【R18】嘘から本気にさせられちゃった恋のおはなし。

浅岸 久

文字の大きさ
上 下
20 / 59
第1話 嘘から本気にさせられちゃった恋のおはなし。

1−20

しおりを挟む

 ……なんて。

 ……調子に乗りすぎた昨日のわたしを殴ってやりたいです、ハイ……。


「ぅ、ぅ、ぅ、ぅ……」

 朝、起きて、普段絶対痛くならないような筋肉があちこち痛くなっていることに気がついて、後悔した。

 ええと……?
 ぜんっぜん記憶ないんだけど。昨夜、彼とは何回やったかな……???

 いや、うん。
 別に、ラルフを責めるつもりはないんだよ?
 わたしもなんか、気分がぽや~んってして調子乗っちゃったし?
 うん。全然責めてないよ?
 初心者用ってなんだったのかな? とか、問い詰めたりしないよ……?


「った、た、た……」

 朝起きたらラルフは隣にはいなくて。
 わたしは上半身を起こしてから、自分の体を確認する。胸とか腕とか、なんかいろんなところにキスマークが散っていて、それだけで赤面しそうになる。
 っていうか、裸のままだ。
 体は清めてあるようだけど、服は――と探そうとして、回収されちゃっていることに気がついた。
 自分の部屋の方に着替え取りにいかなくちゃなんだけど……これじゃあ自分で、行けないじゃない。

 とりあえず着るものを……と思って、適当にラルフのクローゼットを漁る。
 ……んだけどね?
 もうね、立つだけで、至る所の違和感がすごい。
 なんか股の間にまだなにか挟まってる感じするし、……ずっと、体の色んなとこ、まだ彼に触られている感触が残ってる。
 世の中の女の子、すごい。みんなこれを経験してたのか……。


 適当な大きめのシャツを見つけて、がばりと上から被っちゃう。
 ちょうどワンピースくらいの丈になるから、とりあえずこれで凌げるかなと。

 隣の部屋からいい匂いが漂ってきてるから、また朝ご飯を用意してくれているのだと思う。
 ラルフは意外と甲斐甲斐しいところがあって、そういうところも、きっと好き。
 体はあちこち痛いし、ついつい調子に乗っちゃった反省はしてるけど、わたし、多分、すごく幸せな夜を過ごしてて。

 彼と顔をあわせたら、何を言おうかな。
 お礼とか。ちゃんと言わなきゃ、とか、いろいろ考える。


 そしたら、おきたかー!? って声がかけられて、はーい! って返す。
 あけるぞー? っていう言葉と一緒に、ドアが開いて。

 じゅうじゅう、と向こうの部屋からまだフライパンで何か焼いてる音が聞こえてきて。
 香ばしいかおりに頬を緩めると、ぱちぱちと瞬くラルフと目があった。

「えーっと……おはよ? ラルフ」
「ああ……」
「いい匂い。もしかして、朝ご飯つくってくれてたり、する?」
「ああ……」
「そっか。ありがと。……あの、ラルフ? あのね? わたしね?」
「ああ……」
「ラルフ? おーい。ラルフ?」
「………………」

 彼はじっと、わたしを見つめたまま硬直していて、うわの空。
 わたしの言葉なんか全然聞いてなくて、いったいどうしたのかなと不思議に思って。

「それは、反則だ」
「は?」

 なんか、よくわかんないこと、言った。

「ちょ……なに!?」

 彼はすたすたとわたしに詰め寄り、抱きしめられる距離のちょっと手前で立ち止まる。
 ますますどうしたのかわかんなくて、ぽかんとしちゃって。

 向こうからは相変わらず、じゅうじゅうなにかが焼ける音が聞こえて。


「オマエ、今日遅番だったよな……?」
「え? あ。うん、それは、そうだけど」

 ほんとはもう、まるっと一日休みたい。
 ギルドでは立ち仕事も多いし、体中に違和感を抱えて一日働ける気もしない。
 でも、仕事は仕事。億劫だけど、なんとかしなきゃいけないと思っているわけで。

 と、この後の予定をいろいろ考えていると、彼はわたしの頭のてっぺんからつま先までをじっと凝視し続けているようだった。

「……いい……」

 なんて、なにやら感慨深そうに呟いて。

「は?」
「な。リリー?」
「えーっと……なにかな……?」

 嫌な予感がする。

「朝食の前にだな。その――」
「……」
「今の、オマエの、その…………つまり、一発だけ、だな」
「…………」

 ………………悟った。

 まずい。これは。
 流されると、体力的にもいろいろ厳しい気がする……?

「ま、まって、ラルフ?」
「リリーが裸の上に、オレのシャツ着てるとか……こんなの、反則すぎる……」
「いやいや。だって、わたしの服、回収し――ひゃっ」
「リリー、はぁー……オレ、幸せすぎるだろ」
「まっ! ほら! ラルフ! 焦げる!! きっとなにか焦げるからっ!!!」

 じゅうじゅうじゅう。
 フライパンの中身が焼け焦げてく音を聞きながら、わたしは抗議して。

「ラルフってば!」
「キスだけ、キスだけ先にっ」

 ――なんて。
 たまに後先考えずに暴走しちゃうこともあるわたしたちだけど。

 まあ、そんなところも含めてね?
 すき。……というか。
 もう、離れられないってことなんだろうな。って思うけど!

「わかったけどっ! これ以上は体が持たないっ。ムリ……っ!」

 これから先も、こうやってラルフに振り回されるんだろうなーって思うと、なんか、大変だろうなって。
 ちょっと、笑っちゃいたい気持ちで。

 ……でもまあ。ラルフとだし。
 きっとだいじょーぶ。

 わたしたちなんだかんだ、うまくやっていけるかなって、思う。




▼第2話へつづく
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

会社の後輩が諦めてくれません

碧井夢夏
恋愛
満員電車で助けた就活生が会社まで追いかけてきた。 彼女、赤堀結は恩返しをするために入社した鶴だと言った。 亀じゃなくて良かったな・・ と思ったのは、松味食品の営業部エース、茶谷吾郎。 結は吾郎が何度振っても諦めない。 むしろ、変に条件を出してくる。 誰に対しても失礼な男と、彼のことが大好きな彼女のラブコメディ。

処理中です...