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20.玲佳の手紙
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「……一旦置いておいて後で検討しますか。俺はいいと思いますけど」
長洲さんは空気を切り替えるように言う。それからこちらを見て尋ねた。
「そうそう。星井君、野々原さん。二回目の群馬取材で何か成果はあった?」
「新しい発見はありませんでしたが、伊勢さんと話して……、あ、日記を預かってきたんです。伊勢さんに聞いたら、天野さんに会えるなら本人に渡した方がいいって」
僕はそう言いながら、リュックからノートを取り出す。そして、ぼんやりとした顔をしている社長に手渡した。
「それから、玲佳さんの持ち物だったという鏡を持ってきました」
「え?」
天野社長がぱっとこちらを見る。
「日記に書いてありましたよね。使用人の忘れ物の中に、鏡があったって。多分、その鏡だと思って、天野社長が昔使っていた部屋から持ってきてしまいました」
「……それ」
僕が鏡を取り出すと、社長は懐かしそうにそれを手に取った。
「確かに私が保管していた鏡だ。これも持ってこれなかったんだよね。処分されたとばっかり思ってた」
「ん……?あの、天野さん」
鏡をじっと眺める天野さんに、野々原さんが声をかける。
「どうしたの?野々原さん」
「天野さんのネックレスと、この鏡についてるガラス、似てませんか?」
言われて天野さんは首元のネックレスを触る。
「野々原さん、本当鋭いね。このネックレス、玲佳からもらったんだよ。もしかしたら同じお店で買ったのかもしれない」
「ちょっと外してみてくれません?」
「え?いいけど……」
社長は不思議そうな顔でネックレスを外す。野々原さんはそれを受け取りじっと見つめた。それから鏡の方も手に取る。
「この形……、もしかして」
野々原さんはぶつぶつ呟きながら、鏡を飾り付けているガラスを一つずつ剥がすように引っ張っていく。
「野々原さん、壊れちゃいますよ」
「待って……どこかに……あっ」
野々原さんの手元を見ると、赤いガラスが一つ外れていた。野々原さんは慌てる様子もなく、ネックレスからチェーンを外す。
「ちょ、ちょっと野々原さん。ガラス取れちゃいましたよ」
「いいから星井君は静かにしてて!」
野々原さんはそう言うと、鏡のガラスが外れてしまった部分にネックレスから外した黒いガラスをはめ込んだ。カチリという音が響く。野々原さんが鏡部分に手をかけると、あっさりと扉が開くように上部分が外れた。
つまり、ネックレスについていたガラスは鍵だったのだ。
「……すごい。野々原さん、なんでわかったんですか!?」
僕は興奮を抑えきれず尋ねた。やけに分厚いから箱に見えるとは思ったけれど、鍵穴らしいところなんてなかったのに。まさかガラスが外れる仕組みとは思わなかった。
「えへへー。小学生のとき、何かのアニメでこんな仕掛け見た気がして」
「すごいですよ!あ、中に何か入ってる」
「……え?星井君、ちょっと見せて」
僕が野々原さんと興奮気味に鏡を眺めていると、社長が驚いた顔で言った。社長が鏡を手に取ると、中から十数枚はありそうなカードの束が出てきて、床に落ちた。
僕たちは急いでカードを拾う。社長もカードに手を伸ばし、一枚手に取ったところで固まってしまった。
長洲さんは空気を切り替えるように言う。それからこちらを見て尋ねた。
「そうそう。星井君、野々原さん。二回目の群馬取材で何か成果はあった?」
「新しい発見はありませんでしたが、伊勢さんと話して……、あ、日記を預かってきたんです。伊勢さんに聞いたら、天野さんに会えるなら本人に渡した方がいいって」
僕はそう言いながら、リュックからノートを取り出す。そして、ぼんやりとした顔をしている社長に手渡した。
「それから、玲佳さんの持ち物だったという鏡を持ってきました」
「え?」
天野社長がぱっとこちらを見る。
「日記に書いてありましたよね。使用人の忘れ物の中に、鏡があったって。多分、その鏡だと思って、天野社長が昔使っていた部屋から持ってきてしまいました」
「……それ」
僕が鏡を取り出すと、社長は懐かしそうにそれを手に取った。
「確かに私が保管していた鏡だ。これも持ってこれなかったんだよね。処分されたとばっかり思ってた」
「ん……?あの、天野さん」
鏡をじっと眺める天野さんに、野々原さんが声をかける。
「どうしたの?野々原さん」
「天野さんのネックレスと、この鏡についてるガラス、似てませんか?」
言われて天野さんは首元のネックレスを触る。
「野々原さん、本当鋭いね。このネックレス、玲佳からもらったんだよ。もしかしたら同じお店で買ったのかもしれない」
「ちょっと外してみてくれません?」
「え?いいけど……」
社長は不思議そうな顔でネックレスを外す。野々原さんはそれを受け取りじっと見つめた。それから鏡の方も手に取る。
「この形……、もしかして」
野々原さんはぶつぶつ呟きながら、鏡を飾り付けているガラスを一つずつ剥がすように引っ張っていく。
「野々原さん、壊れちゃいますよ」
「待って……どこかに……あっ」
野々原さんの手元を見ると、赤いガラスが一つ外れていた。野々原さんは慌てる様子もなく、ネックレスからチェーンを外す。
「ちょ、ちょっと野々原さん。ガラス取れちゃいましたよ」
「いいから星井君は静かにしてて!」
野々原さんはそう言うと、鏡のガラスが外れてしまった部分にネックレスから外した黒いガラスをはめ込んだ。カチリという音が響く。野々原さんが鏡部分に手をかけると、あっさりと扉が開くように上部分が外れた。
つまり、ネックレスについていたガラスは鍵だったのだ。
「……すごい。野々原さん、なんでわかったんですか!?」
僕は興奮を抑えきれず尋ねた。やけに分厚いから箱に見えるとは思ったけれど、鍵穴らしいところなんてなかったのに。まさかガラスが外れる仕組みとは思わなかった。
「えへへー。小学生のとき、何かのアニメでこんな仕掛け見た気がして」
「すごいですよ!あ、中に何か入ってる」
「……え?星井君、ちょっと見せて」
僕が野々原さんと興奮気味に鏡を眺めていると、社長が驚いた顔で言った。社長が鏡を手に取ると、中から十数枚はありそうなカードの束が出てきて、床に落ちた。
僕たちは急いでカードを拾う。社長もカードに手を伸ばし、一枚手に取ったところで固まってしまった。
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