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5.わからない
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「咲良―。何?瑠璃ちゃんの話してるの?」
後ろから大きな声が聞こえて、咲良の肩に腕が回された。
「あっ。高坂君」
「やっほー。柚希ちゃん」
高坂君は、咲良と話しているのをよく見かける派手めな男子だ。背が高くて、茶色の髪を後ろで刈り上げている。一重瞼に薄い唇が、まるで日本画の中に描かれた人みたい。けれど服装や纏う雰囲気にはモデルのような華やかさが合って、アンバランスさが印象的だった。
咲良とは真逆のタイプに見えるけれどなぜか仲が良いようで、よく一方的に話し込んでいるのを見かける。
「柚希ちゃんってD組じゃなかったっけ?」
「咲良が見えたから残っちゃった。すぐ戻るよ」
「そっか。いやいやいつもありがとね?こんなめんどくさい奴に構ってくれて」
「高坂君こそ。咲良の不愛想にめげもせず……」
「おい何なんだよその会話」
咲良がうざったそうに私と高坂君の茶番を見ている。
「ところで咲良。転校生の上原秋知ってる?あのイケメンの」
「え?ああ、うん。四月に始業式で紹介されてたし」
「その上原くんがさ。瑠璃ちゃんとつき合ってるみたいなんだよね」
「は?」
「え?」
「あ、やっぱり知らなかった?」
高坂君は口に手を当てて、にやにやしながら咲良を見ている。
上原君はうちの学校には珍しい転校生だ。しかも、前は普通の公立中学にいたという。日焼けした肌に細身だけどがっしりした体格が健康的で、花守にはあまりいないタイプだ。
いつも人懐っこい笑顔を浮かべているからか、整った顔をしているからか、早くも彼は人気者で、クラスの子の中にも何人かファンがいるのを知っている。
あー、上原君だったら中園さんと並んでも様になるんだろうなぁ。やっぱり美女は美男を選ぶのかー、なんて二人の並んだ姿を思い浮かべてうっとりしてしまった。しかし、咲良のことを思い出してはっとする。
心配だからとか言っていたけれど、結局中園さんのことが好きだから放っておけないってことなんだろうとずっと思ってた。そうでなきゃ、あの執心っぷりに説明がつかないもの。
心配になって咲良の顔を見ると、意外にも平然としていた。
「へー……。そうなんだ。この前会ったときは、瑠璃、何も言ってなかったのに」
「いや、まぁ噂だけどね。ていうか、咲良、ショックじゃないの?瑠璃ちゃん取られちゃって」
咲良は少し考えてから言った。
「ちょっと複雑かな。でも、瑠璃が誰を好きだろうと、今まで通り瑠璃が困ったら助けに行くだけだし」
「ははっ。かっこいー」
高坂君が拍手をするので、咲良は嫌そうな顔をしている。
それにしても、この前会ったときって何だろう。てっきり最近は全く接点がなくなったのかと思っていたのに。
「でも辛くないの?好きな人に彼氏が出来ちゃって」
高坂君は結構ズバズバ聞くので、はたで聞いてるこっちがハラハラしてしまう。
「好き……?瑠璃のこと?いや、別に僕は好きなわけじゃないよ?」
「え?」
高坂君と私の声が重なった。
高坂君が眉根を寄せて困った顔でこちらを見ている。私も同じような顔をしていたかもしれない。思わず尋ねていた。
後ろから大きな声が聞こえて、咲良の肩に腕が回された。
「あっ。高坂君」
「やっほー。柚希ちゃん」
高坂君は、咲良と話しているのをよく見かける派手めな男子だ。背が高くて、茶色の髪を後ろで刈り上げている。一重瞼に薄い唇が、まるで日本画の中に描かれた人みたい。けれど服装や纏う雰囲気にはモデルのような華やかさが合って、アンバランスさが印象的だった。
咲良とは真逆のタイプに見えるけれどなぜか仲が良いようで、よく一方的に話し込んでいるのを見かける。
「柚希ちゃんってD組じゃなかったっけ?」
「咲良が見えたから残っちゃった。すぐ戻るよ」
「そっか。いやいやいつもありがとね?こんなめんどくさい奴に構ってくれて」
「高坂君こそ。咲良の不愛想にめげもせず……」
「おい何なんだよその会話」
咲良がうざったそうに私と高坂君の茶番を見ている。
「ところで咲良。転校生の上原秋知ってる?あのイケメンの」
「え?ああ、うん。四月に始業式で紹介されてたし」
「その上原くんがさ。瑠璃ちゃんとつき合ってるみたいなんだよね」
「は?」
「え?」
「あ、やっぱり知らなかった?」
高坂君は口に手を当てて、にやにやしながら咲良を見ている。
上原君はうちの学校には珍しい転校生だ。しかも、前は普通の公立中学にいたという。日焼けした肌に細身だけどがっしりした体格が健康的で、花守にはあまりいないタイプだ。
いつも人懐っこい笑顔を浮かべているからか、整った顔をしているからか、早くも彼は人気者で、クラスの子の中にも何人かファンがいるのを知っている。
あー、上原君だったら中園さんと並んでも様になるんだろうなぁ。やっぱり美女は美男を選ぶのかー、なんて二人の並んだ姿を思い浮かべてうっとりしてしまった。しかし、咲良のことを思い出してはっとする。
心配だからとか言っていたけれど、結局中園さんのことが好きだから放っておけないってことなんだろうとずっと思ってた。そうでなきゃ、あの執心っぷりに説明がつかないもの。
心配になって咲良の顔を見ると、意外にも平然としていた。
「へー……。そうなんだ。この前会ったときは、瑠璃、何も言ってなかったのに」
「いや、まぁ噂だけどね。ていうか、咲良、ショックじゃないの?瑠璃ちゃん取られちゃって」
咲良は少し考えてから言った。
「ちょっと複雑かな。でも、瑠璃が誰を好きだろうと、今まで通り瑠璃が困ったら助けに行くだけだし」
「ははっ。かっこいー」
高坂君が拍手をするので、咲良は嫌そうな顔をしている。
それにしても、この前会ったときって何だろう。てっきり最近は全く接点がなくなったのかと思っていたのに。
「でも辛くないの?好きな人に彼氏が出来ちゃって」
高坂君は結構ズバズバ聞くので、はたで聞いてるこっちがハラハラしてしまう。
「好き……?瑠璃のこと?いや、別に僕は好きなわけじゃないよ?」
「え?」
高坂君と私の声が重なった。
高坂君が眉根を寄せて困った顔でこちらを見ている。私も同じような顔をしていたかもしれない。思わず尋ねていた。
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