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14.鳩羽ひまりの日記⑤
2017/4/7
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久しぶりに日記を書く。あの火災から9年が経った。
石鷲見の屋敷を出てから、前橋の実家に戻った。母には石鷲見家のことや火災のことについて何度も聞かれたけれど、曖昧に濁した。
以前働いていた家事代行の仕事をしばらく続け、その後私は出版社の仕事に就いた。出版社を選んだのは、自分で烏丸玲佳の事件の真実を世間に公表できるのではないかと考えたからだ。
どこかの雑誌に情報提供しに行くことも考えたが、火鷹悦吏子の殺人事件が起こった時のメイドKの扱われ方を思い出すと、とても人には任せられないと思った。しかし、自分の思い通りの記事を書くチャンスが回ってくることはなかった。
9年の間に、結婚もした。同じ職場の5歳年上の男性とだ。結婚なんてするつもりはなかったのに、大らかな雰囲気が玲佳に似ている気がして、彼といれば玲佳がいた日々が戻ってくるのではないかと、馬鹿なことを考えてしまった。
しかし、世界は憎しみを糧に生きてきた私が平穏に暮らすのを許すほど甘くない。
結婚から一年経つ前に、夫は事故で亡くなった。
私はその時、自分が死神になったような気がした。幼少期の父の事件から、玲佳、夫まで。私のそばにいる人間はみんな死んでしまう。
しばらく何も考えられない時期が続いて、ある日ふと会社を作ってみようかと考えた。
今の会社では自由に記事を書けない。それなら自分で作ればいい。それで、烏丸玲佳は殺人などしていないと、真実を知らしめる。
ろくな趣味もなく欲しいものもないので、使うことのないお金が貯まっていた。夫の遺産に手を付ける必要もない。会社を辞めて、貯金をもとに会社を作った。下北沢の古いビルにオフィスを置いた、一人だけの出版社。
一人だけで運営していくつもりだったのに、偶然会った学生時代の後輩が入りたいと言ってきた。私の自己満足のための会社だからと何度も断ったのに、その子は働いていた会社を辞めてまで頼んでくるから、仕方なく了承した。
玲佳の記事を完成させたら、全て終わりにするつもりだというのに、困ったものだ。しかし、止めた私に責任を負う義務はない。
事件の真相を多くの人に知ってもらうにはある程度の知名度が必要だ。
私は子供の頃から調べてきた殺人事件関連の情報を膨らませ、ひたすら記事にした。無理やり入社してきた後輩は意外にも優秀で、雑誌を広めるのに貢献してくれた。
けれどまだ足りない。もっと誰もが知る雑誌にしなくては。
私はいつか必ず、隠されたものを表に出す。そして、玲佳の名誉を回復する。全てを終わりにするその日までは、踏みとどまらねば。
石鷲見の屋敷を出てから、前橋の実家に戻った。母には石鷲見家のことや火災のことについて何度も聞かれたけれど、曖昧に濁した。
以前働いていた家事代行の仕事をしばらく続け、その後私は出版社の仕事に就いた。出版社を選んだのは、自分で烏丸玲佳の事件の真実を世間に公表できるのではないかと考えたからだ。
どこかの雑誌に情報提供しに行くことも考えたが、火鷹悦吏子の殺人事件が起こった時のメイドKの扱われ方を思い出すと、とても人には任せられないと思った。しかし、自分の思い通りの記事を書くチャンスが回ってくることはなかった。
9年の間に、結婚もした。同じ職場の5歳年上の男性とだ。結婚なんてするつもりはなかったのに、大らかな雰囲気が玲佳に似ている気がして、彼といれば玲佳がいた日々が戻ってくるのではないかと、馬鹿なことを考えてしまった。
しかし、世界は憎しみを糧に生きてきた私が平穏に暮らすのを許すほど甘くない。
結婚から一年経つ前に、夫は事故で亡くなった。
私はその時、自分が死神になったような気がした。幼少期の父の事件から、玲佳、夫まで。私のそばにいる人間はみんな死んでしまう。
しばらく何も考えられない時期が続いて、ある日ふと会社を作ってみようかと考えた。
今の会社では自由に記事を書けない。それなら自分で作ればいい。それで、烏丸玲佳は殺人などしていないと、真実を知らしめる。
ろくな趣味もなく欲しいものもないので、使うことのないお金が貯まっていた。夫の遺産に手を付ける必要もない。会社を辞めて、貯金をもとに会社を作った。下北沢の古いビルにオフィスを置いた、一人だけの出版社。
一人だけで運営していくつもりだったのに、偶然会った学生時代の後輩が入りたいと言ってきた。私の自己満足のための会社だからと何度も断ったのに、その子は働いていた会社を辞めてまで頼んでくるから、仕方なく了承した。
玲佳の記事を完成させたら、全て終わりにするつもりだというのに、困ったものだ。しかし、止めた私に責任を負う義務はない。
事件の真相を多くの人に知ってもらうにはある程度の知名度が必要だ。
私は子供の頃から調べてきた殺人事件関連の情報を膨らませ、ひたすら記事にした。無理やり入社してきた後輩は意外にも優秀で、雑誌を広めるのに貢献してくれた。
けれどまだ足りない。もっと誰もが知る雑誌にしなくては。
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