【R18】嘘から本気にさせられちゃった恋のおはなし。

浅岸 久

文字の大きさ
上 下
29 / 59
第2話 恋のライバル登場に「えっ、ベタな……」ってなるのは許してほしい。

2−9

しおりを挟む

「!? リリー!」

 おっと。向こうもわたしに気がついたみたいだね。
 いいですよー。ラルフがモテるなんて、今にはじまったことじゃないもん。
 そりゃあ、つきあうまでもさ?
 さんざん? 見せびらかせてもらいましたし?
 今はラルフもおっぱらう気はあるみたいだし?

 気にしてませんよーっ。
 ……。
 気にしてなんか。
 ……。
 …………気にしてないもん。お仕事お仕事。

「本日はクエスト登録されますか?」

 次の大討伐の出発は1週間後だからね。その間に軽いクエストをこなす冒険者も多い。
 にっこりと笑顔を貼り付けて、わたしはふたりに問いかける。

 ミリアムってば、これ見よがしにラルフにしがみついてさ。わたしのこと、じろじろ見てくるんだよね。
 久しぶりだな。
 この品定めされてるような視線。

 ……昔だったらね、イライラしながらも、関係ないって態度で通してたらよかったんだけど。
 今はわたしがラルフの彼女だもん。堂々としてなきゃ、だよね。

「……なにか?」
「ふぅーん。へぇー。あなたがリリー?」
「はい。こちらのギルドの受付を務めさせて頂いております、リリーと申します」

 ばちばちばちっ。
 めっちゃくちゃ視線痛いのですけど……。
 ……てか、魔力、混ぜてません?

「ふぅん。噂のラルフの彼女。……そう」

 ちらっ、ちらって、わたしとラルフを交互に見てくる。

「そーだよ。だから、ほら、放せって。オレにはコイツがいんだ。言い寄られても困る」

 ラルフもちょっとイライラしているみたいで、なかば無理矢理ミリアムの腕を引っ剥がす。で、肩をすくめて、なにもねーぞ? ってわたしに訴えかけてくる。
 うん。それはわかったよ?
 ラルフが彼女のことをめんどくさがってるのは伝わってきた。

 けど、それはそれ。これはこれで。
 わたしだって、面白くない気持ちになっちゃうわけで。
 ついついじーって、ミリアムの方見ちゃう。

「ふぅーーーん」

 ミリアムもミリアムの方でね、なんかわたしを品定めでもするかのような視線よこしてきてさ。
 彼女ってば、真っ直ぐ歩いてきてカウンターに両肘をつける。
 ふわって漂う、甘い香水のかおり。
 冒険者は、モンスターに見つからないようにって香水つけるひとほとんどないのにさ。
 索敵能力が高くて、敵にも近づかない前提だから?
 ……わたしからすると、冒険者ナメてるとしか思えないんだけど、でも、実力はあるひとらしいしね。

 うー、もやもやする。

 でさ?
 ミリアムってば……こう……よせて。あげて。
 ぷりんって。
 露出が多いからね? そこは、肌色が見えますよね?

 自分の谷間に視線向けてから、わざわざわたしの胸に視線移動してくださって?

「あたしの勝ちね?」

 なんて。
 わたしにしか聞こえない声で言ってきた。

 はいーーー!!! この女ーーーーーっ!!!!!

 ……おっと。ちょっといま感情が顔に出そうになっちゃったね!
 だめだめ、落ち着いて? 落ち着くのよリリー。
 すーはーすーはー。
 心の中で深呼吸。

 なによ。なによなによ。
 わたしだって……脱いだら……そこそこあるんだもん。ラルフだって、わたしのおっぱいが好きなんだからねっ!
 サイズでは……ちょっと。ちょっとだけ? かなわないけど???

 ってか、なに?
 そういえば名乗ってももらえてなくない?
 超失礼じゃない?

「朝の受付は混み合いますので、ご用がないようでしたらまた今度にしていただけますか?」

 でもわたしはギルド嬢。
 失礼なお客様にも笑顔で対応できてこそ。
 あとでラルフにさ、この女ミリアムのことは、しっかり聞かないといけないけどね!

 ……はぁー。
 ああもう……でも、そっかあ。そうだよね。実感したよ、いま。
 わたし、ラルフの彼女になったから……前と同じじゃいけないんだよねっ。

 いやいやあのね? 前だったらね?
 ラルフに寄ってくる女の子たちにはそろって「おすきにどーぞー」って言えばすんだからさ。
 わたしは彼女じゃないですよー。
 ラルフに興味はないですよー。
 そっちで好きにやってくださいねー
 わたしを巻き込まないでよろしくどうぞーって。

 でも、彼女という立場になったからには、そうも言ってられないのだなって……痛感しています、なるほど。
 よりにもよって、相手が紅晶姫ミリアムとか最悪だけど。
 エイルズのギルド職員としては、全力で持ちあげなきゃいけない相手だなんてさ……。

 もーっ……。
 ラルフのバカっ。

 ……いや、別にラルフは悪くないんだけどさ? 
 でもでも! なにもかも、モテるラルフのせいだと思いますっ。

 この展開は……いや……ちょっとくらいは想定していたけど……想定以上にはるかにめんどくさそうな相手で……途方に暮れつつ……わたしはがっくりと肩を落とした。

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

会社の後輩が諦めてくれません

碧井夢夏
恋愛
満員電車で助けた就活生が会社まで追いかけてきた。 彼女、赤堀結は恩返しをするために入社した鶴だと言った。 亀じゃなくて良かったな・・ と思ったのは、松味食品の営業部エース、茶谷吾郎。 結は吾郎が何度振っても諦めない。 むしろ、変に条件を出してくる。 誰に対しても失礼な男と、彼のことが大好きな彼女のラブコメディ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

処理中です...