【R18】嘘から本気にさせられちゃった恋のおはなし。

浅岸 久

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第2話 恋のライバル登場に「えっ、ベタな……」ってなるのは許してほしい。

2−8

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 はー。
 朝の空気はすっかり冷たくなってるのにさ。
 お手々、あったかいです。うん。

 ということで、昨日は久しぶりにふたりでいちゃいちゃしまして。朝、寝坊しかけたところをラルフに起こしてもらって。
 一緒に通勤です。
 もちろん、手を繋いで。

 うー……この通勤にも、かなり慣れたはなれたんだけどね?
 っていうか、周囲が見慣れてくれて、スルーしてくれるようになったっていうか。わたしはいまだに結構ソワソワしてるんだよ?
 寒いからって、ラルフってばすごく体を寄せてくれるし。わたしのちっさな手なんか、ラルフの手にすっぽりだからね?
 ……うん、あったかい。

 これからどんどん寒くなるからね。
 わたしも厚手のコートを出してきて、ちょっとはやい冬の装いだ。ラルフもね。身長があるから、魔獣の皮のロングコートが格好いい。
 ラルフはわたしとちがってあか抜けてるもんね。冒険者だから、見栄えよりも機能! って本人は言うけど、さりげなくおしゃれさんなんだ……ずるい……。

 次のデート……コートとか一緒に選んでくれるかな?
 ショッピング……飽きちゃうかな?
 うー。どうしよ。
 なんてぐるぐる悩んでたら、あっという間にギルドホールだ。


 ラルフに手を振ってわかれて、わたしは事務室の方へ行って、着替えてから朝の業務。
 今日は午前中窓口業務もあるからね。さっくりと終わらせて、受付のあるホールの方へと移動する。

 ……と。
 なんだか珍しいというか……ある意味すっっっごく久しぶりな光景に、わたしはついつい固まった。

「おい、離れろよ」
「だめよ。だって、今日は一緒にパーティ組むでしょ」
「組まねえ。勝手に決めるな!」

 え……ええ、と?
 つまり。これは。うん。わかるよ? 慣れてるから。
 ラルフがまたまた、女の子にモテちゃっているみたい。

 でも、いつもの女の子たちとはちょっと雰囲気がちがう。
 紅の瞳が印象的な、黒髪ストレートの女の子。
 おっきなルビーのような魔石がはまった杖に、体の線がぴったりと見えちゃうセクシーな黒のローブ……というか、もはやドレス?
 一応魔獣のファーでモコモコをまとってはいるけれども……露出……多くないですかね……?
 戦士職で、服に動きを制限されるのが嫌で薄着をしてる人は少なくないけど、彼女の場合……目的がちょっとちがう気がしますよ?
 年齢はわたしと同じくらいだと思うんだけど、セクシー度合いがですね……はい……勝負になりませんね……。

 えーっと……。
 彼女がいったいだれかってことはね、わかるよ?
 わたしもギルドで働いててそこそこ経験もあるし、冒険者の情報だってある。今回の大討伐に、参加してるってのもね? 聞いたんだ。

 ――紅晶姫こうしょうきミリアム。
 魔法使い。

 そもそも、魔法使いってだけで超レアなのに、仰々しい二つ名を持つ冒険者って滅多にいないからね。
 魔力自体は多かれ少なかれ、誰でも持っている。
 そのなかでも魔法を使えるくらいの魔力を持つひとって、100人に2、3人くらいって言われてるんだけど、それでもおおよそが、生活魔法っていう……ちょっと水を出したり? 火をつけたり? って、ほんとさり気ない自然現象を操るくらいしかできないものなんだ。
 あ。
 えーっと……まあ、実は? わたしも、それくらいならなんとか、できなくはないかなって程度の魔力ならあるんだけどね?
 正直、それくらいだったら魔道具でいいじゃん? って考えておりまして。だって、疲れるし。
 全っっっ然有効活用してないんだよね。なんなら、存在を忘れてました……ってくらいで。
 つまり。魔力なんて持ってても、それが冒険者としての武器になるかっていうと、基本はならないの。キャンプするときに荷物少なくて良いかも、くらい?

 でもね。たまーに、その魔力が馬鹿みたいにありあまってるひとがいてね?
 これはもう、生まれつき。
 で、それを冒険者として戦闘に活かしている一握りの存在が魔法使いってわけ。

 職業としてもめちゃくちゃ珍しいし、重宝される。
 そのうえ、彼女――ミリアムは、この国の首都ウィールウッド所属の、若手ながら超優秀な魔法使いときた。

 首都には優秀な冒険者が多いからね。
 この大討伐の時期になると、各地域に優秀な冒険者が派遣されるってわけ。
 ……ついでに、優秀な地方冒険者にね? 首都への勧誘とかもあったりするから、エイルズギルド側からすると、喜んでばかりもいられないのだけれど。


 でも……目の前の光景は……さあ……。

「次の大討伐まではならし期間でしょ? だったら、互いの能力把握しておいたほうがいいじゃない」
「いやいやいや。首都のヤツらと組んでるんだろ? いいよ、オレはソロでやるからっ」

 ミリアムってば、ラルフの腕をぎゅーって掴んで。
 あ。当たってますね?
 ちがう。当ててますね。
 ラルフにとっては不可抗力なんだろうけどさ?
 ふぅーん。
 へぇーーーーっ。
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