【R18】嘘から本気にさせられちゃった恋のおはなし。

浅岸 久

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第2話 恋のライバル登場に「えっ、ベタな……」ってなるのは許してほしい。

2−9

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「!? リリー!」

 おっと。向こうもわたしに気がついたみたいだね。
 いいですよー。ラルフがモテるなんて、今にはじまったことじゃないもん。
 そりゃあ、つきあうまでもさ?
 さんざん? 見せびらかせてもらいましたし?
 今はラルフもおっぱらう気はあるみたいだし?

 気にしてませんよーっ。
 ……。
 気にしてなんか。
 ……。
 …………気にしてないもん。お仕事お仕事。

「本日はクエスト登録されますか?」

 次の大討伐の出発は1週間後だからね。その間に軽いクエストをこなす冒険者も多い。
 にっこりと笑顔を貼り付けて、わたしはふたりに問いかける。

 ミリアムってば、これ見よがしにラルフにしがみついてさ。わたしのこと、じろじろ見てくるんだよね。
 久しぶりだな。
 この品定めされてるような視線。

 ……昔だったらね、イライラしながらも、関係ないって態度で通してたらよかったんだけど。
 今はわたしがラルフの彼女だもん。堂々としてなきゃ、だよね。

「……なにか?」
「ふぅーん。へぇー。あなたがリリー?」
「はい。こちらのギルドの受付を務めさせて頂いております、リリーと申します」

 ばちばちばちっ。
 めっちゃくちゃ視線痛いのですけど……。
 ……てか、魔力、混ぜてません?

「ふぅん。噂のラルフの彼女。……そう」

 ちらっ、ちらって、わたしとラルフを交互に見てくる。

「そーだよ。だから、ほら、放せって。オレにはコイツがいんだ。言い寄られても困る」

 ラルフもちょっとイライラしているみたいで、なかば無理矢理ミリアムの腕を引っ剥がす。で、肩をすくめて、なにもねーぞ? ってわたしに訴えかけてくる。
 うん。それはわかったよ?
 ラルフが彼女のことをめんどくさがってるのは伝わってきた。

 けど、それはそれ。これはこれで。
 わたしだって、面白くない気持ちになっちゃうわけで。
 ついついじーって、ミリアムの方見ちゃう。

「ふぅーーーん」

 ミリアムもミリアムの方でね、なんかわたしを品定めでもするかのような視線よこしてきてさ。
 彼女ってば、真っ直ぐ歩いてきてカウンターに両肘をつける。
 ふわって漂う、甘い香水のかおり。
 冒険者は、モンスターに見つからないようにって香水つけるひとほとんどないのにさ。
 索敵能力が高くて、敵にも近づかない前提だから?
 ……わたしからすると、冒険者ナメてるとしか思えないんだけど、でも、実力はあるひとらしいしね。

 うー、もやもやする。

 でさ?
 ミリアムってば……こう……よせて。あげて。
 ぷりんって。
 露出が多いからね? そこは、肌色が見えますよね?

 自分の谷間に視線向けてから、わざわざわたしの胸に視線移動してくださって?

「あたしの勝ちね?」

 なんて。
 わたしにしか聞こえない声で言ってきた。

 はいーーー!!! この女ーーーーーっ!!!!!

 ……おっと。ちょっといま感情が顔に出そうになっちゃったね!
 だめだめ、落ち着いて? 落ち着くのよリリー。
 すーはーすーはー。
 心の中で深呼吸。

 なによ。なによなによ。
 わたしだって……脱いだら……そこそこあるんだもん。ラルフだって、わたしのおっぱいが好きなんだからねっ!
 サイズでは……ちょっと。ちょっとだけ? かなわないけど???

 ってか、なに?
 そういえば名乗ってももらえてなくない?
 超失礼じゃない?

「朝の受付は混み合いますので、ご用がないようでしたらまた今度にしていただけますか?」

 でもわたしはギルド嬢。
 失礼なお客様にも笑顔で対応できてこそ。
 あとでラルフにさ、この女ミリアムのことは、しっかり聞かないといけないけどね!

 ……はぁー。
 ああもう……でも、そっかあ。そうだよね。実感したよ、いま。
 わたし、ラルフの彼女になったから……前と同じじゃいけないんだよねっ。

 いやいやあのね? 前だったらね?
 ラルフに寄ってくる女の子たちにはそろって「おすきにどーぞー」って言えばすんだからさ。
 わたしは彼女じゃないですよー。
 ラルフに興味はないですよー。
 そっちで好きにやってくださいねー
 わたしを巻き込まないでよろしくどうぞーって。

 でも、彼女という立場になったからには、そうも言ってられないのだなって……痛感しています、なるほど。
 よりにもよって、相手が紅晶姫ミリアムとか最悪だけど。
 エイルズのギルド職員としては、全力で持ちあげなきゃいけない相手だなんてさ……。

 もーっ……。
 ラルフのバカっ。

 ……いや、別にラルフは悪くないんだけどさ? 
 でもでも! なにもかも、モテるラルフのせいだと思いますっ。

 この展開は……いや……ちょっとくらいは想定していたけど……想定以上にはるかにめんどくさそうな相手で……途方に暮れつつ……わたしはがっくりと肩を落とした。

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