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第1話 嘘から本気にさせられちゃった恋のおはなし。
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…………。
「………………マジかよ……」
わたしは、こくりと頷いた。
ラルフはずっと震えてて、わたしの腰に回されていたはずの腕が、行き場を失ったように彷徨う。
もう片方の手で、彼は顔をバツッと叩いてうな垂れた。
わたしの方を見られないようで、何度も口を開け閉めして。
「変だと思ってたんだ。全部、嘘だったのか……」
「ラルフ――」
「マジか……オレばっか浮かれて。ほんと、バカみてえ……」
「ちがうの! ラルフ!」
「ちがわねーだろ。……わかった。そうか。うん。まあ……いい思いさせてもらったわ」
「だから――」
「今日は帰れ。な? オレ、ちょっと、頭まともに働かねーから」
ラルフってば、なんでここで笑うかなあ。
……ぐしゃって、そんな苦しそうな顔で。
「話を聞いて、ラルフ!」
「帰れ――――」
「聞けって!! 言ってるでしょっ……!!!!」
胸が痛くなって、彼に飛びつく。
伝えたい気持ちがあるんだ。
思いっきり胸ぐら掴んで乗っかかると、そのまま彼をベッドに押し倒す形になって。
行け!
「……っ!」
「!」
彼の唇めがけて、自分のそれを押しつけようと飛びついたら、
ガチッて、思いっきり歯が当たった。
「~~っ!」
「~~ってえ!」
「~~~~っ!!」
「~~~~この、下手くそ!!」
「下手だもん!!!」
歯が当たったけど。
痛いけど。
もっとほかに、痛いとこ、いっぱいあるじゃん……?
「下手だもん。はじめてだもん。こんな。自分から。キスなんて――」
「!?」
「あああ、もうヤダ。泣きたくないのにー……っ」
でもぼろぼろぼろぼろ、出てきちゃう。
うそ、わたし。かっこわるい。
「え? ……お、おい。リリー」
「ぅう、っ……!」
「だいじょうぶ、大丈夫だから、泣くな。ほら。……な?」
「わたしには泣く権利なんてないのー! もうやだ。痛い。胸が痛いしっ苦しいしっ」
「いや、うん。泣きたいのはオレっつーか。あの」
「ごめんなさい」
「いやもうほんと、これ以上謝られても傷つくだけっつーか」
もうやだ。
ぜんぜん伝わらない。
もういい。涙、コイツの服で拭いてやる。
そう思って、わたしは全力でラルフに抱きついて。ベッドに転がったままの彼の胸に、ぐずぐずと顔をこすりつける。
慌てるラルフを離す気なんかなくって、ずっと、ずっと、しがみついて。
「………………すき」
「は」
「……すきになっちゃった」
「え、と。リリー……?」
「ラルフのこと、好きになったの」
「……それは、う」
「ほんと」
つたわらない。
もどかしい。
おねがいだからしんじてよ。
「嘘だったけど、本気に、させられちゃったんだってば。アンタに……!」
うーっ、て泣いて、しがみつく。
ラルフは何も言わなくて、でも、しばらくしたら、彼もそっと、本当に遠慮がちに、背中に腕をまわしてくれて。
ぽんぽんって、何度も優しく背中をなでられた。
「すき……好きなの」
「おう」
「すき。ラルフのことが、好き」
「わかった……」
「わかってないもん。好きなの……っ」
「いやまて。わかった! ちゃんと! 伝わったから……!」
伝わってない。
だって、げんに今、わたしの背中に回してたはずの腕、はずしたよね!?
問い詰めたい気持ちで顔を上げると、両手で顔を覆って、動けなくなっている彼がいた。
耳まで真っ赤になっていて……抱きついているからわかる。彼の心臓。めちゃくちゃ、あばれてる。
「それ以上伝えられると、オレ、死ぬ……」
「すき」
「……わかった、わかったから」
「だから、ちゃんとわたしの恋人に、なって?」
「っ……!」
びくって彼の体が跳ねた。
「………………だから。オレ、死ぬっつったよな……?」
「もっかい。こんどは、ちゃんとさせて」
「え? あー……なに? まって、一回オレを落ち着かせ――――」
ラルフがなにか言ってるけど、聞いてあげない。
彼の上にのしかかったまま、体を少し上にずらして、顔を覆ってる彼の両手に触れる。それをそっと押しのけると、真っ赤になってる彼と目があって。
伝われ。
つたわれ。
わたしはゆっくりと――今度はちゃんと、彼の唇にキスをした。
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