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〜宮殿うわさ話〜 砂の王の恋、そしてその想い人について
うわさ話1
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~うわさ話1~
ハレムに勤める肝っ玉召使い マリヤ(42)
え? リーフェ様のことかい? うんうん、いいわよねえあの方。あたしの若い頃みたいに可愛くって。
…………って、いやねえ、そこはつっこんでくれないと!
リーフェ様、少し影がおありだけど、とってもお優しいでしょ? この間もね、井戸からの水汲みに往復していたところをさあ、手伝おうかってあの可愛いお声で、呼びかけて頂いちゃった。
あっ、もちろんそのようなこと、とてもとてもお願いできませんよ。リーフェ様の真っ白でお綺麗な手にマメでもできたら、サディル様に申し訳がたちませんもの!
でもねえ。びっくりするのは、ここからなのよ。
こないだね、サディル様にも直接、リーフェ様の日中のご様子を訊ねられてさあ。その時のことをお話ししたのね?
そしたらさ、あの方、なんて仰ったと思う?
『もし、リーフェが望むなら、好きに手伝いもさせてやってくれ。彼女の好奇心には、危険がないかぎり応えてやるように』――だって!
あの方も複雑なお生まれだからでしょうねえ。
南の国にならったハレムの常識なんかでリーフェ様を縛りたくない、って仰ってるように、あたしは聞こえたよ。
サディル様ってば、昔から仲間うちには気易くて温かい方ではいらっしゃったけど、リーフェ様にはとびっきり心を砕いていらっしゃるのねえ。
……おかげで、牽制されてる男性陣は気の毒だけどね。あははは!
ふふふ、サディル様もね。もっと素直におなりになればいいのに。
このマリヤにはお見通しですよ。だって、視線がずぅーっとリーフェ様のこと追ってるもの!
ご本人は否定なさいますけどね。「宝だーっ」なんて言い張って。
でもそんなの、青月の間なんて与えておいて、苦しすぎるいいわけじゃなあい?
そもそも「妃じゃない、宝だ」なんて言葉を鵜呑みにしている臣下なんているかしら? いないでしょう? あなたも、そう思うわよね? ――気付いていないの、リーフェ様ご本人くらいじゃないかしら。
しかも! 夜ごと、リーフェ様のお部屋にご様子を見にいってらっしゃるんでしょう?
実際どうなの? そこのところさあ。
――――え? ええ? そうなのかい!?
はー…………サディルさまのこと、ますますわからなくなってきたよ、あたしは。
リーフェ様もねえ。
あんなに懸命でいらっしゃって、サディル様のこと誰よりもよく見ているはずなのに、肝心のご自分へ向けられているお気持ちには、てんで理解なさってないご様子。
あれだけ熱の籠もった視線を向けられてるってのに、どうして気がつけないのか不思議で仕方ないけど…………そうさねえ。詳しいことは知りはしないけど、リーフェ様もちょっと複雑なお生まれなのでしょう?
なかなか真っ直ぐに、愛情を感じることが難しいのかもしれないねえ。おかわいそうに。
でも、あんなに純真でお優しい方だもの。
それに、この国のために、あんな奇跡を起こしてくださった方なのよ? 幸せになっていただかなきゃ、あたしだって困るのよ。
なんだか北の――生国の、エンリエ教主国方面もきな臭くなってきたみたいだしさあ。気になること、いろいろあると思うの。
でもね、そんなときだからこそ! あたしたちが元気に働いて、リーフェ様を笑顔にしないとねえ!
――あなた、あたしよりもずーっとリーフェ様の側にいるお役目なんだから、よろしく頼むわよ。リーフェ様のこと!
ハレムに勤める肝っ玉召使い マリヤ(42)
え? リーフェ様のことかい? うんうん、いいわよねえあの方。あたしの若い頃みたいに可愛くって。
…………って、いやねえ、そこはつっこんでくれないと!
リーフェ様、少し影がおありだけど、とってもお優しいでしょ? この間もね、井戸からの水汲みに往復していたところをさあ、手伝おうかってあの可愛いお声で、呼びかけて頂いちゃった。
あっ、もちろんそのようなこと、とてもとてもお願いできませんよ。リーフェ様の真っ白でお綺麗な手にマメでもできたら、サディル様に申し訳がたちませんもの!
でもねえ。びっくりするのは、ここからなのよ。
こないだね、サディル様にも直接、リーフェ様の日中のご様子を訊ねられてさあ。その時のことをお話ししたのね?
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『もし、リーフェが望むなら、好きに手伝いもさせてやってくれ。彼女の好奇心には、危険がないかぎり応えてやるように』――だって!
あの方も複雑なお生まれだからでしょうねえ。
南の国にならったハレムの常識なんかでリーフェ様を縛りたくない、って仰ってるように、あたしは聞こえたよ。
サディル様ってば、昔から仲間うちには気易くて温かい方ではいらっしゃったけど、リーフェ様にはとびっきり心を砕いていらっしゃるのねえ。
……おかげで、牽制されてる男性陣は気の毒だけどね。あははは!
ふふふ、サディル様もね。もっと素直におなりになればいいのに。
このマリヤにはお見通しですよ。だって、視線がずぅーっとリーフェ様のこと追ってるもの!
ご本人は否定なさいますけどね。「宝だーっ」なんて言い張って。
でもそんなの、青月の間なんて与えておいて、苦しすぎるいいわけじゃなあい?
そもそも「妃じゃない、宝だ」なんて言葉を鵜呑みにしている臣下なんているかしら? いないでしょう? あなたも、そう思うわよね? ――気付いていないの、リーフェ様ご本人くらいじゃないかしら。
しかも! 夜ごと、リーフェ様のお部屋にご様子を見にいってらっしゃるんでしょう?
実際どうなの? そこのところさあ。
――――え? ええ? そうなのかい!?
はー…………サディルさまのこと、ますますわからなくなってきたよ、あたしは。
リーフェ様もねえ。
あんなに懸命でいらっしゃって、サディル様のこと誰よりもよく見ているはずなのに、肝心のご自分へ向けられているお気持ちには、てんで理解なさってないご様子。
あれだけ熱の籠もった視線を向けられてるってのに、どうして気がつけないのか不思議で仕方ないけど…………そうさねえ。詳しいことは知りはしないけど、リーフェ様もちょっと複雑なお生まれなのでしょう?
なかなか真っ直ぐに、愛情を感じることが難しいのかもしれないねえ。おかわいそうに。
でも、あんなに純真でお優しい方だもの。
それに、この国のために、あんな奇跡を起こしてくださった方なのよ? 幸せになっていただかなきゃ、あたしだって困るのよ。
なんだか北の――生国の、エンリエ教主国方面もきな臭くなってきたみたいだしさあ。気になること、いろいろあると思うの。
でもね、そんなときだからこそ! あたしたちが元気に働いて、リーフェ様を笑顔にしないとねえ!
――あなた、あたしよりもずーっとリーフェ様の側にいるお役目なんだから、よろしく頼むわよ。リーフェ様のこと!
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