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「わ、私……その……」
「っ」
「そこに、誰も……受け入れたこと、なくて」

 つまり処女である、と宣言する。これで怖さが紛れるわけではないけれども、少しくらい、慮ってほしかった。
 ティキの目的のためには、いつかは男性のものをそこに受け入れなくてはいけない。
 子を成さなければいけない。
 その使命こそ直接ロランには告げていないものの、彼もティキの血を重要視してくれた。

「わ、私の一族は……その。最初に、受け入れたひとと……つまり……」

 添い遂げないといけない、それが常識だ。
 処女膜を貫かれたらすべてが終わるのだ。こんな、スライムなんかに……と思い、いやいやと首を横にふる。
 それでいろいろ察してくれたのだろう。
 彼は慌てた様子で、上からカパリとスライムに瓶をかぶせて閉じ込めた。そうして移動できないようにしてから、ロランは叫ぶ。

「だっ、大丈夫で、すっ!!!」
「っ」
「このスライムは、あのその、人体には本当に、無害でっ。しょ、処女膜……も、傷つけませんし……あのその、そもそも、僕っ、僕、が、責任をとりますとらせてくださいお願いしますっ」
「ろ、ロラン……」

 それはキワドイ位置でスライムに瓶をかぶせ、股間を苦しい感じにしながら言う台詞なのだろうか。
 だがしかたない。彼はロランなのだ。
 そしてロランは止まることがない。

「ぼ、僕はそのこの時代の人間の中では魔力量も多い方ですし古代種の知識も豊富な方だと思いますし、なによりも言葉を通じさせる術式は僕のオリジナルですから千年前の言語形態研究してきた僕にしか絶対できませんし。ちょ、ちょちょちょっと、その、あの、コミュニケーションなんかは得意じゃない自覚はありますけどそこそこ頭脳も悪くないですしいい物件だと思うのですっ」
「物件……?」
「ぎゃっ! ちがった。いい男。あの僕、ティキちゃんのお相手にその、どうですかね、お、お世話させてくださいって最初に言ったのはそういう意味だったりしたり、したり……」

 ごにょごにょ。
 大声で必死で訴えていたかと思うと、最後は尻すぼみになっている。

「ぼ、僕以外がティキちゃんの相手とかちょっと想像するだけで無理といいますか、そんな未来があるのだとしたら僕はその、ティキちゃんをここに閉…………めるのも辞さないと言いますかっ!
 あああああのっ、どうか、どうかはいと言ってくださいっ。僕にティキちゃんのお世話をさせてください不自由はさせませんしあのそのそれなりに財産もありますし、あとなんだ!? ええと、僕のすべてで、あなたのことを観さ…つ……ぃえっ!  知りたいといいますかずっと眺めていたいと言いますか!!!」

 つまり、これはなんだ。
 こんな状態で、求婚されている、のだろうか……。
 何よりも困惑という感情が最初にきてしまい、ティキはぱちぱちと瞬いた。

 けれども、勢いづいたロランはティキの返事など聞いてはくれなかった。がばっと腕を伸ばして、ティキに覆いかぶさるようにして顔を近づける。

「んっ……!」
「ふ、ぁ……っ」

 次の瞬間、がちりと唇を縫い止められるようなキスをされていて、ティキは瞬いた。
 強引に唇をこじ開けられると、彼の舌が容赦なく入ってくる。舌には彼が施した術式が刻まれていて、そこに直接魔力を強く流しこまれた。

「ぁ!」
「僕のっ、僕の気持ち、いっぱい。いっぱいあげますからっ。ここ、僕の魔力通りやすくなってるでしょ? 舌、いっぱい気持ちよくなりましょうねっ」

 なんて言いながら、じゅ、じゅと唾液を流し込まれる。
 暴れて脚をバタバタさせると、勢いあまって、スライムの入っていた瓶を倒してしまった。……そうだ、なかなかキワドイ場所に置いてあったんだった!

 慌ててどうにかしようとしたけれど、遅かった。直接舌から、相性のいいロランの魔力をいっぱい受けて、身体が再び一気に火照りだす。
 ロランはというと、解放されたスライムの方へと片手を伸ばし、ティキの女性器の近くへ導いた。
 ぷるんとした感触のなにかがティキの大事な部分に触れる。ロランがティキの肉襞を器用に指で広げると、ちょっとひんやりとしたぷるぷるが、ずるりと中へ入っていく。

「んっ…んんんーっ!!」
「はぁ……ティキちゃん、ティキちゃん……」

 混乱したティキを宥めるように、ロランは何度もキスをしながら、たっぷりの魔力をティキに注いでいく。

「僕たち、魔力の相性もいい……大切にするから。ね? すごく、すごく大切にする。しますからっ。ぜったい。誰よりも」
「ロラン……っ」
「君の遺伝子を未来へ繋ぐ権利を僕にくださいっ」
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