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第2話 恋のライバル登場に「えっ、ベタな……」ってなるのは許してほしい。
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しおりを挟む「!? リリー!」
おっと。向こうもわたしに気がついたみたいだね。
いいですよー。ラルフがモテるなんて、今にはじまったことじゃないもん。
そりゃあ、つきあうまでもさ?
さんざん? 見せびらかせてもらいましたし?
今はラルフもおっぱらう気はあるみたいだし?
気にしてませんよーっ。
……。
気にしてなんか。
……。
…………気にしてないもん。お仕事お仕事。
「本日はクエスト登録されますか?」
次の大討伐の出発は1週間後だからね。その間に軽いクエストをこなす冒険者も多い。
にっこりと笑顔を貼り付けて、わたしはふたりに問いかける。
ミリアムってば、これ見よがしにラルフにしがみついてさ。わたしのこと、じろじろ見てくるんだよね。
久しぶりだな。
この品定めされてるような視線。
……昔だったらね、イライラしながらも、関係ないって態度で通してたらよかったんだけど。
今はわたしがラルフの彼女だもん。堂々としてなきゃ、だよね。
「……なにか?」
「ふぅーん。へぇー。あなたがリリー?」
「はい。こちらのギルドの受付を務めさせて頂いております、リリーと申します」
ばちばちばちっ。
めっちゃくちゃ視線痛いのですけど……。
……てか、魔力、混ぜてません?
「ふぅん。噂のラルフの彼女。……そう」
ちらっ、ちらって、わたしとラルフを交互に見てくる。
「そーだよ。だから、ほら、放せって。オレにはコイツがいんだ。言い寄られても困る」
ラルフもちょっとイライラしているみたいで、なかば無理矢理ミリアムの腕を引っ剥がす。で、肩をすくめて、なにもねーぞ? ってわたしに訴えかけてくる。
うん。それはわかったよ?
ラルフが彼女のことをめんどくさがってるのは伝わってきた。
けど、それはそれ。これはこれで。
わたしだって、面白くない気持ちになっちゃうわけで。
ついついじーって、ミリアムの方見ちゃう。
「ふぅーーーん」
ミリアムもミリアムの方でね、なんかわたしを品定めでもするかのような視線よこしてきてさ。
彼女ってば、真っ直ぐ歩いてきてカウンターに両肘をつける。
ふわって漂う、甘い香水のかおり。
冒険者は、モンスターに見つからないようにって香水つけるひとほとんどないのにさ。
索敵能力が高くて、敵にも近づかない前提だから?
……わたしからすると、冒険者ナメてるとしか思えないんだけど、でも、実力はあるひとらしいしね。
うー、もやもやする。
でさ?
ミリアムってば……こう……よせて。あげて。
ぷりんって。
露出が多いからね? そこは、肌色が見えますよね?
自分の谷間に視線向けてから、わざわざわたしの胸に視線移動してくださって?
「あたしの勝ちね?」
なんて。
わたしにしか聞こえない声で言ってきた。
はいーーー!!! この女ーーーーーっ!!!!!
……おっと。ちょっといま感情が顔に出そうになっちゃったね!
だめだめ、落ち着いて? 落ち着くのよリリー。
すーはーすーはー。
心の中で深呼吸。
なによ。なによなによ。
わたしだって……脱いだら……そこそこあるんだもん。ラルフだって、わたしのおっぱいが好きなんだからねっ!
サイズでは……ちょっと。ちょっとだけ? かなわないけど???
ってか、なに?
そういえば名乗ってももらえてなくない?
超失礼じゃない?
「朝の受付は混み合いますので、ご用がないようでしたらまた今度にしていただけますか?」
でもわたしはギルド嬢。
失礼なお客様にも笑顔で対応できてこそ。
あとでラルフにさ、この女のことは、しっかり聞かないといけないけどね!
……はぁー。
ああもう……でも、そっかあ。そうだよね。実感したよ、いま。
わたし、ラルフの彼女になったから……前と同じじゃいけないんだよねっ。
いやいやあのね? 前だったらね?
ラルフに寄ってくる女の子たちにはそろって「おすきにどーぞー」って言えばすんだからさ。
わたしは彼女じゃないですよー。
ラルフに興味はないですよー。
そっちで好きにやってくださいねー
わたしを巻き込まないでよろしくどうぞーって。
でも、彼女という立場になったからには、そうも言ってられないのだなって……痛感しています、なるほど。
よりにもよって、相手が紅晶姫ミリアムとか最悪だけど。
エイルズのギルド職員としては、全力で持ちあげなきゃいけない相手だなんてさ……。
もーっ……。
ラルフのバカっ。
……いや、別にラルフは悪くないんだけどさ?
でもでも! なにもかも、モテるラルフのせいだと思いますっ。
この展開は……いや……ちょっとくらいは想定していたけど……想定以上にはるかにめんどくさそうな相手で……途方に暮れつつ……わたしはがっくりと肩を落とした。
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