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番外編(後日談)
番外編1 ねえ、レオルド わたしをあなたのお嫁さんにしてくれる?−1 *
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* * * * * * * * * *
シェリルとレオルドの盛大な結婚式が執り行われたその夜。
シェリルはひとり、部屋で、レオルドがやってくるのを待っていた。
* * * * * * * * * *
夜。
わたしはひとりベッドの上で何度も深呼吸していた。
いつもと少し、弾力のちがうベッド。……なんていうか、それが妙に落ち着かない。
今日の結婚式を迎えるまでは、一応レオルドってばアルメニオ家のお客さまだったからね? 客間を使ってもらっていて、わたしの部屋とはかなり離れていたし、ちゃんと毎日おやすみなさいって別々に寝てたんだよ?
……まあ、その上で、夜這いとか何とか言って、レオルドってば勝手にわたしの部屋に侵入してきてたんだけど。
――だからね?
今まではずっと、結果として一緒に過ごすときはわたしの部屋を使ってたんだけど。
今日からは、レオルドとは夫婦だもの。
新しいおうちが完成するまでは、わたしはレオルドと一緒に、我が家の離れに続きのお部屋を用意して、そこで過ごす。
おうちができるまで結婚が待てないってレオルドが駄々をこねたせいでこんな中途半端なことになってるんだけど。
(でも、レオルドのせいだけじゃ、ないよね)
わたしもだ。
わたしも、ぜんぜん、待てる気なんかしない。
一日でもはやく彼のお嫁さんになって、堂々と彼と一緒に過ごしたかった。
そして、ようやく今日からわたしはレオルドのお嫁さん。その響きだけで、顔を両手で覆って脚をバタバタさせたくなっちゃう。
(レオルドのお嫁さん。レオルドの……)
夢じゃないんだ。
だっていまも、わたし、彼のお部屋にいるんだもの。……しかも、こんな格好で。
と、わたしはここで自分の格好をあらためる。
真っ白の、レースたっぷりの夜着。
シフォンの生地は透け感があって――ええと……巷では、ベビードールって名前がついているらしいんだけど。
花嫁さんにしては、ちょっとあからさますぎるかな、とか、はしたないかなって思ったんだけど、でも、やっぱり今日は特別だし。レオルドにも喜んでほしいし……。
彼ってば、普段から布が邪魔だ、距離が足りないってさ、〈隷属〉魔法が解けた今でも、すぐに夜着も剝ぎ取っちゃうから意味がないと言えばそれまでなんだけど。
がちゃ。
そうこう悩んでいると、重い扉を開ける音が聞こえて、わたしはきゅっと自分の膝を抱き込んだ。
どうやらレオルドも、お風呂から上がってきたらしい。
あらためて、こんな格好で待っているとなるとすごく恥ずかしい。
「シェリル」
扉と鍵を閉め、暗がりの中、レオルドはすぐにわたしを見つける。
その声はすでに甘さを含んでいて、わたしの胸はとくんと高鳴った。
彼はまっすぐわたしの座り込んでいるベッドの方へとやって来て、わたしの姿を目にとめた。ごくり、とわかりやすく唾を飲み込み、そしてすっと、大きなその手を差し出してくる。
「シェリル、ほら」
大好きな彼の声が聞こえて、わたしの身体は震えた。
ベッドの外から差し出されるその手を見て、わたしはすっと視線を逸らした。
彼はバスローブ姿ではあるけれど、すでに胸のあたりがゆるりとはだけていて、彼の放つ色気にドキドキしてしまったからだ。
わたしと出会ってから、レオルドは健康的な食事と鍛錬を繰り返すようになって、全盛期にかなり近い肉体を取り戻しつつあるみたい。
その、たくましい肉体に心臓が暴れてどうしようもない。
「恥ずかしがってないで、ほら。ちゃんと見せろよ。オレのために着てくれてんだろ?」
「う、うん」
彼に手を引かれて、そのままベッドの上に膝で立つ形になる。
胸の膨らみが露わになり、透け感のあるシフォンの生地がしゃらりと落ちた。
一応肌は隠れているけれど、生地がしっかり透けているから心もとない。そのうえ、彼の視線が上から下まで、じっくりと観察するように動くものだから、ますます不安になってしまう。
「シェリル」
さらに強く手を引かれた。
ベッドから一歩降りて立ち上がる。
そのままくるくる、と一周回されて、前も後ろもバッチリ見られて、もう逃げ場もない。
(そんなに、じっくり見なくてもいいじゃない)
なんて思いながら、わたしは視線を彷徨わせる。
「なにか、言ってよ」
似合ってないかも、とか、気合い入れすぎかな? とか、不安しかないのに、こんな時ばかり無言になるのはずるいと思う。
でも再び彼を見た瞬間、そんな不安は吹き飛んでしまった。
「これ以上に雄弁なモンはねえだろ」
「あー…………えっと……」
(勃ってる、ね)
まだ手しか触れあっていないのに、彼の股間はすでにしっかり主張をはじめている。
もう何度も直接目にしているのに、恥ずかしさと期待で心臓が高鳴り、わたしはあまっている方の手をきゅっと胸の前で握りこんだ。
シェリルとレオルドの盛大な結婚式が執り行われたその夜。
シェリルはひとり、部屋で、レオルドがやってくるのを待っていた。
* * * * * * * * * *
夜。
わたしはひとりベッドの上で何度も深呼吸していた。
いつもと少し、弾力のちがうベッド。……なんていうか、それが妙に落ち着かない。
今日の結婚式を迎えるまでは、一応レオルドってばアルメニオ家のお客さまだったからね? 客間を使ってもらっていて、わたしの部屋とはかなり離れていたし、ちゃんと毎日おやすみなさいって別々に寝てたんだよ?
……まあ、その上で、夜這いとか何とか言って、レオルドってば勝手にわたしの部屋に侵入してきてたんだけど。
――だからね?
今まではずっと、結果として一緒に過ごすときはわたしの部屋を使ってたんだけど。
今日からは、レオルドとは夫婦だもの。
新しいおうちが完成するまでは、わたしはレオルドと一緒に、我が家の離れに続きのお部屋を用意して、そこで過ごす。
おうちができるまで結婚が待てないってレオルドが駄々をこねたせいでこんな中途半端なことになってるんだけど。
(でも、レオルドのせいだけじゃ、ないよね)
わたしもだ。
わたしも、ぜんぜん、待てる気なんかしない。
一日でもはやく彼のお嫁さんになって、堂々と彼と一緒に過ごしたかった。
そして、ようやく今日からわたしはレオルドのお嫁さん。その響きだけで、顔を両手で覆って脚をバタバタさせたくなっちゃう。
(レオルドのお嫁さん。レオルドの……)
夢じゃないんだ。
だっていまも、わたし、彼のお部屋にいるんだもの。……しかも、こんな格好で。
と、わたしはここで自分の格好をあらためる。
真っ白の、レースたっぷりの夜着。
シフォンの生地は透け感があって――ええと……巷では、ベビードールって名前がついているらしいんだけど。
花嫁さんにしては、ちょっとあからさますぎるかな、とか、はしたないかなって思ったんだけど、でも、やっぱり今日は特別だし。レオルドにも喜んでほしいし……。
彼ってば、普段から布が邪魔だ、距離が足りないってさ、〈隷属〉魔法が解けた今でも、すぐに夜着も剝ぎ取っちゃうから意味がないと言えばそれまでなんだけど。
がちゃ。
そうこう悩んでいると、重い扉を開ける音が聞こえて、わたしはきゅっと自分の膝を抱き込んだ。
どうやらレオルドも、お風呂から上がってきたらしい。
あらためて、こんな格好で待っているとなるとすごく恥ずかしい。
「シェリル」
扉と鍵を閉め、暗がりの中、レオルドはすぐにわたしを見つける。
その声はすでに甘さを含んでいて、わたしの胸はとくんと高鳴った。
彼はまっすぐわたしの座り込んでいるベッドの方へとやって来て、わたしの姿を目にとめた。ごくり、とわかりやすく唾を飲み込み、そしてすっと、大きなその手を差し出してくる。
「シェリル、ほら」
大好きな彼の声が聞こえて、わたしの身体は震えた。
ベッドの外から差し出されるその手を見て、わたしはすっと視線を逸らした。
彼はバスローブ姿ではあるけれど、すでに胸のあたりがゆるりとはだけていて、彼の放つ色気にドキドキしてしまったからだ。
わたしと出会ってから、レオルドは健康的な食事と鍛錬を繰り返すようになって、全盛期にかなり近い肉体を取り戻しつつあるみたい。
その、たくましい肉体に心臓が暴れてどうしようもない。
「恥ずかしがってないで、ほら。ちゃんと見せろよ。オレのために着てくれてんだろ?」
「う、うん」
彼に手を引かれて、そのままベッドの上に膝で立つ形になる。
胸の膨らみが露わになり、透け感のあるシフォンの生地がしゃらりと落ちた。
一応肌は隠れているけれど、生地がしっかり透けているから心もとない。そのうえ、彼の視線が上から下まで、じっくりと観察するように動くものだから、ますます不安になってしまう。
「シェリル」
さらに強く手を引かれた。
ベッドから一歩降りて立ち上がる。
そのままくるくる、と一周回されて、前も後ろもバッチリ見られて、もう逃げ場もない。
(そんなに、じっくり見なくてもいいじゃない)
なんて思いながら、わたしは視線を彷徨わせる。
「なにか、言ってよ」
似合ってないかも、とか、気合い入れすぎかな? とか、不安しかないのに、こんな時ばかり無言になるのはずるいと思う。
でも再び彼を見た瞬間、そんな不安は吹き飛んでしまった。
「これ以上に雄弁なモンはねえだろ」
「あー…………えっと……」
(勃ってる、ね)
まだ手しか触れあっていないのに、彼の股間はすでにしっかり主張をはじめている。
もう何度も直接目にしているのに、恥ずかしさと期待で心臓が高鳴り、わたしはあまっている方の手をきゅっと胸の前で握りこんだ。
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