【R18】千年の眠りからさめた古代種ですが、ど変態研究者につかまっていたようです!

浅岸 久

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「ごめんなさい、ごめんなさいっ。無駄な魔力を使わせてしまいまして、はあああでもティキちゃんの魔力まぢ美……ありがとうございます!!!」
「は、はあ……」

 あのあと。
 無事に魔力脈に力が戻ったティキは、気を失ったロランに回復魔法をかけてみたわけなのだが。――目がさめた彼は挙動不審になりながら、ティキに必要以上に頭を下げまくっているわけである。

 それから場所移動を試みたが、やっぱり大変だった。
 なんせ、ティキは素っ裸。
 お互いにいろんな方向へ意識が飛んでいたため、裸であることにまで気が回っていなかったのだが――当然、その事実にはっきりと意識が向いた瞬間、ロランは鼻血で綺麗に弧を描きながら再びぶっ倒れた。

 気を失っているひとの物を奪うのは気が引けたけれども、彼が羽織っていた白い上着を引っ剥がして、ティキは身にまとうことに成功する。ついでに鼻血で残念なことになった白衣も魔法で綺麗にしてしまう。うん、魔力の廻りは好調だ。
 それから回復魔法2回目。
 目ざめたロランはやっぱりロランで、ティキが裸の上にロランの白衣をまとっていることに気がついた瞬間、はだか白衣いいいいい! と叫びながら気を失いかけた。
 というわけで、回復魔法3回目。

 …………ロランを落ち着かせるだけでものすごーく時間がかかったわけだが、それはまあいい。
 ようやくロランも、ティキと相対することに慣れてきたようである。いちいちクラクラしているものの、ようやく気絶することなく状態が安定してきた。たぶん。……これではどちらが病人かわからない。

 ただ、このロランという青年が非常に純朴(?)で、ティキに対して好感情を抱いてくれていることは理解した。
 そのあとようやく、建物の地下室から生活スペースである2階まで連れて行ってもらい、今に至るわけだ。
 そう…………ようやく。
 ようや……く……。


 …………というか、なんだこれ。
 なんだこの部屋――と、ティキはその部屋の内装を見た瞬間怖じ気づいた。

 ふりっふりのレースたっぷりの白と、あわいピンク色で誂えられた、大変少女趣味なお部屋だった。
 どの家具も大変美しい装飾がはいっており、ソファーやベッドのシーツなどの手触りも最高のひとこと。ティキが眠っている間に文化や技術がどれほどの進化をとげたのかはさっぱりわからないが、素晴らしい品質の調度品の数々である。

 くたくたになったシャツとズボンをまとった、目元すらも隠れてよく見えないぼんやりしたロランの姿からは想像もできないような完璧な部屋である。

「てぃっ、ティキ、ちゃんが、いつか目ざめたらって。僕、がんばりました!」

 目ざめなくても、お部屋を誂えて妄想ごにょごにょ、と余計なセリフが聞こえた気がするけれども、そろそろスルースキルを身につけてきたティキである。さくっと聞かなかったことにしてずかずかと部屋の中に入ると、後ろからひゃああああ! と歓喜の声が聞こえてきた。
 この部屋にティキがいる――その事実だけでロランは盛り上がれるらしい。

 ……どうもここは、ティキのためだけの部屋、ということなのだろう。
 眠りについていたときからずっと、いつか目ざめる日のことを考えて、ここまで用意してくれた……らしい。
 あまりの気合いの入りように、もはや好意という単純な言葉で表現していいのかどうかもわからなくなってきた。

 けれどもティキは族長の娘。誰かに傅かれることには慣れている。
 ひとりがけのもっふもふのソファーにこしかけて、肘掛けにそれぞれ手を置いた。うむ、たいへん座り心地がいい。
 はだか白衣でお姫さまちっくな部屋におさまっているティキの様子を見て、ロランはひゃあああとさらに大騒ぎだ。
 ばたばたばた、とその場で駆け足しつつ、そのまま、ちょっと待って!!! と慌てて隣の部屋へ立ち去った――かと思うと、光の速さでなにか四角い機械を持って帰ってきた。

「スゴい! ティキちゃん! 眠りの魔女さまーッ!!」

 パシャパシャパシャ!!!

(!? 眩しいっ!?)

 激しいフラッシュに驚きながらも、動かないで! と言われてしまえば動けない。

「ティキちゃん! 完璧すぎますっ。ちょっと小首を傾げて……そうっ!! あ、となりのうさぎさんのぬいぐるみ持って……そ、そうっ!!!」

 いわく、写真というものを撮影されているらしい。

 ……意味がわからないが、あまりにもロランが幸せそうなのでつっこまずにいることにする。
 ……いや……ほんとに、つっこまなくていいのだろうか、むしろ。
 このまま流されていたらいつまでたっても事情は聞けないぞ……と不安に思いながらも、なんだか実に楽しげな彼に水を差したくない気持ちもあり。
 みなが病に侵されていた一族の青年からはついぞ見たことのないような笑顔(ばっちり目元は隠れているけれども)が微笑ましくて、目元が緩んでしまう。

 そんな何気ないティキの笑顔に、さらにロランは発狂するわけだが、それもおかしくてティキは笑った。
 彼が満たされるまでひたすら写真撮影につきあったのち、ようやく……ほんとうの、ほんとうに、今度こそ、事情を聞くのに成功したのである……。
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