【R18】嘘から本気にさせられちゃった恋のおはなし。

浅岸 久

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第2話 恋のライバル登場に「えっ、ベタな……」ってなるのは許してほしい。

2−2(ラルフ)

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「おーい! ラルフ! てめえ、ちょっとは集中しろっ!!」

 ――っと! 考えごとばっかしてたの、バレちまってたらしい。

「わあってる! っと!!」

 ざしゅっ!!

 気持ちを切り替えて、小型モンスターの群れを押さえ込むために、オレは大剣をふりまわす。
 いまところ、数だけ多くて危険はそれほどないから、ついつい考えごとが捗るっつーか。
 ダメだダメだ。集中しねーとな。

 リリーの周りの虫は全力で散らし続けているわけだけど、そうやってずっとリリーに貼りついているわけにもいかない。
 特に、今は冒険者にとってかき入れ時だからな。
 久しぶりにエイルズからちょっと離れたフィアーク山の麓まで、遠征にきているってわけだ。

 ちなみに、今オレの目の前にいる巨大なダンゴムシみてーなジャイアントピルバグっつーモンスターは、表面の殻が硬い。動きが不規則なところが厄介だが、なにごともやりようだ。

「ジャック!」
「おう、どけ!」

 仲間のジャックっていう、オレの信頼するガンナーに声をかけつつ、オレは魔道具を使って大きめの跳躍。
 空中に待避しているうちにジャックが火炎放射してもらって、熱で裏返ったところをとどめを刺してくってわけ。

 モンスター退治ってのは、身体能力ももちろんだけど、モンスターに対する知識と、魔道具や弱点武器の活用でどうとでもなるからな。
 事前にどのモンスターと戦うのかわかってたら、準備さえしておけばなんとかなる。
 オレは基本ソロで動いていることが多いが、場合によってはジャックと組んでクエストに出かけることもそれなりにある。

 互いに固定パーティは組んでいないから、臨時ばっかで一緒になるけど、相性もいい。コイツと組むとクエストも早く終わるし、気が楽だ。


「ふぅー……これでおおよそか? ……数が多いな。報告は、どうする?」
「信号弾でいいだろ? 向こうもまだドンパチしてるだろうし」
「だな」

 秋が深まり、いよいよ冬になるかっていう時期――この時期は魔物も活発になりやすいからな。
 特に冬眠する類いのモンスターは、実り豊かな秋に活動範囲が広がりやすい。
 つーわけで、エイルズの街に引き籠もっていたかったオレも、こうやって遠征に借り出されてるってワケ。
 はぁーあ、まだまだ、リリーの周辺を牽制したりねーんだけどなー。
 クソ。帰ったときにアイツがどこぞの男にまとわりつかれてでもいろ。その男、ゼッタイ許さねー!

 ……なんて、いまだに油断すると、ついつい悪い方向に考えちまうんだよな。
 いや。
 だって、まだ信じられないっつーか。リリーにはオレよりももっと相応しい……いやいや、ないない。たとえ相応しいヤローがいたとして? それを指くわえて見てられますかって聞かれたら全力でノーだ!

 っし。
 今後もリリーをガッチリ離さないためにも? とっととここいらのモンスター殲滅して、帰らねーとなあ!

 んで。
 いいかげんリリーに、一緒に住もうって誘わねーと。

 ふふっ。
 へへへへへっ。


「……おいおい、ラルフ。たのむぜ。顔がニヤけてるぞ」
「しかたねえだろ? オレはな、今」
「はいはい。リリーちゃんに振り向いてもらえて幸せ絶頂。知ってるさ。
 でもオマエ、ちょっと気持ち悪いぞ」
「うっ……!」
「浮かれすぎてリリーちゃんに愛想尽かされるなよ? ほら、とっとと次に行くぞ」
「……」

 痛いところを突かれてオレはうな垂れる。
 くっっっそ。
 積年の想いが無事果たされて浮かれることも許されねーってのかよ……?

 いや。オレだって知ってるんだぜ?
 冒険者連中の間にゃあ、オレがいつリリーに愛想つかされるか賭けをしてるんだろ?

 くっっっそ!
 バカにしやがって!!

 ゼッタイアイツらの思うようにはいかないからな。
 つーわけで、帰ったらリリーをデートに誘う!
 で、家を見に行って一緒に引っ越しする!!
 今年中に同棲まで持っていってやるからな……見ていろよな……!

 …………って、思うんだけどな。
 どーもこのところ、リリーのヤツ仕事詰め込みすぎっつーか、なんか習いごととかもはじめやがってよ。正直、自由にできる時間少なすぎじゃね? って思ってる。
 ……まあ、そこらへんも、こうやってオレがまた仕事をがっつり入れはじめた理由っつーか。

 でもさ。つきあい始めなんだからよ。
 もっとイチャイチャしたいって思うのは、当然の真理じゃね?
 デートとか、エッチとかエッチとかエッチとか。ほら。いろいろやることあんじゃん?
 なのに何? なんでこんなときから、習いごと???

 ……。

 ……。

 えっっっっっ。

 ……。
 …………。
 ………………まさか、避けられてる?

 ……。
 いやいやいやいや!

 ないないないない。
 いやいやないない。


「おーい! ラルフ!」
「ああ、わぁってるよ!」

 っと、ジャックに呼ばれてオレは慌てて顔を上げる。
 考えるのはまたあとだな。うん。もちろん、わかっていますとも!

 さすがに帰ったころには、リリーの仕事も落ち着いているはず。そうにちがいない。
 オレは必死に自分に言い聞かせながら、あわててジャックのあとを追った。

 うん、まずはこのクエストでたっぷり報酬を稼いでから、だよな。
 よーっし! 引っ越し資金ためるぞー!

 リリー、待ってろよな!!


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