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7.鳩羽ひまりの日記②
2007/3/6
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気持ちを切り替えて、今日から改めて石鷲見家の皆さんと仲良くできるようにがんばってみようと思います。
何はともあれ、挨拶からです。皆さん私とすれ違うと不機嫌そうに顔をしかめますが、構わずに明るい声で挨拶します。
「おはようございます!」
「ああ」
廊下の掃除中、起きてきた旦那様に元気に挨拶をしましたが、ちらりと目を向けてうなずいただけで行ってしまいました。まだまだ道のりは遠そうです。
旦那様は反応してくれるだけまだいい方です。奥様や紅介様、朱莉様には完全に無視されてしまいますから。
「おはようございます!」
「ああ、おはようございます。今日も元気ですね。鳩羽さん」
玄関を掃除していたら、スーツ姿の緋音様がやって来ました。石鷲見家の方々はそっけないですが、緋音様だけは毎回こちらを見て言葉を返してくれます。
「緋音様はお出かけですか?」
「はい。三鳥野学園の方へ」
また、三鳥野学園です。この前旦那様にお使いを頼まれたときも、三鳥野学園の名前が出てきました。
「石鷲見家の方って三鳥野学園の関わりが深いんですね」
「関りが深いというほどでもありませんが……。兄弟三人とも卒業生で、父が学園長と知り合いなので、行く機会は多いかもしれませんね」
「兄弟三人ともあの名門校を卒業なんて、私には想像できない世界です。私は小中高とずっと家の近くの公立でしたから」
「伸び伸びできそうで、それもいいですね」
緋音様はそう言って笑いました。そうしていってきます、と言って去っていきます。
「ちょっと」
緋音様の後ろ姿を見送ると、後ろから呼ばれました。
「朱莉様」
「無駄話して喋るのはやめてちょうだい。庭が汚れてたわよ」
「はい!ただいま」
朱莉様が文句をつけてくるのはいつものことです。私は元気よく返事をして、箒とちりとりを持って庭へ出ました。
庭には、割れた植木鉢が、一、二……数えると、二十個以上はありました。台風でもないのに、こんなに一気に鉢植えが割れるなんて考えられません。朱莉様の方を見たら、ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべていました。
「こんな見苦しい状態になっちゃって。お客様に見られたら大変だわ。さっさと片付けて」
「わかりました!ちゃちゃっと片付けちゃいますね!」
笑顔で言ったら、朱莉様面食らったような顔をしていました。
「ねぇ、この鉢植えなんで割れてるか気にならないの?」
私が花を取り除いて鉢植えの破片を拾う横で、朱莉様は言います。
「さぁ。どうしてでしょう?不思議ですね」
「私がやったのよ。あんたが困ればいいと思って」
朱莉様の方を向くと、挑発的な表情でこちらを見ています。
「それはそれは。でも、鉢植えを割るのはよしてくださいね。怪我をしたら大変ですから」
「は?いい子ぶっちゃってばかじゃないの」
朱莉様は私の反応が気に入らなかったのか、乱暴な足取りで行ってしまいました。
全部で二十三個の鉢植えの片付けは大変でしたが、その日はそれ以上朱莉様の妨害がなかったので、割と早めに仕事を終えることができました。この調子で明日もできたらいいと思います。
何はともあれ、挨拶からです。皆さん私とすれ違うと不機嫌そうに顔をしかめますが、構わずに明るい声で挨拶します。
「おはようございます!」
「ああ」
廊下の掃除中、起きてきた旦那様に元気に挨拶をしましたが、ちらりと目を向けてうなずいただけで行ってしまいました。まだまだ道のりは遠そうです。
旦那様は反応してくれるだけまだいい方です。奥様や紅介様、朱莉様には完全に無視されてしまいますから。
「おはようございます!」
「ああ、おはようございます。今日も元気ですね。鳩羽さん」
玄関を掃除していたら、スーツ姿の緋音様がやって来ました。石鷲見家の方々はそっけないですが、緋音様だけは毎回こちらを見て言葉を返してくれます。
「緋音様はお出かけですか?」
「はい。三鳥野学園の方へ」
また、三鳥野学園です。この前旦那様にお使いを頼まれたときも、三鳥野学園の名前が出てきました。
「石鷲見家の方って三鳥野学園の関わりが深いんですね」
「関りが深いというほどでもありませんが……。兄弟三人とも卒業生で、父が学園長と知り合いなので、行く機会は多いかもしれませんね」
「兄弟三人ともあの名門校を卒業なんて、私には想像できない世界です。私は小中高とずっと家の近くの公立でしたから」
「伸び伸びできそうで、それもいいですね」
緋音様はそう言って笑いました。そうしていってきます、と言って去っていきます。
「ちょっと」
緋音様の後ろ姿を見送ると、後ろから呼ばれました。
「朱莉様」
「無駄話して喋るのはやめてちょうだい。庭が汚れてたわよ」
「はい!ただいま」
朱莉様が文句をつけてくるのはいつものことです。私は元気よく返事をして、箒とちりとりを持って庭へ出ました。
庭には、割れた植木鉢が、一、二……数えると、二十個以上はありました。台風でもないのに、こんなに一気に鉢植えが割れるなんて考えられません。朱莉様の方を見たら、ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべていました。
「こんな見苦しい状態になっちゃって。お客様に見られたら大変だわ。さっさと片付けて」
「わかりました!ちゃちゃっと片付けちゃいますね!」
笑顔で言ったら、朱莉様面食らったような顔をしていました。
「ねぇ、この鉢植えなんで割れてるか気にならないの?」
私が花を取り除いて鉢植えの破片を拾う横で、朱莉様は言います。
「さぁ。どうしてでしょう?不思議ですね」
「私がやったのよ。あんたが困ればいいと思って」
朱莉様の方を向くと、挑発的な表情でこちらを見ています。
「それはそれは。でも、鉢植えを割るのはよしてくださいね。怪我をしたら大変ですから」
「は?いい子ぶっちゃってばかじゃないの」
朱莉様は私の反応が気に入らなかったのか、乱暴な足取りで行ってしまいました。
全部で二十三個の鉢植えの片付けは大変でしたが、その日はそれ以上朱莉様の妨害がなかったので、割と早めに仕事を終えることができました。この調子で明日もできたらいいと思います。
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