三角形とはちみつ色の夢

睦月

文字の大きさ
上 下
67 / 72
24.合わせない人

3

しおりを挟む

「じゃあ、私はそろそろ行こうかな。あげはの部活の模擬店にでも」
「あっ。待って柚希ちゃん。もうすぐ咲良が来るかも」


ひとしきり写真も見終わったので紗雪と高坂君に別れを告げようとすると、引き止められた。


「咲良が?」
「うん。咲良にうちのクラス見に来いよって今朝誘ったんだ。4時頃には来るって言ってたのにまだ来ないなぁ」


高坂君はスマホを取り出して、咲良に電話を掛ける。


「あっ。もしもし、咲良?早く来いよー。え?もう来てる?」


高坂君がドアの方を見る。つられてそちらに視線を向けると、若干息を切らした咲良が入ってくるところだった。


「咲良ー。遅かったじゃん」
「なんか歩いてたら放送部の人に教室連れて行かれて……。ドラマ見せられてなかなか出してもらえなかった」
「あー、人入ってなさそうだったもんな。おもしろかった?」
「うーん……。手作り感がすごかったとしか」


咲良は疲れ切ったような顔をしている。そして、こっちを見てあ、と言った。


「柚希も来てたの?」
「うん。紗雪に会いに」
「そっか。奥山さん、高坂と一緒のクラスだったね」


咲良が紗雪をちらっと見る。紗雪はうん、と頷いた後で言った。


「汐見君、高坂君の写真見てあげなよ」
「え、うん。どれ?」
「これこれ。初等部の!咲良との思い出!」


高坂君は生き生きとした顔で写真を指さす。

咲良は写真を見て、それからテーマを見て、うざったそうな顔で高坂君を見た。高坂君は意にも介さず、当時の思い出をペラペラと話している。


そんな二人を横目に、紗雪がひそひそ話しかけてきた。


「柚ちゃん、この後誰かと回る約束してるの?」
「ううん。特にしてない」
「じゃあ、汐見君誘いなよ!ちょうどいいじゃん!」


紗雪が目をきらきらさせて言う。


「えーっと……」


私が迷っていると、高坂君と話し終えた咲良がこちらへやってきた。


「柚希。この後空いてる?」
「え、うん」
「じゃあ一緒に回ろうよ。柚希と行きたいところがあるんだ」


咲良はにっこり笑って言った。隣の紗雪はにやけた顔でこっちを見ていた。
しおりを挟む

処理中です...