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第二章
03 お衣裳とお片付け
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「そうだわ、陛下のお衣装のことなんだけど」
「うん」
セラが座り直したのに、よし、愚痴聞き終了、とホッとしながらザイが聞く。
「出来るだけゆったりしたお衣装を選んでるんだけど、やっぱりお召しになって下さらないのよね陛下」
悩むセラに、ザイは僕の予想だけど、と断って言う。
「陛下はゆったりしたお衣装ってお好きではないかも」
「ええ? 男の方って、首元がきついのをすごく嫌がるのでは?」
その心は? と詰め寄るセラにたじろぎながらザイは説明した。
「陛下は長く戦場におられたから、防具を着慣れてらっしゃる。むしろ首元が空いているのは落ち着かないと思われるんじゃないかな?」
「ああ、なるほど!」
首と言う急所を晒すことは、返ってお嫌かも、と言うザイにセラは納得する。
「あ、じゃあ袖が長いのは?」
「うーん、長いのは案外大丈夫かも」
「そうなの? でもそうね、お裾やお袖を捌くのが本当にお見事だもの」
女官の中には見とれるものもいるのだとセラが言う。
「剣をお使いになるものね、もしかして肩まわりが重いのがお嫌かしら? それなら組み合わせでなんとかなるかも」
指を折ってセラは思案をしている。
「あとは……、お香がきついのはやっぱりお嫌よねえ?」
「ものすごいお嫌かも」
「そんなに?」
「戦場で、においって大事なんだ。体調が悪いのもにおいでわかる時がある。そうしたら「におう」兵を休ませたり、病が広がらないように隔離したりする。他にも危険なものを察知したりするために、鼻が効かなくなるのは嫌なんだ」
セラはそれを聞いて、なぜかうふふと、顔を綻ばせる。
「皇后さまがお香を控えられてるのが不思議だったの。私が理由をお尋ねした時、曖昧になされたのは陛下のことがあったからなのね」
セラは、本当に慎ましいお方、なんて御可愛らしいの! 素敵だわ! とニヤけていたが、ふと思い当たったように言う。
「あら? 以前皇妃さまが、『お香は虫よけにもなるわよね』って手ずから焚いてらっしゃったんだけど。たしかにそう言う効果のあるお香もあるから、左様でございますね、ってお答えしたんだけど。あれって」
「それはもちろんお衣装につく虫だと、僕は思うよ?」
ザイは主人の名誉のために言っておく。
「そうね、もちろんだわ」
セラは、皇妃さまったらなんてご容赦のないこと! きっぱりしてらしてよろしいわ! やっぱり素敵! と目をキラキラさせている。
早くお二方ともお帰りにならないかしら、とセラは言う。好対照なお二方を、セラはそれぞれ慕っているらしい。
今、皇后さまは出産、皇妃さまは母君の喪でそれぞれ里下りをされている。皇妃さまは来月、皇后さまは半年後にお戻りの予定だ。
「皇妃さまがお帰りになるまでには、片付けるわ!」
敬愛するお二方のお衣裳を揃えるのに専念したい女官は、婚約者殿を一月以内にお片付けすることに決めたらしい。
そうしてきっかり一時間して、ザイはセラから解放された。
「うん」
セラが座り直したのに、よし、愚痴聞き終了、とホッとしながらザイが聞く。
「出来るだけゆったりしたお衣装を選んでるんだけど、やっぱりお召しになって下さらないのよね陛下」
悩むセラに、ザイは僕の予想だけど、と断って言う。
「陛下はゆったりしたお衣装ってお好きではないかも」
「ええ? 男の方って、首元がきついのをすごく嫌がるのでは?」
その心は? と詰め寄るセラにたじろぎながらザイは説明した。
「陛下は長く戦場におられたから、防具を着慣れてらっしゃる。むしろ首元が空いているのは落ち着かないと思われるんじゃないかな?」
「ああ、なるほど!」
首と言う急所を晒すことは、返ってお嫌かも、と言うザイにセラは納得する。
「あ、じゃあ袖が長いのは?」
「うーん、長いのは案外大丈夫かも」
「そうなの? でもそうね、お裾やお袖を捌くのが本当にお見事だもの」
女官の中には見とれるものもいるのだとセラが言う。
「剣をお使いになるものね、もしかして肩まわりが重いのがお嫌かしら? それなら組み合わせでなんとかなるかも」
指を折ってセラは思案をしている。
「あとは……、お香がきついのはやっぱりお嫌よねえ?」
「ものすごいお嫌かも」
「そんなに?」
「戦場で、においって大事なんだ。体調が悪いのもにおいでわかる時がある。そうしたら「におう」兵を休ませたり、病が広がらないように隔離したりする。他にも危険なものを察知したりするために、鼻が効かなくなるのは嫌なんだ」
セラはそれを聞いて、なぜかうふふと、顔を綻ばせる。
「皇后さまがお香を控えられてるのが不思議だったの。私が理由をお尋ねした時、曖昧になされたのは陛下のことがあったからなのね」
セラは、本当に慎ましいお方、なんて御可愛らしいの! 素敵だわ! とニヤけていたが、ふと思い当たったように言う。
「あら? 以前皇妃さまが、『お香は虫よけにもなるわよね』って手ずから焚いてらっしゃったんだけど。たしかにそう言う効果のあるお香もあるから、左様でございますね、ってお答えしたんだけど。あれって」
「それはもちろんお衣装につく虫だと、僕は思うよ?」
ザイは主人の名誉のために言っておく。
「そうね、もちろんだわ」
セラは、皇妃さまったらなんてご容赦のないこと! きっぱりしてらしてよろしいわ! やっぱり素敵! と目をキラキラさせている。
早くお二方ともお帰りにならないかしら、とセラは言う。好対照なお二方を、セラはそれぞれ慕っているらしい。
今、皇后さまは出産、皇妃さまは母君の喪でそれぞれ里下りをされている。皇妃さまは来月、皇后さまは半年後にお戻りの予定だ。
「皇妃さまがお帰りになるまでには、片付けるわ!」
敬愛するお二方のお衣裳を揃えるのに専念したい女官は、婚約者殿を一月以内にお片付けすることに決めたらしい。
そうしてきっかり一時間して、ザイはセラから解放された。
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