ話を聞いた。
 彼女は首都のギルドに登録した冒険者だけど、仲間数名で、エイルズ方面の大討伐に参加してきたこと。――もちろんこれは、わたしもしってる。

 で、大討伐の際、ジャックとふたりで組んで、成果をあげてたラルフに興味を持ったらしいこと。
 試しに組んでみたら、前衛のラルフと、後衛のミリアムで、いい具合の討伐ができたこと。ついでに、仲間の能力を引き出すのが意外と上手いラルフに、彼女が興味を持ったこと。
 大討伐からの帰路ではもう、ああやって、言い寄られるようになったってこと。

「アイツ、一応、ギルドにとっては大事な援軍なんだろ?」
「うっ……そうです……」

 まさにまさに。
 ミリアムはエイルズギルドにとっては、大切なお客さまだ。
 ラルフもそこはわかってくれてたんだね。だから、いくら鬱陶しくても、ひどい追っ払い方はしなかった。

「次の大討伐は……不参加のわけにもいかねーだろうが。……ジャックにも助けてもらうか」
「ごめんね」
「いや、オマエ悪くねーだろ。オレこそ、すまん」
「ラルフも悪くない……」
「……」
「……」
「…………悩むだけ、アホらしい、ってことだな」
「そう思いたい」
「うん。ほら、リリーこっち」
「ん?」

 なんて、彼はいつものようにキスしてきて。

「やっぱ、オマエがいい」
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