【R18】嘘から本気にさせられちゃった恋のおはなし。

浅岸 久

文字の大きさ
上 下
28 / 59
第2話 恋のライバル登場に「えっ、ベタな……」ってなるのは許してほしい。

2−8

しおりを挟む

 はー。
 朝の空気はすっかり冷たくなってるのにさ。
 お手々、あったかいです。うん。

 ということで、昨日は久しぶりにふたりでいちゃいちゃしまして。朝、寝坊しかけたところをラルフに起こしてもらって。
 一緒に通勤です。
 もちろん、手を繋いで。

 うー……この通勤にも、かなり慣れたはなれたんだけどね?
 っていうか、周囲が見慣れてくれて、スルーしてくれるようになったっていうか。わたしはいまだに結構ソワソワしてるんだよ?
 寒いからって、ラルフってばすごく体を寄せてくれるし。わたしのちっさな手なんか、ラルフの手にすっぽりだからね?
 ……うん、あったかい。

 これからどんどん寒くなるからね。
 わたしも厚手のコートを出してきて、ちょっとはやい冬の装いだ。ラルフもね。身長があるから、魔獣の皮のロングコートが格好いい。
 ラルフはわたしとちがってあか抜けてるもんね。冒険者だから、見栄えよりも機能! って本人は言うけど、さりげなくおしゃれさんなんだ……ずるい……。

 次のデート……コートとか一緒に選んでくれるかな?
 ショッピング……飽きちゃうかな?
 うー。どうしよ。
 なんてぐるぐる悩んでたら、あっという間にギルドホールだ。


 ラルフに手を振ってわかれて、わたしは事務室の方へ行って、着替えてから朝の業務。
 今日は午前中窓口業務もあるからね。さっくりと終わらせて、受付のあるホールの方へと移動する。

 ……と。
 なんだか珍しいというか……ある意味すっっっごく久しぶりな光景に、わたしはついつい固まった。

「おい、離れろよ」
「だめよ。だって、今日は一緒にパーティ組むでしょ」
「組まねえ。勝手に決めるな!」

 え……ええ、と?
 つまり。これは。うん。わかるよ? 慣れてるから。
 ラルフがまたまた、女の子にモテちゃっているみたい。

 でも、いつもの女の子たちとはちょっと雰囲気がちがう。
 紅の瞳が印象的な、黒髪ストレートの女の子。
 おっきなルビーのような魔石がはまった杖に、体の線がぴったりと見えちゃうセクシーな黒のローブ……というか、もはやドレス?
 一応魔獣のファーでモコモコをまとってはいるけれども……露出……多くないですかね……?
 戦士職で、服に動きを制限されるのが嫌で薄着をしてる人は少なくないけど、彼女の場合……目的がちょっとちがう気がしますよ?
 年齢はわたしと同じくらいだと思うんだけど、セクシー度合いがですね……はい……勝負になりませんね……。

 えーっと……。
 彼女がいったいだれかってことはね、わかるよ?
 わたしもギルドで働いててそこそこ経験もあるし、冒険者の情報だってある。今回の大討伐に、参加してるってのもね? 聞いたんだ。

 ――紅晶姫こうしょうきミリアム。
 魔法使い。

 そもそも、魔法使いってだけで超レアなのに、仰々しい二つ名を持つ冒険者って滅多にいないからね。
 魔力自体は多かれ少なかれ、誰でも持っている。
 そのなかでも魔法を使えるくらいの魔力を持つひとって、100人に2、3人くらいって言われてるんだけど、それでもおおよそが、生活魔法っていう……ちょっと水を出したり? 火をつけたり? って、ほんとさり気ない自然現象を操るくらいしかできないものなんだ。
 あ。
 えーっと……まあ、実は? わたしも、それくらいならなんとか、できなくはないかなって程度の魔力ならあるんだけどね?
 正直、それくらいだったら魔道具でいいじゃん? って考えておりまして。だって、疲れるし。
 全っっっ然有効活用してないんだよね。なんなら、存在を忘れてました……ってくらいで。
 つまり。魔力なんて持ってても、それが冒険者としての武器になるかっていうと、基本はならないの。キャンプするときに荷物少なくて良いかも、くらい?

 でもね。たまーに、その魔力が馬鹿みたいにありあまってるひとがいてね?
 これはもう、生まれつき。
 で、それを冒険者として戦闘に活かしている一握りの存在が魔法使いってわけ。

 職業としてもめちゃくちゃ珍しいし、重宝される。
 そのうえ、彼女――ミリアムは、この国の首都ウィールウッド所属の、若手ながら超優秀な魔法使いときた。

 首都には優秀な冒険者が多いからね。
 この大討伐の時期になると、各地域に優秀な冒険者が派遣されるってわけ。
 ……ついでに、優秀な地方冒険者にね? 首都への勧誘とかもあったりするから、エイルズギルド側からすると、喜んでばかりもいられないのだけれど。


 でも……目の前の光景は……さあ……。

「次の大討伐まではならし期間でしょ? だったら、互いの能力把握しておいたほうがいいじゃない」
「いやいやいや。首都のヤツらと組んでるんだろ? いいよ、オレはソロでやるからっ」

 ミリアムってば、ラルフの腕をぎゅーって掴んで。
 あ。当たってますね?
 ちがう。当ててますね。
 ラルフにとっては不可抗力なんだろうけどさ?
 ふぅーん。
 へぇーーーーっ。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

処理中です...