29 / 75
7.鳩羽ひまりの日記②
2007/5/16
しおりを挟む
今日は嬉しいことがありました。石鷲見家の方々が、旅行に誘ってくださったのです。
前にも書いた通り、石鷲見家はホテルを経営しています。今年の三月にオープンしたばかりのホテルがあるので、視察も兼ねて泊まりに行くことになったのだそうです。
今日の夜、夕食の配膳を終え、下がろうとしたら朱莉様に呼び止められました。
「ひまりさんも一緒に行こうよ。家族だけで行っても暇なんだもん。私の荷物持ちをして」
「あら、それはいいわ。鳩羽さんもいらっしゃいよ。おうちが大変みたいだし、あまり旅行に行く機会もなかったんじゃないの?」
朱莉様と奥様は私を温泉に連れて行こうだとか、ドライブに連れていこうだなんて言ってはしゃいでいます。
「朱莉、荷物持ちなんて鳩羽さんに失礼だろ」
緋音様が朱莉様の方を向いてたしなめます。それから私の方に顔を向けました。
「鳩羽さん、すみません。朱莉は素直に誘うのが恥ずかしいだけなんです。鳩羽さんさえよければ、ぜひ日ごろの疲れをとる気持ちで遊びに来てください。ね、父さん」
「ああ。たまには休息も必要だろう」
旦那様はあっさり了承します。
「ちょっと待ってください」
和やかな食卓に、硬い声が響きました。
「何よ。紅介お兄様、反対なの?」
「当たり前だ。なぜ使用人と一緒に旅行なんか行かなきゃならないんだ」
「いいじゃないの。紅介。鳩羽さんはいつもがんばっているし」
「そういう問題ではありません。どうしても連れて行くなら、僕は行きませんから、みんなでそのメイドを連れて行ってきてください」
「何を言っている。紅介。視察も兼ねていると言ってあるだろう」
言い争いが続きましたが、結局紅介様が折れる形でその場は収まりました。何しろ、四対一です。
私は不機嫌な顔でこちらを見る紅介様に申し訳ない思いでお部屋を後にしました。けれど、石鷲見家の皆さんが旅行に誘ってくれたことに対して、喜びを抑えきれませんでした。
前にも書いた通り、石鷲見家はホテルを経営しています。今年の三月にオープンしたばかりのホテルがあるので、視察も兼ねて泊まりに行くことになったのだそうです。
今日の夜、夕食の配膳を終え、下がろうとしたら朱莉様に呼び止められました。
「ひまりさんも一緒に行こうよ。家族だけで行っても暇なんだもん。私の荷物持ちをして」
「あら、それはいいわ。鳩羽さんもいらっしゃいよ。おうちが大変みたいだし、あまり旅行に行く機会もなかったんじゃないの?」
朱莉様と奥様は私を温泉に連れて行こうだとか、ドライブに連れていこうだなんて言ってはしゃいでいます。
「朱莉、荷物持ちなんて鳩羽さんに失礼だろ」
緋音様が朱莉様の方を向いてたしなめます。それから私の方に顔を向けました。
「鳩羽さん、すみません。朱莉は素直に誘うのが恥ずかしいだけなんです。鳩羽さんさえよければ、ぜひ日ごろの疲れをとる気持ちで遊びに来てください。ね、父さん」
「ああ。たまには休息も必要だろう」
旦那様はあっさり了承します。
「ちょっと待ってください」
和やかな食卓に、硬い声が響きました。
「何よ。紅介お兄様、反対なの?」
「当たり前だ。なぜ使用人と一緒に旅行なんか行かなきゃならないんだ」
「いいじゃないの。紅介。鳩羽さんはいつもがんばっているし」
「そういう問題ではありません。どうしても連れて行くなら、僕は行きませんから、みんなでそのメイドを連れて行ってきてください」
「何を言っている。紅介。視察も兼ねていると言ってあるだろう」
言い争いが続きましたが、結局紅介様が折れる形でその場は収まりました。何しろ、四対一です。
私は不機嫌な顔でこちらを見る紅介様に申し訳ない思いでお部屋を後にしました。けれど、石鷲見家の皆さんが旅行に誘ってくれたことに対して、喜びを抑えきれませんでした。
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
有栖と奉日本『翔べないツバサ』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第九話。
天使の持つ『レシエントメンテ』の対抗策となる『デスペラード』
それを持つ高良組とユースティティアは交渉を行うが、引き渡す為に『とある条件』を出されてしまう。
それはある殺害計画を未然に防ぐことで――誰が誰を殺すのか解らないままタイムリミットが迫る中、ユースティティアは条件をクリアし、『デスペラード』を手に入れることができるのか。
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(X:@studio_lid)
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】闇堕ちメモリアル
月狂 紫乃/月狂 四郎
ミステリー
とある事件を機にホスト稼業から足を洗った織田童夢は、それまでの生き方を反省して慈善事業に勤しむこととなった。
だが現実は甘くなく、副業をしないと食っていけなくなった。不本意ながらも派遣でコールセンターへ勤務しはじめた童夢は、同僚の美女たちと出会って浮かれていた。
そんな折、中年男性の同僚たちが行方不明になりはじめる。そのうちの一人が無残な他殺体で発見される。
犯人は一体どこに。そして、この裏に潜む本当の目的とは……?
月狂四郎が送るヤンデレミステリー。君はこの「ゲーム」に隠された意図を見破れるか。
※表紙はAIにて作成しました。
※全体で12万字ほど。可能であればブクマやコンテストの投票もお願いいたします。
参考文献
『ホス狂い ~歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る~』宇都宮直子(小学館)
彼女が愛した彼は
朝飛
ミステリー
美しく妖艶な妻の朱海(あけみ)と幸せな結婚生活を送るはずだった真也(しんや)だが、ある時を堺に朱海が精神を病んでしまい、苦痛に満ちた結婚生活へと変わってしまった。
朱海が病んでしまった理由は何なのか。真相に迫ろうとする度に謎が深まり、、、。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる