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13.星井の知らない話(3)
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「わかった。じゃあ、私が一方的に送ることにする!それならいいでしょ?」
「は?」
「そうだなぁ、じゃあカードにしよう。これから定期的に一言メッセージみたいなのを送ることにする。返事はいらないから。ね、それならいいでしょ?」
「そんなことしてなんになるの」
「うーん、自己満足……?」
姉は首をかしげて言う。
「……勝手にすれば。返事しないからね」
もう話を終わらせたかったので、私は仕方なく了承した。
「いいよ!楽しみにしててね!」
「楽しみにはしないけど」
姉は苦い顔をする私に構わず、機嫌よく去って行った。
口調こそ大らかだけれど強引な姉に呆れていた。同時に、さっきまで犯人が死んだことで絶望していた気持ちが、どこかへ行ってしまったことにも気づいていた。
姉は本当にカードを渡してくるようになった。頻度は決まっておらず、三日連続で渡してきたかと思えば、二週間間が空いたり、気まぐれだった。内容は他愛もないことばかりで、何を買ったとか、どこへ遊びに行ったとか、どんなテレビ番組を見たかなんてことがひたすら書かれていた。
質問形式のカードを渡されることもあったけれど、約束通り返事はしなかった。それでも姉は飽きずに、カードを押し付けてくる。
めんどくさいと思った。こちらに関心を向けてくるのが、うっとうしくてたまらない。なのに、私はうっとうしいはずのカードを捨てられなくて、机の奥にしまい込んだ。
***
ある日、姉がA村にあるお屋敷で、住み込みで働くことになったと言い出した。
姉をとても可愛がっている義父と母は、最初反対していた。
「住み込みだなんて。今まで通り、こっちで仕事をすればいいだろう」
「そうよ。いなくなったら寂しいわ」
「でも、空気がきれいで、広いお屋敷で、とても楽しそうなの!面接のときに会ったお屋敷の人たちもいい人たちだったし」
姉が甘えるようにお願いしますと言うと、二人は折れたようだった。
私はテーブルで話し合う三人の様子を、少し離れたところからじっと見ていた。
「向こうからもカード送るね!」
話し合いが終わり、義父と母が部屋から出て行くと、姉は私の肩に手を置いて言った。
「いらないって。面倒だし送料もかかるでしょ。これを機にやめたら?」
「相変わらずつれないなぁー。私が送りたいからいいの!待っててね、お屋敷での話色々教えてあげるから!」
私が顔をしかめて断ったのに、姉はニコニコ笑って聞き入れなかった。
出発当日も、姉はひだまりのような笑顔で支度をしていた。姉は駅まで送ると言う両親に連れられ、玄関に出て行く。私は珍しく、玄関まで見送りに出た。
「しばらく会えないね。でも、お休みをもらったら帰ってくるから」
「そう。がんばって」
「ありがとう!がんばる!」
姉はトランクを抱え、嬉しそうに言う。
「じゃあ、行ってくるね。ひまり!」
「いってらっしゃい」
私は大きく手を振りながら去っていく姉の玲佳を、玄関の前に立ちじっと見つめていた。この先、もう二度と会うことのない、姉を。
「は?」
「そうだなぁ、じゃあカードにしよう。これから定期的に一言メッセージみたいなのを送ることにする。返事はいらないから。ね、それならいいでしょ?」
「そんなことしてなんになるの」
「うーん、自己満足……?」
姉は首をかしげて言う。
「……勝手にすれば。返事しないからね」
もう話を終わらせたかったので、私は仕方なく了承した。
「いいよ!楽しみにしててね!」
「楽しみにはしないけど」
姉は苦い顔をする私に構わず、機嫌よく去って行った。
口調こそ大らかだけれど強引な姉に呆れていた。同時に、さっきまで犯人が死んだことで絶望していた気持ちが、どこかへ行ってしまったことにも気づいていた。
姉は本当にカードを渡してくるようになった。頻度は決まっておらず、三日連続で渡してきたかと思えば、二週間間が空いたり、気まぐれだった。内容は他愛もないことばかりで、何を買ったとか、どこへ遊びに行ったとか、どんなテレビ番組を見たかなんてことがひたすら書かれていた。
質問形式のカードを渡されることもあったけれど、約束通り返事はしなかった。それでも姉は飽きずに、カードを押し付けてくる。
めんどくさいと思った。こちらに関心を向けてくるのが、うっとうしくてたまらない。なのに、私はうっとうしいはずのカードを捨てられなくて、机の奥にしまい込んだ。
***
ある日、姉がA村にあるお屋敷で、住み込みで働くことになったと言い出した。
姉をとても可愛がっている義父と母は、最初反対していた。
「住み込みだなんて。今まで通り、こっちで仕事をすればいいだろう」
「そうよ。いなくなったら寂しいわ」
「でも、空気がきれいで、広いお屋敷で、とても楽しそうなの!面接のときに会ったお屋敷の人たちもいい人たちだったし」
姉が甘えるようにお願いしますと言うと、二人は折れたようだった。
私はテーブルで話し合う三人の様子を、少し離れたところからじっと見ていた。
「向こうからもカード送るね!」
話し合いが終わり、義父と母が部屋から出て行くと、姉は私の肩に手を置いて言った。
「いらないって。面倒だし送料もかかるでしょ。これを機にやめたら?」
「相変わらずつれないなぁー。私が送りたいからいいの!待っててね、お屋敷での話色々教えてあげるから!」
私が顔をしかめて断ったのに、姉はニコニコ笑って聞き入れなかった。
出発当日も、姉はひだまりのような笑顔で支度をしていた。姉は駅まで送ると言う両親に連れられ、玄関に出て行く。私は珍しく、玄関まで見送りに出た。
「しばらく会えないね。でも、お休みをもらったら帰ってくるから」
「そう。がんばって」
「ありがとう!がんばる!」
姉はトランクを抱え、嬉しそうに言う。
「じゃあ、行ってくるね。ひまり!」
「いってらっしゃい」
私は大きく手を振りながら去っていく姉の玲佳を、玄関の前に立ちじっと見つめていた。この先、もう二度と会うことのない、姉を。
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