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本編
1.サ終のゲームに未練たらたらです
しおりを挟むああ……終わってしまう。
とうとう、終わってしまう。
7年と163日……毎日、毎時間、わたしを支え続けてくれたこのゲームがとうとう……っ!
この日、わたし、上芝結衣は有給をとった。
だって、今日でこのゲームとお別れしなきゃいけないんだよ!?
【黎明のイルスフィア】――通称【黎イル】。
ソシャゲ群雄割拠ともいえる時代の先駆けとなった、3大スマホアプリゲームのうちのひとつ。
わたしが……サービス開始初日からずっと、たった1日も途切れることなくログインし続けてきたゲームが、今日、まもなく、サービスを終了する。
サービス終了の理由はいろいろ言われていた。
最盛期を過ぎ、メインストーリーも一旦完結し、今は一応続編的なサイドストーリーがほそぼそと配信されているくらい。
季節のイベントも7年続くとさすがにマンネリ気味だし、なによりも、メインシナリオライターが、代表とのケンカでチームから外れたとも噂されている。
イベントも内容にパンチがなくなって、すごく無難にまとまるようになってしまったし、拝金主義でガチャ排出率だって厳しい。
そのうえ、改悪と言われるシステムの導入まであり、ライトユーザー離れが進んで――。
ああ、今日の17時――サービス終了まであと1分!
目の前の画面には、見慣れた〈居室〉が映されている。
そしてそこに佇む推しの悪い笑顔を見ていたら、もう我慢できなくなってさ。ぽたり、ぽたりと画面に水滴が落ちた。
17時を過ぎたらどうなるんだろう。
リロードしたら、タイトル画面に戻されるのかな。
そこで《サービスは終了しました》なんて表示されたら、狂ってしまいそうだ。
高校生の時は、アルバイトもままならなくて、推しに何ができるわけでもなかったけど、大学生になってからは、わたしのすべてをこのゲームに捧げてきたのだ。
課金するためにアルバイトして、グッズを買いあさったり、来たるべきピックアップに備えたりしてさあ……!
URの排出率なんてほんとありえない渋さだから、限界突破させるのにいくら使ったかな。
社会人になってもそれは変わらなくて……ほんとうに、ほんとうに、わたしの全てだったのに……!
ああ、17時。
サービスが、終了する――!
耐えきれなくなって、わたしは両目を閉じた。
「……」
目を閉じてからどれくらい経ったろう。
きっともう、17時はとっくに過ぎている。
居室でタップするたびに、ぼやいたり煽ったりしてくれる推しは、もう――、
「おい」
もういな――、
「おい。いつまでそうやって固まってンだ? 導手」
ん?
導手?
導手って、つまり、このゲームで言う主人公ポジション……つまり、わたしのことなんだけど。
「ほーら。ボケッとしてると、このまま唇奪っちまうぞ?」
待って? この聞き覚えのあるCV城宮和斗……?
ハスキーな声がお腹に響く……あ、あ、あれ……?
がばって勢いよく目を開けて、わたしは驚愕した。
だって!? この鬣のような赤い髪に、赤い瞳。左眉から頬にかけて残る刀古傷を持った青年は――、
「え……!?」
「残念。ちと遅かったな? じゃ」
もらうわ。
――そう言って近づいてくる顔面凶器……!
【黎イル】でのわたしの最推し【放浪騎士】バグウィル(SSR)その人じゃないですか……!?
「ん!?」
次の瞬間には噛みつくようなキスをされ、強引に唇をこじ開けられる。
「んぅっ? んっ、ん――――ッ!?」
待って、何が起こってるの!?
え!? 現実、これ、夢!? サ終ショックで寝込んでその先で夢見てるの!?
騎士ウィル――あ、これ、彼の愛称ね? ――その騎士ウィルに、わたし、キスされてるーっ!
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